第八話 凛と立つ
何故?おかしい、私の気配は完全に消していた
それに何故、生まれたばかりの魔王が私の名前を?
そして、この氷、明らかに出力がおかしい
生まれたばかりの魔王にできる事じゃない
「疑問で頭が一杯か、白薔薇」
俺が半身氷に包まれながらも、無表情を貫きながらも、少し驚いた動きを取った白薔薇に対して、そう問いかける
正直、かなり賭けではあった
市民の避難が完了していない事、白薔薇の仲間がまだ到着していない事
そして、白薔薇の戦闘スタイルが速度重視だという事を今までの闘いで知っていた事、最ももし白薔薇が速度も速くて、力も強いという化け物ならば失敗していたが……
未だ氷に包まれたままの彼女の姿を見れば、違うという事は明白だ
最後に、白薔薇が人間だったこと
彼女がもし、住民なんてどうでもいいというよな冷酷な性格だったのなら、俺の首は今の位置にはいないだろう
骸骨騎士による陽動も効いた、あれがあったからこそ、怪しい動きをしている術師を探したはずだ
まぁともかく、勝利は勝利だ、さてさてこの後……
「ねぇ、貴方馬鹿なの?それともすっごく馬鹿なの?」
彼女の声に導かれ、俺は彼女を見る
そして、彼女のその姿を見て、思わず、声が零れる
「マジかよ――」
氷が少しづつ割れていく音がその空間を支配する
それに気づく前に、俺はもうそこにはいなかった―――
***
慢心していたわけではない、手加減も一切していない
あの氷は確実に先ほどの俺が出せる最大限だった、だが失敗した
「クソッ」
やはり、タイマンは無理なのか?速さも、力も全て負けている
骸骨騎士を使うか?けど、骸骨は骸骨で役割がある
シロ……はどこまで戦えるのか分からない、多分ゲームの役割的には案内役と言ったところだろう
案内役が強いゲームとか見たことあるか?俺はない
いや試してみるのもありではある、それかダンジョンに戻って―――
「フロスト様!フロスト様!」
ああ、そうか、そういえばそうだった
よし、以下同文
***
「なぁシロ、正当防衛とは言え、氷漬けは流石にやりすぎたかな」
「いいんじゃないすか?」
さて、ここまでは今までと同じ、で、俺は少し考えた
今回、俺は情報収集をメインに行うことにした
情報が無ければ、白薔薇への対策なんて思いつかない
という事で、まずシロに聞いてみた
「白薔薇のアンナって知ってるよな」
「はい、知ってるっすけど、、」
「あいつを俺でも拘束できる方法を教えて欲しい」
「拘束っすか、、」
沈黙が続く、だが、足は止めない
この路地裏からは早めに出ておきたいからな
「ふぅ、何度見てもこの光景は良いなぁ」
大通りに出て俺がぼんやりとそう呟いても、シロは全く反応しない
なんか俺に似てるな
そこからは前回と同じである、骨董屋に行って、前回見ていなかった部分を重点的に見る
まぁあったらいいなレベルで見ておこう
10分後……
「はっそうっす、フロスト様」
「どうした?シロ」
「魔術っすよ、魔術、まだ教えてなかったっすよね」
「ああ、氷の、いやまぁ大体使い方は分かるが……」
「白薔薇は力も強いっす、なんで生半可な氷じゃ破かれます」
ああ、それはもう経験した
「なので、魔力を圧縮すればいいっす」
「魔力の圧縮?」
「一回の魔術に込める魔力の量が多ければ多い程、規模を大きくするのは簡単っす」
「けど、規模を大きくしても一対一だとほぼ意味がないっす」
「なので一対一では圧縮、つまり小規模で密度が高い魔術を使える必要があるっす」
「何も考えずに魔力という名の水を注ぐのではなく、できる限り狭い範囲の中に水を注ぐイメージでやればできると思うっす」
「ただ、普通に魔術を使うより、繊細な魔力操作が必要なので、発動までに少し時間がかかるのが難点なんすけど……」
つまり要約すると、今の氷より硬い氷を出す事ができるが、その代わり溜めの時間がいるって事か
「ありがとう、シロ、やってみるよ」
「そうすか、まぁお役に立てたのなら光栄っす」
さて、以下同文
***
「骸骨騎士が出たぞ!!!」
「助けてくれ!!」
やはり、街の中に魔物が出るのは珍しいのか
まぁそれは警備の薄さや住民の装備でなんとなくわかっていた
「そろそろ、かな」
と呟いた後、しゃがみ地面に触れる
「かなり集まったな」
俺がそう言って、魔術を発動しようとした、その瞬間だった
「引っかかったなァア―――」
白薔薇のマリア、彼女の剣が俺の首を落とす、その寸前で止まらなかった
その理由は彼女の姿を見れば、明白だ
何にも阻まれる事の無く、凛と立つ、その姿を見れば―――
名前 フロスト
職業 白の魔王
二つ名 無し
持ち物 特に無し
眷属 シロ、骸骨騎士
能力 召喚、迷宮支配
適性魔術 氷を生み出し、操る(名称不明)