第七話 魔王
ふぅ、まだわかっていたから、ギリ耐えれたな
「フロスト様やっちまいましょう!」
「おいおい、何だ兄ちゃん、やる気か?w」
再放送か、さてどうしよう、また巻き戻りポイントは同じだ
恐らく、何かをしない限り何回死んでもここに戻ってくる
このイベントを乗り越えないと一生、俺はマリアに殺され続けるわけだ
今までの事を整理してみよう、ここでこいつを氷漬けにし、買い物に行けば、パン屋でマリアに遭遇
次に、ここでこいつを氷漬けにせず、とどまると、ここでマリアと遭遇
どちらを選ぼう、それか新しい行動をしてみるか……
「おいおい、どうした兄ちゃん、ビビっちまったか?」
クソッ、あまり時間はないな、
一旦迷宮に戻るか?いや、逃げ道が無くなって終わりだろう
うーん、まぁ取りあえず、凍らせとくか
買い物できるし、時間も増える、後多分まだタイマンよりは勝ち目がある
「なぁシロ、正当防衛とは言え、氷漬けは流石にやりすぎたかな」
とにかく、さっきと同じような会話をする、何かの拍子で変にルートが分岐するとめんどくさい
「魔王なんだから、好き勝手やりゃあいいんすよ」
お、来た、このセリフ、その言葉と共に、俺たちは大通りに出る
そこで、実感する
「ああ、やっぱり異世界なんだなぁ」
……少し前は晴れやかに見えたんだけどなぁ
「まだ信じてなかったんすか?」
「いや、改めて実感したというか、なんというか」
「さて、素材集めに行きますか」
前と同じなら、この後、俺たちは遊びに行く、だがそれはしない
俺はここで別ルートに進む
「そうだな、行こう、シロ」
俺はそう言って、大通りを適当に歩き始める
「素材はっすね、基本骨董品とか売ってる所とか、後は魔物討伐で集めれるっす」
「野良の魔物は理性がほとんどないんすよね―だから契約できる奴はほとんどいないんすよ、ほんと、最近の魔物はどこぞの魔王の影響で理性が無くなって、昔じゃ考えられないっすよ、しかも最近は色すら……」
さて、シロが色々話しているのを尻目に、一回目二回目の事を思い出しながら、マリア対策を考えよう
まず一回目と二回目の違いだ
何故一回目はパン屋を出る所で襲って来たのに、二回目は路地裏で襲って来たんだ?
一回目は大通りに出てからパン屋に入り出るまで推定一時間はあった
つまり、二回目の路地裏襲撃のころと同じくらいの時間にマリアが来たとすれば
約一時間マリアは俺を襲わず待っていたという事になる
あのパン屋は少し大通りから外れた位置にある
戦闘になり、街に被害が出る事を恐れたのか?
そういえば、一回目は他の騎士?もいたな、そいつらが来るのを待っていたのか?
街の人を避難させていたという可能性もあるな
つまり、騎士団は何らかの方法で俺を白の魔王だと断定した後、マリアを派遣
一回目ではマリア到着時、俺は大通りで買い物をしていたから手が出せず
時間経過(他の騎士が来る、街の人の避難が完了する)によりゲームオーバー
二回目ではマリア到着時、俺は路地裏にいたのですぐに討伐
では、三回目、今は?恐らくもうマリアは到着してどこかに潜んでいるだろう
何処か人気のない場所に行けば、マリアと遭遇ゲームオーバー
交渉でも試みてみるか?いや、あの感じ話を聞くような性格ではないだろう
「あ、ついたっすよ」
シロのその声を聞いて顔を上げると、目の前に古びた骨董屋が見える
意外と近かったな三分くらいか
そして、少し重い扉を開き、中に入る
「いらっしゃい」
如何にもと言った爺さんが本を読んでいる、接客をする気は無さそうだ
「シロ、なんか目が付く奴があったら教えてくれ」
「はいっす、ちなみによーく見るとなんかオーラみたいなのを纏ってるのが当たりっす」
へぇ、なるほど、それが魔力って奴なのかな
ちょっと探してみるか、この状況を打破できる素材が見つかるかもしれない
「うーん、、無いな」
マズイ、とてもマズイ、なんか素材に使えそうなやつを10個くらい見てみたが魔力を帯びている奴は全く見つからなかった
「シロ、いいのあったか?」
「無いっす、全部外れっす」
そっちもか、今大体大通りを出てから40分は経ってる、
後20分でマリアが来る
どうする?逃げる?無理、戦う?無理
どうする、どうする、どうする、どうす―――
そうだ、俺は簡単な事を忘れていた
俺は魔王、魔物の上に立つ、魔を司る王様だ
「なぁシロ、魔物って遠隔で動かせるよな?」
「はい、テレパシー的な感じで、頭の中で唱えればできるっす、後、視界を共有することもできるっす、二体以上は厳しいかもっすけど……」
ふーん、なるほど
『骸骨騎士、今すぐダンジョンから出ろ、そして、住民を襲え』
と、唱えた後、視界共有をして骸骨騎士の視点を見る
すると音を立てながら骸骨騎士が動き始める
そして、それを確認した後視界共有を辞める
「さて、次は……」
いや、少し待とう、一分いや、ほんの少しだけ……
「キャーーー」
女の叫び声が鳴り響く、そして、俺はそれを聞いた瞬間
「シロ、外へ出るぞ」
そう言って、俺は骨董屋を出る
そして、自分たちが歩いてきた、迷宮のある方に目を向ける
声と足音、様々な物が入り乱れながら、こちらに駆けてくる
「骸骨騎士が出たぞ!!!」
「助けてくれ!!」
やはり、街の中に魔物が出るのは珍しいのか
まぁそれは警備の薄さや住民の装備でなんとなくわかっていた
「そろそろ、かな」
と呟いた後、しゃがみ地面に触れる
「かなり集まったな」
俺がそう言って、魔術を発動しようとした、その瞬間だった
「引っかかったな、マリア」
白薔薇のマリア、彼女の剣が俺の首を落とす、その寸前で止まった
その理由は、彼女の姿を見れば明白だ
半身を氷に包まれた、その姿を見れば―――
名前 フロスト
職業 白の魔王
二つ名 無し
持ち物 特に無し
眷属 シロ、骸骨騎士
能力 召喚、迷宮支配
適性魔術 氷を生み出し、操る(名称不明)