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第三章 方向指示器 6

「肩こりはバイトのせいで……」


 オカチンと花音は訝しげな顔をしている。右腕の幽霊も生首も見えていないのだから意味不明の会話にしか聞こえないのだろう。


「署までご同行願えるかしら。詳しい話をうかがいたいので。ぜひとも被害者の幽霊とやらも一緒に」


 花音がそう言うとオカチンも同意した。


「いっそパトカー呼んだほうがいいんじゃないか」


 双葉は子供が嫌々をするように首を振った。


「警察に用はありません。あなたのバイト先に行きましょう。この人を」と頭の上を指さす。「送りだすのがわたしの仕事だから」

「被害者の幽霊ならばきっと、犯人を捕まえたい、そう思ってるはずでしょ」


 花音が食い下がる。だが双葉は否定した。


「この霊が執着してるのは右腕なんです。右腕さえ取り戻せたら未練はないんです。わたしの商売は魂を綺麗にして送り出すこと。関係のないことには干渉しません」

「でも、犯人を恨むのが普通でしょう。社会正義のために協力を要請します。あなたも幽霊……にも」

「警察の都合はこちらには関係ありません」


 花音は言葉に詰まった。話が通じる相手なのか判断できないようだ。

 未成年者の補導、クスリの疑い、いくらでもしょっぴく言い訳はあるだろう。だが強引な方法を取りたくないと花音の表情は語っていた。


 ふと疑問が口をついて出た。


「もしかして、花音さんは幽霊とか信じるほう?」

「いいえ。でも頭ごなしに否定するのは違うと思ってます。警察官のひとりとして犯人を捕まえたいと強く願っていますから、どんなつまらないことでもヒントになるなら話は聞きたい。強制はできないけど。もっとも幽霊の証言なんてなんの証拠能力もありませんけど。そう、なにか、証拠があれば……」


「おい、花音」オカチンがふてくされた声をあげた。「おまえ交通課だろ。刑事の真似してもしょうがないだろ。おれは花音が刑事目指すのは反対だからな」


 とうとつにオカチンがキレた。なんの話だ。

 そういえばさっき、交通課から刑事課に異動を狙っているとか言ってたような。


「刑事さんになるんですか?」


 花音はさっと顔面に朱を散らした。はにかみながら答える。


「願望です。上司の推薦と功績が必要で、試験もそう簡単ではないし。岡野君は反対してるし。多方面でとても難しいので……」


 オカチンがふんと鼻息を飛ばす。


「あえて苦労することないさ。交通課と違って勤務時間が不規則になる。所轄も異動だろ。遠くなって忙しくなったら会えなくなっちまう。だから反対してるんだ」

「ご、ごめんね。自己中な願望で……」


 花音が小声で謝った。なんで謝るんだろう。


 オカチンの考えは長いつきあいだからおれにはわかる。『婦警さん』にはマウントできるが『刑事』には気後れしちまうんだ。自分のほうが立場が上でないとオカチンは不安なんだ。

 クソみたいな勘違いだ。

 おれはそれでもかまわないと思ってつきあってきたからいいけど、花音はそれでいいのか。


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