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第三章 方向指示器 5

「うわあああああ」


 のけぞったおれにつられて、花音とオカチンものけぞった。だがふたりにはなにも見えていないようだった。


「なに、なにに驚いているの!?」

「腕が……! 見えないのか、この子が持ってるだろ」

「……なにも持ってないぞ」

「こんばんわ、お嬢さん。太郎さんの知り合い? この人になにか用があるのかな」


 花音は職業的な笑みを浮かべて問いかけた。


「知り合いではありません。でも用はすみました。いえ、正確にはまだですけど」

「?」

「道案内をお願いしたくて」

「どこに行きたいの?」

「右腕が眠っている場所」


 ぞわりと悪寒が走る。こいつは頭がぶっ飛んでいる。白い腕をぶらぶらさせて微笑んでいるさまは、立派な凶悪犯罪者だ。


 なぜかオカチンと花音には腕が見えていないようで、おれの焦燥はまったく伝わっていない。

 少女から身を遠ざけたいのに、ふたりにがっちりと縛められているせいで逃げることもできない。


「あなたが『内臓を下水に流した』人ですか?」


 花音は凜として問いただした。おれの言ったことを信じていなくても警察官としては確認しないわけにはいかないのだろう。


「わたしは除霊師をしてる双葉といいます。内臓はわたしが捨てたんじゃんなくて被害者から聞いたの」

「被害者? どういうこと? 幽霊と話ができるとでも言うの?」


 花音はきれいな眉をぐっと中心に寄せた。困っているような怒っているような探るような表情。オカチンが「苦手だ」と言っていた顔だ。なんで苦手なんだろう、こんなに知的なのに。


 いや、他人のカノジョに見惚れている場合じゃない。目の前には肩のあたりでぶちぎれた腕を持つ除霊師と名乗るキチガイがいるんだから。


 おれの現実感は次の瞬間、きれいさっぱり蒸発した。

 除霊師の頭の上に女性の生首が現れたのだ。


「うわわわあああ」


 チラシで見た顔だ。殺されてバラバラにされたモデル。

 幽霊。


「な、なにをわめいてるんだ!?」


 わけがわからなすぎて、オカチンがイラついた声をあげる。


「わたしが霊能力を使っているときにそばにいると見えちゃう人がいるのよ。残念なことに、この二人は」といって双葉はオカチンと花音を順繰りに見やった。「見えない体質みたい。あなたは取り憑かれた関係者だから波長が合ってるのね」


 双葉が笑うと頭の上で生首もにたりと笑った。

 オカチンの額の血管が脈打った。


「犯人は太郎なのか。幽霊がいるんなら、聞いてくれ!」


 生首はうなだれている。


「誰だか知らないんですって。顔見知りではなかったみたいよ」


 そこは、おれじゃないって言ってほしい。

 双葉はおれを見上げて、だらんとした右腕を掲げた。


「それよりこの右腕、どこで拾ったんです?」

「知るかよ。え、待ってくれ、ずっとおれの肩にのってたのか」


 バラバラ遺体の一部……の右腕だけの幽霊がおれに憑いていたというのか。幽霊って分割できるのか?


「肩が重くなったのはいつからなのか、覚えています?」


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