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第三章 方向指示器 3

「どうした?」

「いや……」


 橋の下にいた少女が脳裏をよぎった。あの子は変なことを言っていた。右足は見つかったとか、内臓はミンチにして下水に流したとか。


「な、なあ、そのモデルのパーツって右腕以外は全部見つかったって言ったよな」

「ああ。三か月経ってるから、片腕はもう見つからないかもなあ」

「内臓は……内臓は、ちゃんとあったのか」


 オカチンは顔をしかめた。気味悪そうにおれを見る。


「内臓なんて知らないよ」

「胴体をふたつに切ったら内臓が出てこないか?」


 ますます顔をゆがめて、それでも、スマホを取り出してくれた。


「聞いてみるか、花音に。……あ、花音。急に声が聞きたくなってさ。チュッ。いや、それは冗談で……チュッ」


 通話中に何度かスマホをチュッチュするオカチンに目を背け、耳だけをそばだてた。


「うん、おれのダチがグロが好きみたいでさ、そう、内臓が気になってるんだってさ、うん。……え、そうなの? …………そうなんだ。……やばいじゃん。え、かわるの? うん、わかった」


 オカチンはなぜかだだ下がったテンションでスマホを押し付けてきた。


「太郎と話したいとさ」

「あ、うん。もしもし」

『岡村君の友達の太郎さんですよね。箕輪花音といいます、警察官をしています。お会いしたことなかったですよね』

「は、はい。オカチンには世話になってます。これからも末永くオカチンをよろしく──」


 女性と電話で話すのは久しぶりだった。頓珍漢なことを口にしていることにも気づかないくらい緊張していた。


『いまから時間ありますか。そちらにお邪魔してもよろしいでしょうか』

「おれのうちに? いいけど、なんで?」

『ありがとうございます。内臓の件、興味があるので詳しく聞かせてもらいたいんです。じゃあまたあとで』

「……なに? どういうこと?」


 一方的に切られた通話に呆然としていると、オカチンは勝手に玄関の鍵をあけて扉を塞ぐように立った。


「なにしてんの?」

「んー、花音の指示」

「なんで睨んでるの。怖いんだけど」

「おれのほうが怖いよ。ショックだわ。あ、近寄るな。座っていろ」


 そこでようやく気がついた。


「おれは犯人じゃない」


 なんで疑われなくちゃいけないんだ。


「ところが、だ。内臓が抜かれていたってのはまだ公表されていない。犯人しか知り得ない情報なんだ。おれだって信じられないよ。まさか、おまえがなあ」

「おれは犯人じゃないって! あ、そうか、てことは、犯人はあの女の子だ。オカチン、いまから橋の下を見にいこう。まだいるかもしれないから」


 立ち上がったおれの肩をオカチンはどんとついた。勢い余っておれは尻餅をつく。


「いって」


 オカチンはドアを開けて外に飛び出した。犯人を捕まえにいく気なのかと、あとに続こうとしたが、おれは部屋から出られなかった。

 ドアノブが回らないのだ。

 オカチンがドアの外側から押さえているのだ。

 おれを閉じ込めるつもりだ。


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