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君と知りせば否みざらましを  作者: ただの猫好き
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1)幸せは必ず訪れる:カキツバタ

ある少年の頃、事故に遭った俺はその日から記憶がだんだん薄れていっていた。

そしてそれから十年後、俺は宇治波(うじなみ)高校のという高等学校に入る事になった。そして、今日はその入学式の日である。


(あんなところにカキツバタが咲いてある。池になってるわけでもないのに。もしかしたら今日は開運日なのかもな。)


カキツバタの花言葉には幸せは必ずやってくるという意味がある。この入学式、何かが起こりそうだ...



「はぁ...はぁ...坂道には慣れてないせいか、こんなにも疲れるとは、、、さて、やっとついたぜ宇治波高校!京都の街は迷うものだなぁ」


そう言っているが、息が上がっているのは坂道のせいなのか、それとも緊張して強がっているだけなのか。

ポツポツとある雲がだんだんと晴れてきていた。それは、入学式だから神様が快晴にでもしてくれたのだろうか。それともただの偶然なのか。そんなこと考えてる暇があったら緊張せずさっさと教室に入りやがれ!


(えっと俺の席は...漫画的展開なら後ろの隅っこの方に配置されると思ったんだが、そんなことはないと思う。なぜなら俺の名字は”か行”だからな!どうせ真ん中の微妙な位置に配置される。)


そう思っていたであろうが、早くも今日の幸運とやらが舞い降りてきたようだ。なんとあ行が誰一人いないなんてな...おまけに漫画的展開に近い席にはなれたらしい。

続々と生徒がやってきた。もうすぐ一発目の朝の会が始まろうとしていた。


「はーい席についてー!って、さすが特別クラス生だ。入学の心構えがちゃんとできているようだな。さて、では今から出席をとる!大きな声で返事をお願いします。では出席番号1番神楽陽海!」


「はい!」


---


................「次五番、黒川玲奈!」 

「..はい」


(とうとう俺の番か、てか前の人元気なさすぎだろ。やめてくれよほんとに...)

......「次六番、高坂神理!」

「はい」

ごく普通の返事だ。さすがに入学当初からハイテンションできてしまうと少し引かれるか、クラスの人気者になれるか。俺の場合、引かれるに1票だ。


さて、今から入学式が始まる。母が俺のために一生懸命選んでくれた俺の新品の制服でいざ入場といこうではないか!


「新入生、入場」


その放送が鳴った途端、足に伝わる椅子が動いたときの振動と、拍手を構える人もいればカメラを慌てて準備する人もいる。その場の雰囲気はそんな些細なことが分かるくらい緊迫とした様子だった。

ここでみんなが想像するであろうこと。それは、入場し歩いているときに”つまずく”そして”こける”そうしてクラスの笑いものにされ、いじめられるか人気者になれるか。そんなことを心配するだろう。


(一歩ずつ丁寧に、丁寧に...)


そして、俺のクラスが全員椅子の前に立ち座る準備をしていた。前を向きそびえ立つ鉄塔のように座る者もいれば、下を向き学ランのボタンを見ながら座るものもいれば、ただただ猫背なのか綺麗に座っているつもりなのだろうが、ピサの斜塔のように斜めに座るものもいる。


そしてみんなが一斉に座る音と振動が会場中に伝わってきた。そしてもうひとつ、圧倒的にデカい振動と音が響き渡る。


「痛ってぇ!最悪だよもう」


なんと本当に"こけて"いる人がいた。そう、この人の名前は━━━出席確認に戻る


……………「次七番、佐野英孝!」

「は、はい!」


(妙に元気だな。なんかアホっぽさというか天然って感じの声質をしている。実際アホなんだろう。よし、席も近い事だしコイツと仲良く友達にでもなるか)


そして入学式入場の時佐野の脳内では


(俺はこの宇治波高校に入学してきた佐野英孝というものだ。今、この凛とした入学式に俺は1歩踏み出そうとしていたのだ)


「新入生、入場」


(よし、イメトレしておこう。歩く幅を考えるんだ。入場してきましたよっしゃーで、タンタンと歩き、椅子にすっと座る。よし、リハーサル完了。本番と行こうか!)


これでもかと家で練習してきた入学式の入場。佐野英孝のDESTINYやいかに!


(このそびえ立つ我の背中、力強く握りしめた手、スイレンの葉をスタスタと歩くような美しく緩やかな歩き方、こんな立派でイケメンな俺を見てキラキラして眩しいだろうぅっっ━━ドンッ!)


その時俺は大勢が見てる中、1人だけ"こける"のだった。


(思ってたのと違う!!待って思ってたのと違う!待って俺ここに座りたかった思ってたのと違う!!ちょっと待って…思ってたのと違う!!ちょっと待ってどうしたらいい!?思ってたのと違う!!ちょっと待って思ってたのと違う!ちょっとま)


まあ大体こんな感じである。神理はまだ佐野の脳内がこのような事になっているなど、思いもしなかったのである。いや思えるわけがないのである。


---


前代未聞の入学式を終えた今、クラスに戻り学級活動が始まろうとしていた。すると突然前の席の女が俺に話しかけてきた。


「おはよう、高坂神理くん!ひさしぶ...初めまして!黒川玲奈って言います、よろしくね!」


(今、久しぶりって言いかけたよなコイツ…てか見たことあるような顔なんだよな、んーっと全然思い出せなっっっ…!)


俺はこいつの顔を思い出そうとすると共にふと横を向いた。すると、風で揺れるカーテンと同じくらいに綺麗な髪が風で靡き、そいつの顔に光が指し照らされた。俺は、自分のことを俺と言うが、今は、私と言ってしまうくらいにドキドキした。


これが、これこそが、神理の"初めて"の一目惚れだった。


目というのは180度動かせる。だからこそ、前の席の女はあまり見たくなかった。でも視界に入ってしまうんだ。その悲しそうに笑い、俺を見つめる姿を。


高校初めて書きました。しかもラブコメなので多めに見て

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