第一話
私立闇薔薇女子高校。この高校への入学条件はただ一つ、見た目がかわいいこと。校長先生にそのかわいさを認められた者が入学を許される。この多様性の時代にルッキズムの権化のような高校が存在していいのかと言う声はごく一部である。なぜならこの高校への入学はかわいさの証明であり全国民にそのかわいさを自慢できるのである。いわばこの高校はかわいいの登竜門なのである。
キーンコーンカーンコーン。朝のホームルームの時間だ。担任の先生が転校生が今日から来ることを告げる。引き戸を開けて入ってきたのは眩いほどの美しい金髪をツインテールでまとめた可憐な少女。白い肌はきめこまやかで陶磁器のようだ。彼女は黒板に自身の名前を書きはきはきと自己紹介をする。
「私は西園寺りりかです。この学校にはかわいそうな人がたくさんいてとっても楽しいな場所です。私はアメリカからやってきたので日本語はまだまだ勉強中ですが、よろしくおねがいするで候。 」
彼女はアメリカ人の父と日本人の母のハーフで最近日本にきたらしい。日本語が怪しく多分かわいいと言いたくてかわいそうと言い間違えている。彼女の自己紹介に戸惑っている人もいたけど最後には笑いが起きた。私も西園寺さんはおもしろい人だと思う。
私の隣の席が空いていたので西園寺さんはそこに来た。彼女は私に笑顔で手を振った後席に着いた。ちなみに私の席は真ん中の行の一番後ろだ。
国語の授業中西園寺さんは難しい顔で教科書とにらめっこしていた。やっぱりまだ日本語が難しいんだと思う。私は西園寺さんにこっそりと「手伝いましょうか?」と耳打ちした。すると彼女は「no problem!」と小声で元気そうに言った。彼女は私の言ったことを理解してそう言ったのかそれともなんとなく問題ないと言ったのかわからない。でも本人が大丈夫と言うならとりあえず様子を見よう。
教科書を一行ずつ席順に読んでいて、ついに西園寺さんの番が来てしまった。先生は西園寺さんにはまだ難しいと配慮して順番を飛ばそうとしたのだが彼女は「イエスサー」と言って立ち上がった。私は不安げな顔で彼女を見たのだが彼女は自信満々な顔をしている。
西園寺さんはすらすらと枕草子の一文を読み上げた。皆驚きの顔をしていた。先生が「すごく上手ですね」とほめると彼女は「ママが日本の文学が好きでたまたま知っていました」と答えた。
放課後になったので私は文学部の部室に向かおうとしたら、西園寺さんが学校を案内してほしいと英語で頼んできた。私は幼少期イギリスにいたので英語が一応できる。文学部とは言っても部室で本を読んだり皆でボードゲームをしているだけなので、私は文学部にいる妹に連絡を入れて西園寺さんを案内することにした。
道中彼女は目に入るもの全てに「うわあ」と感嘆の声をもらしていた。この学校の校舎には別に目立った特徴はないと思うんだけれどそんなに楽しいのかな。
彼女の明るい笑顔と新鮮な反応を見ていると私も入学当時のことを思い出して散策できた。