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6 怪物との戦闘、そう呼ぶのは躊躇われる

 人間の脅威となる怪物。

 迷宮から出て来るこれらは、世界中に散らばっている。

 当然、マサヒロの村の近くにもいる。

 それらが田畑を荒らし、場合によっては人にも襲いかかる。

 なので、この退治が村でも重要な仕事になっている。



 なっているのだが、簡単ではない。

 村人の仕事の基本は農作業。

 怪物も倒さねばならないが、それよりもまず本業をこなさねばならない。

 怪物の対処に時間も労力も割いてばかりもいられない。



 ここに機会があるとマサヒロは見た。

 他にやる者がいないなら、代わりにやればよい。

 自分が怪物を倒しに行けばよいと。

 そうすれば、村にいながら怪物退治の訓練になる。



 安直な考えではある。

 そう簡単に村の者達が納得するとは思えない。

 まだ5歳の子供なのだ。

 それが、「怪物を倒してくる」といって誰が承諾するのか。



 だが、ここで何とかすれば得られるものもある。

 怪物の倒し方が少しはわかる。

 どれだけ役立つかわからないが、多少は今後のためになりそうだ。

「でも、どうやって承諾させるかな」

 そこが悩みどころだった。



 普通にやっても駄目なのはわかってる。

 それでも何とかしたかった。

 そんな思いが通じたのか、機会は意外と早く訪れた。



「外回り?」

 ある日、呼び出されるとそれに参加するように言われた。

「怪物共の対策だ。

 お前も手伝え」

「あ、うん」

 あまりの事に返事がうわずった。

 願っていた機会が舞い込んできたのだ。

 もちろん、断るつもりはない。

「わかった、いくよ」

 即座に承諾する。



 しかし、子供に怪物対策の手伝いをさせる。

 それが不思議だった。

 あれこれ考えるが、特に理由が見当たらない。

 それでもせっかくの機会だからとついていく。



 外回りはそう難しい事ではない。

 村を囲むように掘られた壕。

 そこに入り込んだ怪物をたおすというのが主な作業だ。



 怪物の大半は地上を歩くものだ。

 獣のような姿のものも、虫のようなものも。

 中には空を飛ぶものもいるが、その数は少ない。

 なので、壕という単純な手段がそれなりに有効だ。



 この壕の中にはまってる怪物をたおしてまわる。

 それがマサヒロの仕事になる。



「これを使え」

 そういって槍を渡される。

 粗末なもので、木の棒に刃物を付けただといった作りだ。

 柄にあたる部分もだいぶ古ぼけている。

 長く使われてきたのだろう。



「これで、壕の中にいるのをやるんだ」

 なるほどと思った。

 これなら安全に怪物を倒せる。

 子供でもどうにかなる。

 ただ、長さ2メートル近い槍は、5歳児には少々重い。

 もう少しどうにかならないのかと思ってしまう。



 とはいえ文句を言ってるわけにもいかない。

 大人の引率で壕を巡り、中にいる怪物をたおしていく。

 中にいるのは比較的小型の怪物ばかり。

 それでも、隊長30~50センチはある。

 ネズミのような、犬のような獣型のもの。

 ゴキブリのようなもの。

 それらが壕の中を這いずり回ってる。



 それらに槍を突き刺していく。

 壕の深さは1メートル半くらい。

 2メートルの槍なら充分に届く。

 ただ、相手も動き回ってるので簡単に刺すことが出来ない、

 身の丈に余る長さと重さだけに、槍を扱うのも難しい。

 意外と手こずると思いながら作業を進めていく。



「しっかりやれ」

 引率の大人が指示を出す。

「これから何度もやる事になるからな」

「うん」

 頷いて作業を進める。

 逃げる怪物を追いかけ回すようにして槍を繰り出す。

 少しずつコツを掴み、怪物を処理できるようになる。



 やりながら思う。

 これも放り出すための準備なのだろうと。

 こうして怪物に慣れさせていく。

 実際に村に近寄る怪物の処分もしたいのだろうが。

 そのついでに、迷宮に追い出す予定の子供に経験をつませてるのだろう。

 怪物退治のやり方を。



(こりゃあいい)

 ありがたくその思惑にのる。

 向こうから機会を与えてくれてるのだ。

 この調子で今後もやっていこうと思った。



 ただ、問題はある。

 怪物を倒すと出て来る魔力結晶。

 その全てを大人が持っていく事だ。

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