52 一人の迷宮探索
単独になったマサヒロの迷宮探索は快調だった。
少なくとも順調ではある。
無理も無茶もしないからだ。
レベル29になったマサヒロは、自分より弱い怪物が出る当たりを巡っていた。
それでも十分に稼ぎが出るからだ。
一日の生活費くらいなら、数匹倒すだけで良い。
何十匹も倒せば、一週間は余裕で暮らせる。
武器の手入れ、消耗品の継ぎ足しに金が飛んでいくけども。
それを踏まえても、一日の活動で十分な金が稼げる。
一週間も迷宮に籠もれば一ヶ月分の生活費を手に入れることも出来る。
そんな迷宮探索を、マサヒロは勤勉にこなしていく。
週休二日で五日は迷宮に籠もりながら。
正確に言えば、毎日日帰りなので籠もってるとは言いがたい。
それでもほぼ毎日迷宮に通ってる。
今のうちに少しでも稼ぐためだ。
探索者が稼げる時期は短い。
老衰とまでいかなくても、中年になれば体力・知力・感知力が落ちていく。
現状維持がやっとになる。
そうなったら迷宮での活動が難しくなる。
そして、こうした衰えが衰える時期は早い。
寿命の短い世界だ。
50歳まで生きる者がそもそも少ない。
そんな世界では、30歳になれば中年。
40歳を超えれば老境と言えるくらいの年頃になる。
心身共に最高潮の時期は、10代後半から20代後半の10年くらいだ。
この時期に出来るだけ稼ぐ。
その為にマサヒロは迷宮に通い詰めた。
全ては金のため。
いずれやってくる老後のためである。
「それまでに……!」
気合いと根性を入れて迷宮に通う。
武器で怪物を蹴散らし、魔力結晶を手に入れていく。
「快適な家で、綺麗なネーチャンを侍らすんだ!」
純粋な欲望にまみれた目標に向かっていく。
恐ろしい事に、出来ないわけではない。
さすがに豪勢な館は無理でもだ。
それなりの大きさの家を買えるだけの稼ぎは手に入れられる。
それだけ稼げば、女もよってくるだろう。
古今東西、権力と財力は様々な人間を集めるもの。
たいていはロクデナシばかりだが。
それはマサヒロも覚悟している。
金くらいしかマサヒロが示せるものはない。
ならばだ。
「徹底的に稼いでやる!」
色気のない生活より、色欲がの方が勝った。
そんなわけで、まずは生きていくため。
そこを超えたので、よりよく生きるため。
その為にマサヒロは迷宮に挑んでいる。
こんな事のために倒される怪物が哀れである。
ただ、単純に金を稼いでるだけではない。
今はまだレベルを上げる事を優先している。
その為、手取りはさほど多くはない。
魔力結晶の大半を経験値に使ってるからだ。
稼ぐためには資本が必要だ。
探索者の場合、レベルがその一つになる。
強くなればより強力な怪物を倒せる。
弱い怪物なら蹴散らす事が出来る。
レベルが上がれば、強い怪物を蹴散らせる。
そうなれば一回の戦闘での稼ぎは跳ね上がる。
ならば、少しでもレベルを上げた方がよい。
それだけ安全が確保出来るようになる。
それにだ。
そのうち、今入ってる迷宮が攻略されるかもしれない。
そうなったら別の迷宮に移動する事になる。
その時、少しでもレベルが高い方が有利だ。
新たな迷宮に出て来る怪物が、今の迷宮のものより強い事もありうるのだから。
迷宮の怪物の強さは、迷宮によって変わる。
弱いものが集まってる所もあれば、強い怪物がひしめいてる所もある。
どこにどんな怪物がいるかは行ってみるまで分からない。
特に、まだ探索がなされてない迷宮は。
困った事に、未知の迷宮の方が多いのが現状だ。
それだけ探索は進んでない。
人類の生存圏に接してる迷宮は限られている。
その向こう側に向かうには、まずは手前の迷宮を破壊しなければならない。
あちこちの迷宮に手を出してるほど余裕はないのだ。
探索者のレベルが足りてないし、人数はもっと足りない。
そもそもとして、土台となる人類の人口がかなり減っている。
迷宮攻略に繰り出せる人数には自ずと限界がある。
その中でやりくりしてるのが迷宮探索だ。
攻略はなかなか進まない。
地道にレベルを上げて、迷宮攻略が可能な強さを手に入れる。
そして、迷宮の中枢を破壊する。
これ以外に手段がない。
こんな調子だから、各地の迷宮の調査も出来るわけがない。
なので、どの迷宮に何が潜んでるかは分からない。
行ってみるまで謎という状態だ。
それでも、もし迷宮が攻略されたら。
他の迷宮に移動しなければならなくなったら。
その迷宮の怪物が強かったら。
その時どうなるかという事になる。
そもそも迷宮攻略がなされるかどうかも分からないが。
備えておくに超した事はない。
能力が高くて困る事もないのだから。
そんなわけでマサヒロは日帰りの迷宮通いを続けてる。
攻略のためではなく、将来のために。
生活費を稼ぐために。
あわよくば、豪勢な生活と爛れた日々を金で手に入れるために。
「もうちょっと頑張るか」
時間を見てもうすこし粘る事にする。
あと少しすると迷宮を出た時に暗くなってるが。
それくらいは大した問題ではない。
高めた能力のおかげで移動速度も上がってるからだ。
今のマサヒロなら、40キロや50キロなら一時間もかからずに進む事が出来る。
おかげで通勤時間は大幅に短縮出来るようになった。
さすがに最深部までは行けないが。
日々の稼ぎを叩き出すなら十分だ。
それなりに強い怪物のいる当たりまで出向く事が出来る。
あと少しだけ迷宮を徘徊し、一時間で仕事を切り上げる。
そう決めて怪物を求めて動きだす。
意識を集中して魔力を使い、周辺の様子を魔術で探っていく。
ありがたい事に、そこそこの強さをもつ怪物が幾つか見つかった。
早速それらを倒しにいく。
そうやってこの日もそれなりの稼ぎを手に入れる。
町に戻り、経験値に使った分以外を換金する。
手取りで2万円ほどを手に入れる。
今の段階ではこれくらいの稼ぎがあれば十分だった。
この稼ぎでそこそこの部屋に泊まり、それなりの飯を食っていく。
そして、武具の修繕や消耗品を買い足して明日に備える。
変わりばえの無い毎日。
それでもマサヒロは今の生活が楽しかった。
未来があるのだから。
「明日も頑張るか」
そう言って今日も寝床についていく。
ほどほどに明るい明日を夢見て。
この話はここで終わらせる。
どうにもこういう話が書けなくなってる。
次は今書けるものを書いていこうかと。
楽しんでもらえれば良いが。
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