38 更に稼ぎを上げるなら、それも安全に
新人が来てから六か月。
全員がレベル3になる。
こうなると悩みが出て来る。
更に奥に踏みこむか。
今の場所でかせぎを続けるか。
安全をとるなら後者だ。
これで十分やっていける。
だが、レベル上げと稼ぎの上昇を求めるなら、奥に進む事になる。
怪物も強くなるが、手に入る魔力結晶の質も上がる。
少しでも早く成長するなら、先に進んだ方がよい。
しかし、そうなると安全性が下がる。
ここをどうにか出来ないかと思った。
安全性を確保しつつ、稼ぎを増やす。
そんな虫の良いことがあるとは思えないが。
しかし、頭を使って考えていく。
どうにかならないかと。
そうして考えて出て来た答え。
それを試してみようと仲間達に提案をしていく。
「──というわけだ」
話を終えて反応を見る。
全員、呆然というか唖然と言うか。
なんと言って良いか分からないという顔をしている。
「でも、確かにそれなら」
「上手くいけば、稼げそうだけど」
「そう上手くいくんですか?」
「…………」
全員、不安そうだった。
試してもいないから結果が分からないのだ。
だから疑問を抱く。
だが、やって無いから確かめねばならない。
これで上手くやれるのかを。
「とにかく、1度はやってみよう」
危険なのは承知している。
それでも確かめない事にはどうにもならない。
「二手に分ける」
マサヒロが考えたのはこれだ。
5人を二組に分ける。
そして、別々に稼ぐ。
人数が減る分だけ危険が増える。
だが、一人当たりの稼ぎも増える。
とはいえ、今潜ってる場所での活動は控える。
さすがに危険が跳ね上がる。
もう少し迷宮の浅い部分で行動する事にする。
レベル3の今なら、そう危険もない。
比較的安全に稼ぐ事ができる。
良い機会でもある。
ケンとダイゴに人を率いる練習をさせる事にもなる。
この先どうなるかは分からない。
だが、一緒にやるにしろ、独立するにしろ、二人は人を率いていく事になる。
今回の別行動は、その練習になるだろう。
丁度良い機会だと思う事にした。
その為に一か月ほど準備をしていく。
やり方を教え、指示の出し方などを伝えていく。
警戒の仕方に、休憩のやり方なども。
その他、必要と思える心得も教えていく。
不安はあるが、やらしていくしかない。
やらなければ何も身につかない。
今の人数でやっていくなら、こんな面倒も必要ない。
しかし、村から今後も子供を送り込まれる可能性がある。
そうなると、ある程度人数を分けて行動するしかなくなる。
その時になって慌てるよりも、今のうちに対応をしておいた方が良い。
二手に分かれていく。
マサヒロと新人の一人。
ケンとダイゴ、そして新人の一人。
この編成で迷宮に挑む。
ケンとダイゴは、300円で売れる魔力結晶がとれるあたりに。
マサヒロは200円の魔力結晶が取れるあたりに。
それぞれ、分かれていく。
「じゃあ、頑張れよ」
別れ際に声をかける。
「うん」
「行ってくる」
「…………」
さすがに表情が硬い。
マサヒロ抜きでやる事に不安があるのかもしれない。
だが、それでも一か月の間、ケンとダイゴも仕事をしていたのだ。
よほどの事がなければどうにかなる。
そう信じてマサヒロは送り出した。
「それじゃ、俺達もやるぞ」
自分の所に残した新人に声をかける。
こちらも硬い表情で頷く。
返事はないがそれは仕方ないと思った。
声も出ないくらい緊張してるのが分かるからだ。
そんな新人をつれて魔力結晶を取り出す。
ここ最近は当たり前になった、怪物の誘因。
それを行っていく。
探しにいくより楽だと、最近はこんな事ばかりしてる。
これが上手くいくかどうか。
それを身を以て確かめていく。