29 レベルを上げて殴る、これが結局確実な方法
迷宮都市に来てから七か月。
武器や防具の新調を始めてから六か月。
マサヒロはようやくレベルを上げを始めていく。
「長かったなあ……」
RPGのような要素があるのは聞いていた。
探索者協会の資料室でも記述のあるものを読みあさった。
それがどういうものかを調べてある。
だからこそ、今まで後まわしにしていた。
レベルとは人間の能力を総合的にあらわした数値だ。
これが上がると、能力全体が上がる。
なので迷宮探索者はこぞってこれを求める。
より強力な怪物と戦うためだ。
そうする事で、より多くの稼ぎを手に入れられる。
この為に必要になるのが魔力結晶だ。
レベルの上昇は、魔力を心身になじませる事で行う。
使った魔力結晶は当然なくなる。
その分、稼ぎが減る。
なので、魔力結晶に余裕がない今までは控えていた。
レベルを上げるために装備や生活を台無しには出来ない。
武器や防具もある程度揃い、迷宮探索が無理なく出来るようになるまで待った。
その為に七か月を費やした。
長かったのか短かったのかは分からない。
しかし、ようやく多少の無理が出来るうようになった。
これからはレベルを上げることを主眼にしていく。
そうするだけの理由もある。
能力が上がれば、能力強化をする必要がなくなる。
その分、収入にまわせる魔力結晶が増える。
能力強化を使わなくて良くなるのだから当然だ。
それに、能力が上がれば迷宮の奥に行ける。
より強くて、もっと魔力の多い魔力結晶を手に入れることが出来る。
なので、レベルを上げれば最終的に稼ぎは多くなる。
強くなれば、それだけ死ににくくなるというのも大きい。
当たり前だが、生きのびるためにはこれも重要になる。
武器や防具も大事だが、土台となる本人の能力が一番重要なのは言うまでもない。
底力を上げるためにも、レベルは上げねばならない。
レベルを上げて殴りつける。
なんだかんだいって、これが一番強い。
智慧も技もあったものではない。
しかし、単純明快なこの方法こそが、もっとも確実な攻略法なのだ。
少なくとも、前世のRPGではそうだった。
最初から最強装備をもっていても、レベルが足りなければ最後のボスに勝てない。
装備品などはあくまで補助なのだ。
土台となる自力がどうしても必要になる。
ただ、その為に一時的に収入を減らす事になる。
装備もろくに揃ってない時期には出来なかった。
だから、武器や防具が揃うまで待っていた。
今、ようやくその苦労が報われる。
レベルを上げることに邁進していける。
装備も揃ったので、今までよりも幾らか深い所まで潜る事も出来る。
薬草などの準備もととのえた。
あとは実際に行ってみるだけだ。
「行くぞ」
ケンとダイゴを率いて迷宮に入る。
久しぶりに新たな事に挑戦していく事になる。