25 武器の変更
少しばかり奥まった所へと足を運んで一週間。
途中、休日を一回入れての迷宮探索は順調だった。
少なくとも失敗はしていない。
怪我もなく生きて帰って来れてるだけでも充分。
未経験の仕事に手探り状態でやってる事を考えれば、結果は上々だと思えた。
ここでマサヒロは武器を変更した。
カネが貯まったからだ。
とはいっても、良質なものが買えるわけではない。
今あるものを手直しして使い回すだけである。
まず、棒からナイフを外す。
その棒に、木槌の頭を取り付ける。
こうして簡素な打撃武器に装備を変更した。
ナイフは腰に佩いて予備の武器にする。
装備をこのように変更したのは、今やってる戦闘を考えての事だ。
マサヒロのやる事は、地べたを這い回る虫を弾き飛ばす事。
となると、棒きれでやるのは難しいものがある。
もっと当てる部分を大きくしたい、もっと簡単に吹き飛ばしたい。
そうなると、金槌・木槌のような形が理想的になる。
これならただの棒よりも当てる面積が大きくなる。
先端に主さが集中するから、遠心力も強くなる。
怪物を弾き飛ばしやすくなる。
ナイフを外すので、殺傷力は落ちてしまう。
だが、今のマサヒロがナイフを使う事はほとんどない。
それはとどめを刺す役目のケンとダイゴが担っていれば良い。
何かあった時の為に、予備の武器として携帯はするが。
ナイフの刃が必要な場面はほとんどない。
現状を考えればこれが最善だと考えた。
実際にどれだけ効果があるかは分からないが。
これは実戦で確かめるしかない。
そうして気持ちもあらたに迷宮に向かう。
いつもの場所になった地点で、いつも遭遇してる怪物と戦っていく。
効果は思ったよりも大きかった。
以前よりも簡単に弾き飛ばしていける。
それも、大きく振りかぶる必要は無い。
木槌の頭部分を地面すれすれに振り回しながら当てても、怪物は弾き飛んでいった。
「すげえな……」
自分でやっておいてびっくりした。
ちょっと形状が変わっただけでここまで変わるのかと。
思った以上に良い結果が出て嬉しくなる。
動きを小さくまとめられるようになった。
今まではゴルフのように大きく振りかぶっていたが。
木槌にしたら、ゲートボールのように動きを小さくする事が出来た。
時計の振り子のようでもある。
それだけの小さな動きで、怪物を弾き飛ばす事が出来る。
必要な労力がその分少なくなった。
ただ、殺傷力はやはり下がった。
木槌を怪物に振り下ろしても一撃で死んでくれなくなった。
なまくら同然であっても、ナイフの方が刺しやすい。
その方が致命傷になる。
ある面では攻撃力が上がり。
ある面では攻撃力が下がった。
どちらが良いのかは悩ましいものだ。
だが、ケンとダイゴと共に行動するならこれで充分である。
弾き飛ばせば二人が確実に仕留めてくれる。
それならば、マサヒロは自分の役割に専念すれば良い。
その役目に殺傷力は必要ないのだ。
そのおかげで稼ぎも少し増えた。
手にはいる魔力結晶が、一日あたり5個から10個くらいは増えるようになった。
今のマサヒロにとって、この差は大きなものになった。
「あと……」
そんなマサヒロはケンとダイゴにも促していく。
「お前らもそろそろ武器の事を考えろ」
二人にもそろそろ即席の武器を卒業してもらいたかった。
いつまでも使い続けられるものではないのだから。
何かの拍子にすぐ壊れる、その程度のものだ。
あくまで間に合わせでしかない。
「それは、お前らに渡してるカネでやりくりしろよ」
さすがにマサヒロが全額負担するつもりはなかった。
そうするべきものでも無いのだし。
言われた二人は、
「ああ、うん」
「そっか……」
と考えこんでいく。
二人なりに色々考えてるようだ。
ただ、目下のところ、買い食いに使える小遣いが減るなという心配の方が大きいようだ。
そういうところが年齢相応ではある。
「しばらく、串焼きと甘パンは控えな」
「うえ……」
「うーん」
二人は更に眉をしかめた。