22 能力強化
強い怪物だけではない。
奥まった所の怖いところは、もう一つある。
出て来る怪物の多さだ。
数は戦力だ。
能力や装備に極端な差がない場合、数が多い方が有利になる。
戦闘における基本的な事実だ。
迷宮において、この数の暴力が奥に進むほど大きくなる。
一度に遭遇する怪物が多くなる。
この問題にマサヒロ達も直面する。
出入り口近くなら、怪物の群れは数匹程度で済んでる。
しかし、ある程度奥に行くと、これが跳ね上がる。
一度に十匹以上になる事も珍しくない。
さすがにこれを今までのやり方で片付ける事は出来ない。
そこでマサヒロは次の手段を使っていく。
「いいか、これで能力を上げろ」
そういってケンとダイゴに魔力結晶を渡していく。
「そう思えばそうなる。
それで一気に蹴散らす」
頷くケンとダイゴ。
それを見て、マサヒロも魔力結晶を使った。
魔術の一つ、能力強化。
文字通り、体の能力を底上げするものだ。
使った瞬間、頭脳・感覚・身体のあらゆる能力が上がる。
もちろん、魔力によって上昇幅は変わる。
効果時間も。
今回使った魔力結晶では、そう大きな上昇はない。
それほど長く続かない。
でも、それで充分だった。
数多く出て来る怪物は、比較的弱いもの。
それが迷宮における通例だ。
マサヒロ達の前に出て来たものも例外ではない。
出入り口付近で遭遇するような怪物と強さは変わらない。
能力を上げれば充分に対処出来る。
その証拠に、群れの中に突っ込んだマサヒロによって、怪物は次々に弾き飛んでいく。
ケンとダイゴもそれらにすぐさま向かい、とどめを刺していく。
今回は二人一組ではなく、一人ずつ行動してる。
それで充分だからだ。
能力を上げてるので、一人でも確実にとどめが刺せる。
そうしていけば怪物の数が減る。
減ったころに魔術の効果も切れる。
切れるが、もう残り三匹とか二匹とかまで減ってる。
そこまで減れば、魔術による能力強化も必要ない。
こうして能力強化の魔術もあわせて使っていく。
少し奥まった所にいる怪物も楽に倒していく。
稼ぎは順調に増えていく。
最終的に手にした魔力結晶は120。
昨日よりは少なくなった。
だが、大半が幾らか強い怪物のもの。
含まれてる魔力の量は多いはずだった。
「これならどうにかなるかも……」
そんな期待をしながらこの日は迷宮から出ていった。