21 昨日よりも奥へ、より強い敵と
稼ぎの少なさに嘆いて迎える翌朝。
それでも迷宮に行かねばならない。
どんなに少なくても、中間搾取が大きくても。
稼がなくては生きていけないのだから。
とはいえ、何の策もないわけではない。
ならばと次を考えていく。
より多く稼げるように。
「というわけで、今日はもうすこし奥まで行く」
ケンとダイゴに本日の予定を通達していく。
「奥にいる怪物はもっと強い。
そして、魔力の大きな結晶を出す。
それを取りに行く」
じつに単純な方法だ。
分かりやすく簡単だ。
つきまとう困難を考えなければ。
「でも、それって」
ケンもダイゴもさすがに気付いている。
「もっと危険になるんじゃ?」
「確かにな」
二人の不安を全く拭い去る事なく、マサヒロは認めた。
「でも、考えがある。
それを確かめてみたい」
自信満々にマサヒロは告げた。
それを聞いて二人は察した。
何を言っても聞き入れないと。
正直怖くて仕方が無いが、どうにもならない。
諦めて二人はマサヒロについていく事にした。
他に道は無い。
確かに奥に行くのは危険だ。
だが、マサヒロと離れるのはもっと危険だ。
この中で最も年長で、なんだかんだで二人を引っ張っていってる。
村の外のことを知らない二人にとって、マサヒロは命綱だ。
生命線だ。
ライフラインだ。
それが無くなったらどうなるか。
その先を想像するだけの知力がケンとダイゴにはあった。
だから逆らう事なくついていっている。
そして、かすかな期待もある。
それでもマサヒロならどうにかするんじゃないかと。
何らかの勝算があるんじゃないかと。
今まで上手くやってきたのだ。
今度も上手くやるんじゃないかと。
そういった思考が、自分達の中にある恐怖や不安を騙すための方便だとしてもだ。
そう信じてマサヒロについていく。
他にとれる手段はないのだから。
そんな二人を従えて先に進むマサヒロ。
ある程度進んだところで魔力結晶を取り出し、魔術を使う。
頭の中に周辺の情報が流れこんでくる。
昨日よりも奥まったところで使った探知の魔術。
それによって、周辺にいる怪物の場所を探し当てる。
「行くぞ」
二人をつれて先へと進む。
本日最初の成果を出すために。
そうして昨日よりも奥に進み。
そこで出会った怪物に向かっていく。
出て来たのは平べったい三葉虫のような怪物。
姿形は昨日戦ったものと同じだ。
だが、幾分動きが早い。
体もわずかながら大きく見えた。
そんな怪物相手に、昨日と同じ方法で戦っていく。
一匹ずつ弾き飛ばし、そこにケンとダイゴが向かっていく。
分散した怪物を二人がかりで倒していく。
同じような姿形の敵だから、同じような方法で対処出来た。
ただ、昨日よりも若干ながら弾き飛ばしに難い。
重みというか、踏ん張りというか。
それが強いような気がした。
突き刺してとどめを刺すのも手間取った。
ほぼ一撃で死んだ昨日と違い、今日の怪物は二回三回と突き刺さなければ死なない。
耐久力や生命力が若干高い。
その分、僅かながら倒すのに手間取った。
総じていえば、大した敵ではない。
楽に倒せる。
しかし、昨日ほど楽ではない。
ほんの僅かではあるが、敵が強くなってるのは確かだ。
明らかに敵は強くなってる。
それを三人は感じ取った。
そこにマサヒロは手応えを感じた。
これだけ強いのだ。
魔力結晶もそれなりに良質なものになってるだろうと。
そう信じて、幾分強い虫型怪物が出て来るあたりを巡っていく。
怪物を血祭りにあげながら。