20 本日の儲け、願いましては
探索者協会に戻り、受付へと向かう。
魔力結晶を換金するためだ。
ここで金にしないと食い扶持が手に入らない。
「初めてにしちゃなかなかだな」
受付のオッサンはそういって感心する。
それから魔力結晶を鑑定して、いくらになるか計算していく。
「これなら、全部で1万7000円だな」
思った以上の金額に驚く。
中に魔力が少し多めの結晶があったようだ。
それが値段を上げてるようだ。
嬉しい誤算だった。
同時に、少し腹も立ってくる。
(俺達が倒していたのは、こんだけ金になるのか)
村で倒してた怪物達。
それらがこれだけの儲けになると知った。
なのに小遣いすらもらってない。
10年近くただ働きだ。
(ふざけんな!)
憤るのも当然だ。
そうして腹を立てつつ、目の前のカネ勘定もしていく。
まず、全部を換金するのは避ける。
明日の迷宮探索に使う分は確保しておく。
それ以外は換金した。
総額1万6000円。
これが初日の儲けになる。
──というわけにもいかない。
ここから差し引かれるものがある。
換金手数料。
それと、税金だ。
換金手数料は探索者協会が取るものだ。
換金金額の1割が値段になる。
これがまず差し引かれる。
この時点で1万4400円になる。
そこに税金がかかる。
成立は3割。
これが先ほどの金額にかかる。
そうすると、手取りが1万80円になる。
マサヒロ達が最終的に手にするのはこれだけになる。
「これだけか……」
さすがに手取りを見て唖然とする。
上手く稼いだと思ったのだが、そうもいかない。
一応、食ってはいけるが食うだけで全てが消える。
もっと稼がないと厳しいものがある。
これもまた考えないといけない。
ただ、何はなくとも今日一日分の食い扶持は手に入れたのだ。
ここは素直に喜ぶことにする。
自分達だけでも何とかなるのだと証明されたからだ。
さしあたり、食うに困ることはない。
「それじゃ、食いに行こうぜ」
ケンとダイゴを促して食堂へと向かう。
今日も1000円の食事をとり、寝床に入る。
寝床も昨日と同じ押し入れのような寝台。
そこに体を入れて眠りにつく。
三人でしめて6000円。
残り4080円。
「明日の朝食で、3000円か」
残りは1080円。
これが迷宮初日の利益になる。
泣きたくなるほど少ない。
だが、ここからやっていくしかないのだ。
「きっついな……」
探索者をとりまく状況をあらためて知った。
命がけでこれは安いと。
それでもやってくしかないのだ。
楽に稼げるようになるまでは。
辟易していく。