16 何が正解かも分からないまま
「でも……」
棒にナイフを結びつけてる途中、連れの一人が不安をもらす。
「これで上手くいくの?」
「さあな」
マサヒロにも分からない。
正直に言えば、無理だと思う。
こんな出来損ないの武器でやっていけるとは思えない。
だが、資料室で見た情報が確かならどうにかなる。
迷宮の入り口近くに出て来る怪物はそれほど強くはない。
何とかなるはずだと思いたかった。
「あとは運だな」
幸運が巡ってくることを願うしか無い。
幸運を無理やり引きずり込まねばならない。
「それと、やり方も考えないと」
どのみち作戦は必要になる。
どう動けばいいのか。
どう立ち回るのか。
ガムシャラにぶつかっていってどうにかなるものではない。
とはいえ、上手いやり方などすぐに思い付くわけもない。
前世でも怪物との戦いなどしてないのだから。
せいぜいゲームでやったくらいだ。
それがどれだけ活かせるのかは分からない。
何も知らないよりは良いのだろうけども。
心許ない知識と情報。
今あるのはこれだけだ。
あとは実際に目で見て確かめるしかない。
そして、やり方を見つけていくしかない。
分の悪い賭けだ。
「どこかに入れればいいけど」
既に活動してる探索者達。
その一団の中に入れればまた違ってくるだろう。
しかし、何の経験もない、まだガキといってよい者を採用するかどうか。
戦力になりそうもない者を受け入れるとは思えない。
それに、すぐに受け入れるような所は問題もありそうだ。
前世におけるブラック企業。
それと同じような所ならどんな人間でも受け入れるだろうが。
そんなところは絶対に入りたくない。
「とにかく頑張ってみよう。
どうなるか分からないけど」
「うん」
「…………」
一人は返事をし、一人は無言で頷く。
その表情は硬く暗い。
仕方ないとは思う。
怪物ひしめく迷宮に行かねばならないのだ。
怖くて当然。
逃げてもおかしくはない。
(逃げるかもな)
それも覚悟する。
逃げる者など珍しくもない。
前世でも、一日だけ出勤してきて、以後姿をくらませた者もいる。
特別珍しいことではない。
だから、目の前の二人が逃げだしてもしょうがないとは思った。
それを止めることも出来ない。
「やるしかねえよ。
他に道もねえんだから」
念のためにそう告げていく。
少しは歯止めになればと。