10 新人が増える
焦る気持ちもあるが、どうにもならない日々が続く。
とはいえ、どうにかなるものでもない。
今はやれる事だけやる事にしていく。
他に何が出来るわけでもないのだから。
あとは行商人から町の事などを聞く。
それぐらいしかやる事がない。
少しでも何か聞ければと話しかけていく。
そう多くの事は聞けないが、村の中だけではわからない事も知る事が出来た。
そうこうするうちに他の子供達も外回りに参加するようになる。
マサヒロより年下の者達だ。
いずれ村の外に追い出される者達なのだろう。
将来の同行者という事になる。
(本当に間引きなんだな)
それがよくわかる。
新しく入ってくるのは、跡継ぎではない者達ばかり。
そんな者達が集められている。
それらにやり方を教えながら壕を巡る日々が始まる。
ありがたい事に面倒な性格の者はいない。
素直で指示に従ってくれる。
前世で苦労させられた後輩や新人とは大違いだ。
(あいつらもこれくらい言うことを聞いてくれればなあ)
今更だがため息が漏れる。
とはいえやる事はそう多くは無い。
壕に沿って歩いて、怪物がいれば処分する。
時間はかかるがこれだけだ。
最初は攻撃を当てるのに苦労するが、慣れればそれも難しくはなくなる。
一か月もする頃にはやってきた子もやり方をおぼえる。
そうなればアキヒロの手間も減る。
これは楽だなと思いながら、アキヒロは村を外を回っていく。
そうしながら、これからも何人かやってくるんだろうと思った。
他にも子供の余ってる家はある。
村を追い出されるまでは自分の所に放り込まれるだろうと。
(あの家と、あの家と……)
思いあたるところは何軒かある。
予想通り、翌年も、その翌年も新人が入ってきた。
合わせて四人が村を出るまでにアキヒロの所にきた。
この子達が、後に迷宮を共に回る仲間になっていく。
そうなるように面倒もみていく。
ありがたい事に、全員よい子だった。
(素直な子ばかりで良かった……)
前世と違い、面倒を起こすような者はいない。
無駄に喧嘩を売ってくる者もいない。
指示には素直に従ってくれる。
危険な事もしない。
才能や才覚があるかどうかはわからない。
だが、性格や人間性は文句が無い。
それだけで充分だった。
問題を起こさない、それだけで素晴らしい。
(こいつらとだったらやっていけるかも)
そう思うくらいにはよい子が揃っていた。