66話 作戦会議
「別にいいよ?」
そんなどう考えても安いノリで笹木君は了承の意思を示してくれた。
友人である瑠衣ちゃんの誘いでその彼氏である笹木君と浮気する事になったワケだ。
勿論フリで実際にするわけでは無い。
最近琴音に対してヘラヘラしている康太をわからせる為の措置だ。
しかし……。
「本当にいいんでしょうか?これは浮気に当てはまらないんですか?」
「妹さんにデレデレしてる只野君に見せ付けるんだからそんなの気にしてたら駄目だよぉ!」
「いえ、瑠衣ちゃんがですよ?」
「え?」
「笹木君は瑠衣ちゃんの彼氏なんですから私がフリでも彼と付き合うならそれって浮気…」
「えー?何で?私がイイっていってんだし大丈夫だよー?」
やっぱ軽いなぁ…
付き合ってはいてもまだ自覚がないのかも知れない。
「瑠衣ちゃんは笹木君の事好きじゃないんですか?」
「え?好きだよー?」
「恋愛的な意味でですよ?」
「それ未だに良く分かんないんだよね…でも純君の事は好きだよ、私のこと特別扱いしてこないしフラットな感じで落ち着くし、いて嫌にならない。」
「左様ですか……。」
おそらくだがまだ友達感覚から抜け出せていないのだろうと思った。
こんな初々しい状態の二人にこんな案を持ちかけるのは
酷なのではないか?
そんな風にも思えてくる。
まぁ、持ちかけてきたのは向こうからだけど…。
「まぁ俺はやっても構わないが前園さんはホントにいいの?」
「私ですか?」
「もしアイツが浮気だと理解した場合アイツは本格的に前園さんと距離取るとおもうよ?そうなった場合もう修復は不可能じゃない?」
「うっ……。」
「えーでも只野くん実質妹さんに浮気してる様なものじゃん、やり返さないとフェアじゃなくない?」
「フェアもくそもあるか、だいたいこの提案したの二人がどうなるか瑠衣ちゃんが見たいだけでしょ?」
「えー、そんなんじゃないよ〜」
「あーこれ絶対にそうだ…まったく…」
「え…?てことは…」
「勘違いしないでアキちゃん、確かに浮気された相手がどんな行動とるかは興味あるけど私は二人の仲を引き裂きたいんじゃない、私の知る只野くんはもっと誠実で一途だし、アキちゃんを簡単に見捨てたり諦めたりはしないと思うよ?じゃないと私は只野君を許せないしね」
「やっぱりまだ康太の…いえ…なんでもないですよ…?」
私の発言に対してもにっこり笑顔の舞野さんはこう返した。
「それも勘違いしないで…只野君にはもう何の感情もない、でも何も思わないワケじゃない、私をふってアキちゃんを本命にしたのに他の女にうつつをぬかすのが許せないだけ、コレでも私、子供の頃からかわいいって言われ続けて来たプライドみたいなのはあると思うの、私をふった只野君が只野君らしくない行動をとって欲しくないの。それだけ。」
何の感情もないならここまで康太に対して思いはしないだろと思ってしまう。
ただ恋愛感情はたしかに無いのだなとも思う。
彼女は康太におそらくだが理想像みたいなモノを被せている。
理想の男性像、父性、あるいは友人像…。
それを康太自身の行動で否定されたくないのかも知れないな…面倒臭い娘だ。
これまでかわいい可愛いと言われ続けて来た彼女にとってなびかないどころか興味すら示さない男は一つの理想の形なのだろう。
そんな康太が自分になびかない最大の理由が私だったの
だ。
私がいる限り康太が他の女になびくことはないと言うのが彼女の理屈だったのだろう。
なのに琴音にデレデレしていれば解釈違いも良いところだろう。
だから私に浮気させた事で明らかとなる康太の本気度合いをみたかったといったところか?
その結果私と康太がどうなるかまでは考えが及んでいない辺り彼女の危うさが出ている。
だからこそ笹木君は彼女に必要なストッパーとしての役割があるのかもしれない。
他人を見ることに関しては笹木君の右に出る者はいないと私は思っている。
だから好き嫌いは置いといて瑠衣ちゃんには笹木君が必要なのだろう。
「成る程…良くわかりました。なら浮気作戦はやめておいた方が良さそうですね。」
「え?いいの?私は気にしないよ?」
「瑠衣ちゃんはもっと笹木君を大事にしてあげてください、瑠衣ちゃんにとって彼程の男はいませんよ?」
「え〜?」
「なんかイキナリの高評価にビビるわ!?」
「私の純粋な評価ですよ?」
「アキちゃんのお墨付きとか純君やりますなー」
「いやいやそれ程……でもあるかな〜」
「あははウザぁ〜wでもどうするの?只野君このままだと妹さんに取られたままだよぉ?」
「うーん…それは…」
「別にそんな考え込む問題でもなくね?」
「え?」
「うん?」
「これまで通りで良いんだよ、これまで通りでさ」
「これまで通りですか?」
「そ。」
「妹さんは前園さんからみたら前となんも変わらないわけでしょ?で、康太は妹さんが元々は苦手…そこは変わらないなら今は妹さんに絆されててもいずれ綻びが生まれる。」
「でも只野君が妹さんに持ってかれちゃう可能性はゼロじゃなくない?」
「ゼロだよ。」
「えぇーどうしてそういいきれるの?」
「康太の性格的にあの子は荷が重い、康太はつかの間のギャップ萌に翻弄されてるだけだ」
「ギャップ萌ですか…、それはそうですね、何か妬けますね、私より康太に詳しいですし、」
「まぁこれでも友達だからな」
「友達…」
忘れていた。
そうだ…私はもともと康太とは男同士の友達だった…。
いつからか康太を完全な異性として意識していた。
康太に対するこの気持ちは嫉妬から来るものだ。
なら何故私はこれほどまでアイツに嫉妬しているのか…
好きだから?
友達として?
それとも異性の恋人として?
知らない内にここまで考え方が女々しい物になっていた自分に驚きだ。
「前園さんに康太を取り戻す一番手っ取り早い方法を教えて上げるよ。」
「色仕掛ですか?」
「え?」
「え?」
「………。」
「えっと……デートに誘うとか……って言おうと思ったんだけど……まぁ奴にはそれが一番てっとりばやいね」
「あきちゃんのそのたまに出て来る男よりな思考、私は好きだよ!」
どうやら私はまだ男よりな思考のようだ。
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