65話
下駄箱付近で琴音ちゃんとは別れ僕とアキラ君…そして蔵田君と村田君などのクラスメイト達と教室に向かう。
未だにアキラ君は多くの人波に阻まれていて凄い人気だ。
親衛隊のメンバーには2年からクラスメイトになる人達もいるみたいだがほとんどは他クラスの人達だろう。
近づく事も満足に出来そうにない
前園親衛隊の皆さんも学期が変わってもお変わりないようで一安心だが琴音ちゃんのせいで出遅れてしまった。
僕の席はアキラくんの席からほど近い距離になる。
間違いなく椅子をパクられるので先に行って確保しておきたかったのだが仕方ないと諦めるしかない。
何を言ってる、席が取られるならそこは僕の席だからどいて欲しいと言えばそれで済む話だろうとそう思うだろう?
しかし僕の様な陰キャはそれが何より苦手なのだ。
話し出せば話せるのだが人に話しかけるのが個人的にはハードルが高い。
いつもどもってしまってあっコイツ今どもったとか噛んだと思われるのが死ぬ程恥ずかしいのだ。
まぁあと陽キャは怖い。
なんとなく理屈抜きで怖い。
そんな感じだ。
「いやー相変わらず前園さんの人気はすげぇよな」
「だな、ドラマの中の世界だぜあんなん。」
「只野君も毎日大変だなぁー」
「え?あはは、まぁ…そうだね…」
「で?只野君と前園さんっていつから付き合いだしてたの?」
「気づいたら付き合ってたみたいになってたけど入学当初から仲良かったよなっ?」
「いやー秘められた交際関係とかエロいよな!」
「いや別にエロい要素なくね?」
「バッカおめぇーみんな知らないだけでもしかしたら…てのがいろいろ想像の余地があってエロいんだろ?同級生のもしもとか下手なAVよりエロいわ」
「無いわぁー…ごめんな只野…コイツ変態で…」
「ははは…うんマジドン引き」
「いやぁー引かないでー」
なんてアホなやり取りを今朝知り合ったばかりの蔵田君と村田君の二人とする。
なんだろうかこの二人とは馬が合うのかあまり気を使わなくていいのがありがたい。
そんな事を考えてると
「コラ!総悟!あんたまた馬鹿な事言ってたんでしょ?只野君ドン引きじゃん!」
女子が割り込んで来た。
肩くらいまで伸ばした髪を茶に染め上げたギャル少女だ。
そんなにキツく感じない程々にメイクされた顔はTheギャルといった出で立ちで制服も適度に着崩している。
ダボダボの靴下、所謂ルーズソックスを履いている。
20年前の産物だがブームは回帰するというのは本当なのか今のギャルにとってのトレンドらしい。
マジかよ…。
ブルマも回帰して欲しい、学校公認コスプレ衣装だろあんなん。
「えっと…彼女は…」
「あ〜あいつは袖口花音…総悟の彼女だ。まぁ幼馴染みってのだな。」
「リアル幼馴染み…だと?」
今朝知りあった男子クラスメイトの片割れの蔵田総悟。
蔵田君の彼女が袖口花音というギャルらしい。
見てくれからくるギャル装備に加えて幼馴染み属性まで完備しているとはJK恐るべし。
「家が隣で窓が繋がってるらしい、漫画だよなw」
「ふぉあ!?窓?繋がって?」
「あはは何その反応、只野君って面白いね」
「別に普通だろ?そんな騒ぐ事じゃねーよ」
「いやいや幼馴染みの家が窓と繋がってるとか奇跡だよ?ミラクルだよ?」
「おおー!只野もそう思うよな?マジ漫画だよな?ありえねーw」
「うん!ありえねー」
「お前らなぁ!だいたい只野だってあの前園さんと幼馴染みだろ?普通だよ普通」
「僕と前園さんの場合は幼馴染みは幼馴染みでも変則的だからなぁ」
「変則的って?」
「う~んと…説明が難しい…」
本来の世界では男で出合ったのが中学だが今世では女で出合ったのは小学1年の頃だ。
しかも自分から僕の所に来て
「コレで幼馴染み属性も完備だな!」
とか言ってきたのだ。
邪道である。
しかし幼馴染みとしての段階はしっかりと踏んでいる
故に変則的幼馴染み。
こんなのどう説明しろというのだ。
教室に入った後は村田君と蔵田君にその彼女の袖口さんに加え笹木君も加わる。
友達が一気に増えた。
まるでリア充みたいじゃないか!
ちなみに笹木君が僕の席にカバンを置いていてくれた。
彼は気配りの出来る陽キャラだ。
アキラ君の所には相変わらず人だかりが出来ている。
しかしいつもと違い話の内容は妹…琴音ちゃんの事が中心のようだ。
「前園さん聞いたよ!琴音ちゃんの生徒会選挙を支援するんだって?」
「はい…、もう話が広がってるんですね。」
「もうその話で持ちきりだぜ?」
「しかも琴音ちゃんアキラちゃんを副生徒会長に推薦してるんだって!ちょーエモいよね!」
「姉妹そろって生徒会入りとかスゲーよな!」
「こりゃ四ノ宮会長もうかうかしてらんねーな」
陽キャ達は生徒会関係の話で持ちきりだ、彼等にとって他人事のセンセーショナルな話題は飛び付くには最高の題材なのだろう。
まぁわからなくもない。
時間は朝のホームルームから1限目の授業へとシフト、授業中、その間もクラスの生徒達はスマホをせわしなくいじっているみたいだ。
それは2限目、3限目と時間が進んでも変わることはなかった。
陽キャのいらない統率力というのは凄いモノでクラスが一丸となってアキラ君、ひいては琴音ちゃんを生徒会長にするという大きな流れが形成されていった。
そしてこの流れは留まる事を知らないらしくウチのクラスから始まった前園姉妹の生徒会という流れはあっという間に2年に波及し放課後辺りには2年全体が琴音ちゃんに投票する流れが出来上がっていた。
1年の方でもかなりの票が集まっているらしく噂では次の生徒会選挙の結果は既に決したなんて声も聞いた程だ。
怖すぎだろう。
「何故こうなった……。」
アキラは誰に聞こえることもない小さな声量で呟いた。
こうなるのは予測していた。
しかし早い…早すぎる。
1日でこうなるとは誰も思わないだろう。
改めて自分の影響力を侮っていた。
私ってホントに人気あるんだなーと……。
まぁ冗談はさておき(実際アキラの影響は馬鹿に出来る物ではなくアキラ自身もそこを把握している)
琴音が入学式で訳わからん代表挨拶をしたのも現会長と言い合ったのも全てはパフォーマンスだったわけだ。
しょーじきな所、学生達にとって生徒会長なんて誰でもいい。
そりゃイケメン、美女だったらそれに越した事は無いだろうが生徒会長が誰かで何かが劇的に変わる事はまずない。
所詮は子供のお遊戯の延長だ。
影響なんか出るほうがどうにかしてるってもんだ。
現生徒会長の四ノ宮は前生徒会長の九龍院の直接の部下であり信頼も実績もあるがパンチ力はない。
イケメンだから女子にそれなりの人気はあるがそれだけだ。
入学式で馬鹿みたいなやり方で自身を印象付けた琴音の方法は実のところ実績のある四ノ宮に追い付くのにもっとも効率のよい早道の方法だったわけだ。
そしてこの学校で人気者の姉を出汁に使う事で盤石の体制を作り上げている。
我が妹ながら流石と言わざるおえない。
しかしそんな事はこの際どうだっていい。
家に閉じ込められないためにも琴音をサポートする事自体に変わりはないからどうだっていいのだ。
問題は康太の奴だ。
何だアイツ!
デレデレしやがって!
マジむかつく!
どうせ本物の清楚幼馴染みキタ~とか思ってやがんだろうな。
琴音に前世にこっ酷くやられた事をすっかり忘れてやがる。完全に騙されてやがる。
はぁ………。
しかしどうするか…、
このままいけば琴音が新生徒会長なのはほぼ間違い無いだろう。
四ノ宮君の事は正直よく知らないが今年から晴れて生徒会長になれたのに速攻で引きずり降ろされるのだ。
可哀想とは思う。
いっそ慰めてやってそこからいい感じになって康太の野郎を絶望のどん底に叩き落としてやろうか…。
NTRショックをヤツに与えてやるのだ。
はぁ…アホらし…。
もし四ノ宮君が本気にしたら面倒くさい事この上ないしなにより四ノ宮君に申し訳ない。
「アキちゃんどしたの?なんか昨日に増して元気ないじゃん?」
「ふえ?あ…瑠衣ちゃん…。」
そこに突然現れたのは舞野瑠衣だった。
小柄な体に不釣り合いな巨乳をぶら下げたゆるふわヘアーの美少女だ。
「はは~んさては恋煩いですなぁ?」
「そんなんじゃないですよ…。」
「嘘は良くないよ?アキちゃん?何か悩み事あるなら聞くよ?私等友達なんだし?」
「瑠衣ちゃん……。」
結局私は瑠衣ちゃんに溜め込んでいたモノを全て吐き出した。
未来とか時間逆行とかは言えないがそれ以外は偽りなくほぼ全て吐き出した。
瑠衣ちゃんヤバい。
うんうん、辛かったねと全肯定ボットで私を優しく包みこんでくれる。
ふわふわヘア〜が気持ちいい。
私よりちいさな体なのにおっぱいが大きくてママ味が凄い。
瑠衣ちゃんから産まれなおしたい人生である。
「なら康太君に嫉妬させれば良いよね!」
「いえいえ、私もそれは考えましたけどリスクが大きくて…。」
「なら私の彼氏を貸してあげるよ!」
「笹木君を…ですか?」
「そそ!笹木君とアキちゃんが仲良くしてるトコを只野君が見ればきっと嫉妬してくれるよ。」
「えぇ…、はっ!?まさか瑠衣ちゃんまだ康太の事…」
「あはは無い無い、私の今の彼氏は笹木君だしね。」
「その笹木君を私に貸すんですか?」
「うん。そだよ?」
何か問題でも?
そんなニュアンスで聞いてくる瑠衣ちゃん
しばらく忘れていたがこの子はこういう子だったのを忘れていた。
「取り敢えず……笹木君と相談してからですかね…」
「多分大丈夫だけどそれもそだね、勝手にきめたら怒られちゃうしね!」
どっかずれてんなと思いながらも瑠衣の提案にマジメに乗ろうとしている明だった。
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