6話 清楚系幼馴染美少女の料理
ファミレスからの帰り道
笹木君とは既に別れ僕は前園さんと一緒に家への帰り道を共に歩いていた。
美女と野獣、なんて言えばまだ聞こえは良いほうだが僕と前園さんのツーショットはさながら美女とミジンコ。
朝にも感じたが人の目線が兎に角痛い。
意識しない様にと心がけた所でこればかりはどうしょうもない。
「解ってるつもりでしたが只野君のその陰キャ丸出しの自己肯定感の薄さは少し問題ですねー」
「元陰キャなら僕の気持ちも少しは解って欲しいね、」
「私は自分の事を今も昔も陰キャだなんて思った事はないですよ、ただ世界の器量が狭かっただけ、こうしてそれなりのビジュアルならないと理解を示さない、世界は私からすれば凡人しかいない、只野君も他の連中も私からすれば当価値で陰キャだとか陽キャだとか、それこそ意味のない括りです」
「超越してるな相変わらず、凡人には理解出来ない境地だよ」
「勘違いしてるかも知れませんが私とて凡人です、天才だとか超越者だとかはこの世界で極わずか一握りなんですよ、だからこそ敬い尊ぶ価値がある。」
「アキラ君はその天才や超越者になりたいんじゃないの?」
「……そんなだいそれた事は考えて無かったですかね…」
「ふーんそっか、僕はてっきりアキラ君はそういうだいそれた事を大真面目に語る変人だと思ってたよ、たしかに凡人だね。」
「………。」
アキラ君…いや、今は前園さんモードか。
前園さんは端正な顔を少し歪ませてこちらを見てくる。
彼女の事をよく知らない奴は見つめられてると興奮しそうなモノだが僕にはそんな風には思えない。
アレは割りかしガチめにキレてる顔だ。
美人が怖い顔で睨んで来ると怖いと言うがアレは本当の事のようだ。
今、直に体験してしまった。
「そういや康太、お前、清楚系幼馴染美少女の手料理が一度でいいから食ってみたいって言ってたよな?」
「……、え?…はぁ…」
「作ってやるよ、この清楚系幼馴染美少女たるこの私がな!」
「いやいいよ、アキ…前園さんは料理とか出来ないでしょ?」
「いやいや、お前いつの話してんだ、私は皆の憧れのアイドル、前園明様だぞ?いつまでそんな汚点をそのままにしていると思ってんだ、サイ○人が尻尾を握られて弱る下級戦士じゃないんだよ、私は!」
「キャベツきったら断面が無くなる特殊スキルを持ってそうなアキラ君が?」
「黙れ私の料理を作画崩壊扱いするな!いいだろう、見せてやる、清楚系幼馴染美少女の料理をな!」
「見せてもらおうか、清楚系幼馴染美少女の料理とやらお!」
「ふふ、くくく」
「はは、ふふふ」
どちらからかは分からないが、お互い笑い合う二人。
二人は以前の二人の様に下らないオタクトークを交えながら、対等な関係を築いて笑い合っていた。
もっともそのことに対して当人達は気づいてはいなかったが
それはそれとして。
只野康太は冷や汗を流していた。
前園明…の中の人ことアキラ君は一応料理は出来る
炒飯だといってフライパンの上にご飯と卵とソースをドバがけした焼飯を料理と呼ぶならだが
まぁ男の料理の定番だと思うと普通だし
食べられない事もない。
彼の家に行ったら何度か振る舞われた事がある。
しかしアキラ君はそこで止まる様な分かり易い男では無い。
ここからがアキラ君の料理の真骨頂である。
個性を注入し、俺オリジナルのアキラスペシャルを振る舞ってやる!といって一応料理の枠に収まっていた焼飯を前衛的なオブジェに変換する固有スキルを彼は保有していた。
味付けといって余計な具材をトッピングして不味くする、彼はそんな汚料理の天才だった。
「さてとそうと決まれば善は急げだ、行くぞ康太!」
「いや、アキラ君、お願いだから、料理とかいいから、」
「ふふん、遠慮するな!マイフェイバリットフレンドよ!私が単なる凡人だと思うなよ?我は凡人を極めし者だ、凡人の求道者だ!」
「自分でいってて意味わかんない事になってる自覚ある?」
「だまらっしゃい!みてらっしゃい!」
アキラ君のテンションが明後日の方向に飛んで行く。
僕の胃は果して飛んで行かずに耐えてくれるだろうか、それだけが気がかりだ。
さて、男のロマンという言葉がある。
誰が最初に言い出した言葉かは知らないが僕はこの言葉を割りかし多く多様する。
何故かって?便利だからだ。
男のロマンは男の数だけ存在するし人によって様々だ。
人の趣味趣向はそれこそ人それぞれだし、誰にだって性癖の一つや二つあるだろう。
僕等オタクはこの性癖の具現化を男のロマンと題している傾向がある。
まぁ勿論僕の持論で一般論ではない事くらいは理解している。
でも男のロマンってそういうものだろ?
タイトミニスカートに白いタイツのナース。
黒タイツにピッチリスーツの女教師。
保健室の先生なら尚良しだ。
バニースーツも捨てがたいしメイド服もいい。
男のロマンは確かに存在するがこれ等は再現が難しい。
ナース服やバニースーツやメイド服なんて特注しないと簡単に手に入らない、しかし
家にある日常使いしているものでも割りかし簡単に男のロマンは再現出来る。
問題はやってくれる相手がいるかだ。
僕には彼女とかいない
しかし
「康太〜!裸エプロンしてやるよ!」
「はぁ!?」
性癖をコレでもかと詰め込んだTS隠れ陰キャ拗らせ清楚系幼馴染美少女がいるのだ。
さて、何故彼女はこんな事を言い出したのか。
そんなの僕にわかる筈がない。
無いのだ。
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