53話 アキラの影の努力
「あー最悪だ!最悪だよぉ〜」
目を覚ました明は最悪だと起きてからもう何度目か分からないくらいに同じ言葉を繰り返していた
「いやぁ盛大に酔っ払ってましたねぇ〜」
「ちくしょ〜め〜」
明は実のところ、よっぱらっていた時の記憶がまるで無い。多少は覚えているが康太が家に来たのがどのタイミングか分からない。
昨日と言われたら信じてしまえるくらいには曖昧だ、そして…
「最あき…ぐぁ!?頭…あだま痛いぃー」
二日酔いである。
琴音と康太、この二人の仲良さそうな態度にイライラして酒に走った結果である。
現状16歳で未成年である彼女だがコンビニなどは未成年の飲酒に寛容…というより緩いコンビニ等も普通にあり明はそういった店を前世から知っていた。
今世では酒に逃げないを目標にしていたがとうとう自分でその制約を破ってしまったわけだ。
その結果記憶が無くなるまで泥酔し康太に絡んだのだからコレを最悪と言わず何と言うという話だ。
「それで?どうしてアキラ君は学校サボって酒飲んでたの?」
「……。」
「心配したんだよ?」
「……うるせーよ…」
「な!?」
「お前にはカンケーねーだろ、私が何処で何やってたかなんて!」
「僕はただ…アキラ君が心配で…」
「うるせーよ!何が心配だよ、どうせお前も琴音の方にいくんだろ?しかたねーよな…私みたいななんちゃって清楚キャラよりあっちは本物の清楚キャラだ…お前の理想そのものだ…私なんて…」
「はは、なんだそんな事か…」
「おい?テメェ何笑ってんだよ?」
明は康太を睨みつける
たしかに今の笑いは不謹慎だったと康太は自身の行動を省みる。
しかし嬉しかったのだ。
彼女がこんな風に嫉妬してくれるのが
「ごめんて、別に笑うつもりは無かったんだ、ただ少し嬉しくて」
「はぁ?嬉しい?何が?」
「いや、僕の事をアキラ君は思ってる以上に好きなんだなって理解出来てさ」
「はっ?クソが!お前たまに恥ずかしい事をスラっと言うよな…引くわ〜」
「え〜、僕割りと真面目に言ってるのに…まぁそれはともかくとして僕と琴音ちゃんとかあり得ないよ…」
「どうして言い切れるんだよ?アイツはお前のガチの理想だろ?」
「たしかに一応は幼馴染だし、清楚で黒髪ロングだし将来的には明君に負けず劣らずの美少女になるだろうね…」
「だろ?だったら…」
「でも琴音ちゃんだ。」
「は?」
「明君も知ってるだろ?僕はあの子が苦手だ。前世のあの人を見下した目線、僕を人と思ってない態度、どうしてもそれがちらつく…一緒にいても心が安らがない、」
「でも今はお前の理想そのモノだろうが!」
「それはアキラ君のおかげだろ?」
「はぁ!?」
「何となくわかるよ…あの子の性格は前世とまるで違うからさ、多分幼少期から彼女の人格形成にアキラ君はいっぱい干渉してたんだろうなって、」
「……はぁ…なんだ…気付いてたのか…」
「そりゃね、あれだけ変わってたら可能性の一つとして考えるよ」
「だったらいいじゃん…琴音はお前の…」
「逆にどうしてそんなあの子と僕をくっつけたがるの?もしかして親友✕妹推し?」
「アホか!私はただ…お前にもちゃんとした彼女を作って欲しいと…」
「アキラ君はアホか!」
「うな!?何だと康太テメェ!」
「はぁ…もしかしてアキラ君まだ酔ってるんじゃないの?」
「はぁ?酔ってねぇよ…シラフだよ」
「さっきも言ったけど僕は琴音ちゃんが苦手だ、異性として見る段階にすらいけてない…それにむこうの考えてる事だって分からない…そんなの上手くいくわけないでしょ?そもそもあの琴音ちゃんが僕とそういった関係を望んでるのかって話」
「いや、しかしだな!」
「そもそもさ、考えてみなよ?
僕の側にはいつだって側にいてくれる友達で彼女な存在がいる。
見た目は黒髪ロングの清楚巨乳美少女で幼馴染属性まで備えてて中身は気心知れた男心に理解ある親友が彼女なんだよ?それってさ、最強じゃん!!」
「さ…最強?ほんっと!ホントにお前ははずかしいことをスラスラペラペラと言えるよな…もしかしなくても馬鹿だろ?」
「とっくに御存知なんだろ?」
「ああ…そういやわたしの友達で彼氏の男は馬鹿だったわ…あーあ、馬鹿みてぇ、ホントに馬鹿みてぇ…何を悩んでいたんだろうな、たかだかクソ妹ごときにこの馬鹿の彼女が務まるワケ無いわな!」
「酷いなぁ人のこと馬鹿馬鹿って…」
「自他共に認めてるんだろ?まったく愛すべき馬鹿とはお前みたいなのを言うんだろうな!」
明の表情に笑顔が戻る
鬱屈としたものの無い晴れやな表情だ。
彼女にはこういった表情が良く似合う。
康太は改めてそう思った。
「それでその琴音ちゃんがここに来るって本当なの?」
「ああ、まぁまだ確定じゃないけど多分来ると思う」
「なんか嘘みたいな話だね…アキラ君は美少女になったからまだわかるけど僕にもあの距離感だし違和感しかないよ。アキラ君は一体どんな教育をしてたの?」
「別にそんな特別な事はしてない…アイツは良くも悪くも親の影響を受けまくってたからな…そこに私の要素を少しずつ入れていっただけだ」
「要素ってどんな事してたのさ?」
「だから大した事はしてない、漫画やゲーム、親どもがアイツに禁止してる物を親共に気取られないよう少しずつ見せていったんだよ、子供は遊ぶのが好きな生き物だからな、あの時の琴音との連帯感は凄かったよ。」
琴音ちゃんの話をするアキラ君の顔は笑っていた。
アキラ君は琴音ちゃんの事を嫌っている。
それは日々の態度から間違いないがだからこそ琴音ちゃんを自分の色に変えて行くのが楽しかったのだろう
僕達の趣味を低俗と笑った前世の琴音ちゃんを自分色に塗り替えていくカタルシスにアキラ君は酔いしれていたのだろう。
姉妹としては歪なのだろうが妹の事を話すアキラ君はいつも辛そうだった。
だからだろうか?
こんな形だとしてもそれがとても尊い物に思えたんだ。
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