45話 前園明の夢
前園家の台所では前園母と前園明が並んでたっていた
何をしているか
台所でやることなど一つしか無い
そう料理である
「明、貴方、康太君の彼女なのでしょ?だったらお料理の一つでもふるまってるんでしょうね?」
「もちろんです、母様、康太さんには栄養価のあるお弁当を作ってます」
「そう?なら良かったわ、昔みたいに男みたいな言葉使いでだらしない態度でいたら彼に嫌われてしまうわよ?」
「問題ありませんよ母様」
「その辺にしてやれ、母さん、今日はようやく明が康太君を連れてきためでたい日だ、彼にはウチでゆっくり羽を伸ばしてもらおう」
「そうですね、腕によりをかけないと、明も手伝ってね」
「はい勿論です母様」
反吐がでる
康太はお前等なんかと会いたがってなんていない
勝手に勘違いするなよエセエリート共め
私はいつかこの前園家という小さな箱庭から完全な開放をなし世界に私と言う存在が如何に重要な存在であるかをしらしめてやる
その為に利用されてるとも知らずに馬鹿な奴等だ、
精々今を謳歌しているがいい
くくく、くふはははあーはははは!!
「明この皮剥きお願いね」
「はい母様…」
私に命令するなよ、母親だからとこの私を支配することなど何人たりとも出来るものでは………
ない……、の…
だ…
野菜の皮剥きをする
男の頃にはやらなかった作業の一つだ、
いまでは当たり前に出来る様になったが幼い頃は満足に出来ず母様を怒らせていた
料理の腕は母様に仕込まれた物だ
女なら料理は出来て当然、当たり前の物だと
そうやって教え込まされた
自分の手に技術が宿るのは好きだ、
無駄な事に時間を費やす事も嫌いではないが身になるならやる価値はある
それに康太の奴を見返してやるのも面白い
アイツは私が料理なんて出来ると思ってないからな
実際に初めて弁当を作ってやった時は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていて痛快だった。
ただ、今は康太の所にあのメスガキが行っている事だろう、大変腹立たしい、康太は私のだ
お前のようなメスガキがかまっていい存在じゃない
康太は私の友達で恋人なんだ
この料理を終わらせたらとっとと行ってメスガキから康太を助けてやらないと
「もう、明、弱火でと言ったでしょ」
「ごめんなさい母様…」
康太は大きな勘違いをしている
康太はこの家の家族達に自分は嫌われていると思っているがまず大前提として康太はこの家の住人に嫌われてはいない、むしろ好かれている
勘違いされたくないのは最初からそうだった訳ではない、前世、私が男だった頃はそれはもう凄い嫌われていた。
男と言うだけで母親は康太をゴミの様に扱かったし、メスガキ…じゃなくて妹の琴音は汚らわしい物を見る目で康太を見ていた
父親だけは康太個人に関しては無関心だった、
興味が無かったとも言う
そりゃそうだ、普段仕事で家にいないし息子の友達に興味のある親などいても困る
だから私の父親にかんしては康太の苦手意識も他の二人よりはマシだ。
そもそも何故あの二人の康太に対する好感度があんなに上がっているのか、確証は持てないがおそらくそれは多分私の努力の結果だろう
康太だけでなく元々は私も、いや『俺』もあの親子に嫌われていた。
母も妹も俺をゴミ、虫、そんな物に対する接し方だったように思う。
そしてそれは父も同様だった
最初からそうだったのではない
父は男の俺に高い可能性を求めていた
あの男は自分の優秀な遺伝子を持つ者にこそ自分の後を継ぐ資格があると考えるかなり古い考え方のインテリだ、もういっそ厨二病を患ってるんじゃないかと思う程だ
当然俺はそんな父の期待に答えるため幼い頃から勉学を強要された
まぁ結果的に俺は父の期待には見合う事無く失望され、父は俺に対しての興味関心を失った
あれ程父の期待に答えようと幼少期の遊びたいと言う気持ちを押し殺して努力に努めた俺の頑張りをアイツは無駄の一言で投げ捨てた
俺の心は壊れるに至った
そんな時に出会ったのが康太だ、
奴は俺を眩しい物を見る目で見てくる
俺の奇行を受け入れてくれた
それが嬉しかった
アイツに認められると堪らず誇らしい気持ちになれた
だからアイツのまえでは大言壮語を語る阿呆を演じていた。
いや、演じてた訳じゃない、アレは俺の素だ
アイツの前でだけは俺は素でいられた
だから許せなかった
あの康太の事を何も理解していない家族共が康太を卑下する事が何より許せなかった
一人暮らしを始め、大学で独り立ちを目指していた俺に訪れたのは唐突な死だった
しかしコレは今の俺『私』を手に入れる転機となった
はたして私と康太以外でこのような奇跡を体験した者がいるだろうか、いやいるはずがない
奇跡の安売りなど神がいかに愚かとてやすやすしないだろう
兎にも角にも時間逆行と性別転換なる2つの奇跡は私を元来あるべき未来へと誘ってくれた
だから得たこの2度目の人生を花々しい物にするため私
は身の振り方を徹底した。
幸い前世で死ぬ思いで勉学に励んだお陰でろくに勉強せずとも小中そして高と私の学力は常にトップクラス
誰もが私を模範とする優等生となれたしまた模範とする美少女像も最良のモデルがいたと思ったのだが舞野瑠衣の見た目は模倣するにはこの体では敷居が高く結果康太の理想女子を徹底的に突き止める事で事なきを得た
康太の理想は正にこの私の為にあるような設定で私の康太に対する評価がぐんと上がったのは言うまでもない
両親にも康太の心象を良くする為に小学校から接触し幼馴染として信頼を育んでいった
そのかいあってアイツ等の康太への評価は高い
まぁ肝心の康太のアイツ等への苦手意識は全く改善されていない、まぁそんなの改善する必要はないんだがな
「明、料理の配膳をお願いね、」
「わかりました」
兎にも角にも私は最良で最高の友人であり恋人の康太と結婚してこんな糞の掃き溜めのような所とは決別して幸せな人生を謳歌するのだ!
それが私の将来の夢だ
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