38話 決着
「クソクソクソクソ!!どうして俺が!!?」
ある男子生徒は悪態を付いていた、いや、現実逃避と言った方が的確か
自分にお古の及第点女を拾わせ自分はのうのうと高嶺の花を掻っ攫いやがった陽キャモドキのクズ
だからこの俺が高嶺の花が本来あるべき所に収めようと声をかければつけ上がり挙げ句この俺を罠に嵌めやがった!!
ある男子生徒の主張はその様な物だ、自分が悪いだとか落ち度は自分にあるだとかそんな考えはない
男の怒りは自分から高嶺の花を奪い、及第点女を押し付けたクズ、笹木純一と自分を罠に嵌めたクソ女舞野瑠衣に向かっていた
しかし彼はその内にくすぶる怒りを発散する方法を持ち合わせていなかった
そもそもにおいて、彼が所属する彼の城、テニス部内で留まっていた彼の悪評は外に流れ、舞野瑠衣に手を出した事と合わさって瞬く間に広がり常に女を侍らせていた頃が夢のように今は誰も集まってこない、
またヘマをやらかした彼の味方をしていた男仲間からも見放され彼の味方をする酔狂者は今や何処にもいなかった
それどころか学校を歩けば至る所から噂話をする女子達の声が聞こえる
「あ!ね!ねぇ聞いた?2組の橘さん、アイツにやられてたんだって」
「聞いた聞いた、最悪だよね、マジ女の敵」
「顔が半端に良い男はクズしかいないよね」
「その点、前園さんと只野君の組合せは推せるわ!」
「わかるわかる!なんか応援したくなるってゆーか」
だとか、
「アイツだよアイツ、下級生の教室まで押し掛けてナンパしてたんだって」
「アイツたしか彼女いたよね?たしか…月里さん?」
「そっ!それ!マジクズ過ぎ!」
「しかも瑠衣ちゃん、そのせいで顔に傷出来たらしいよ?」
「まじ?最悪じゃん!女に手を出すとかマジありえない!死ねば良いのに」
といった陰口がそこら辺から聞こえてくる、
その声に文句でも言おうと近づけばまるで虫を見るような目で連中は散っていく
蜘蛛の子を散らすなんて言うがそれならお前等の方が虫だろうが!俺をそんな目で見るな及第点女共が!!
腹立たしい、苛立たしい、
彼は一人の少女の事を頭に思い浮かべる
別に恋しくて思い浮かべた訳じゃない
ただその少女をいたぶってこの溜飲を下げよう、
そう思っただけ
だから男はその少女、
月里冬美を探す事にした
月里冬美 視点
私は騙されていたんだ、それが確信に変わる出来事が起こったらしい
あっくん先輩…いやあの男がとうとう私以外の女に暴力的な意味で手を上げた
しかもそれはこの学校でもてはやされる二人の美少女の片割れ、舞野瑠衣らしい
舞野瑠衣は私の純君に色目を使う気色悪い女だ、
別にどうなろうと知った事じゃない
でもコレではっきりした
あの男が私に手を出すのは一種の愛情表現の可能性を考えていたけどそんなのは都合の良い思い込みだ
あの男は多くの女達を部内で囲ってた、元々私含めてあの二人以外への興味は無かった、所詮私達は代替品でしかなくあの男にとっていつでも抱ける玩具くらいの認識でしかなかったのだろう、
純君と私の中を引き裂いて散々利用して、馬鹿な男だ、
地獄に落ちれば良い
自分の事を棚に上げ月里冬美は自分にだけ都合の良い事を考える、自分はコレまでつらい目に遭ってきたのだ
これからは幸せにならないとオカシイと
そんな彼女の前にある四人組が見える
視線を外そうにも目が強制的にそこに吸い寄せられる
ブラックホールか何かかあいつ等は!
舞野瑠衣と前園明とその彼氏達だ、
舞野瑠衣のよこには笹木純一、
彼は私の彼氏、私の恋人だ!
お前の所有物じゃない!返せ返せ!!
そう一方的に頭の中で熱くなった思考のまま彼女は行動する
その行動が舞野瑠衣にとって都合がよい行為とは考えないで
「私の純君から離れろ!この性悪女!」
「え?」
「うわぁ~!」
「?」
「あら?」
四人それぞれが反応し視線を声の主に集める
そこにいるのは勿論月里冬美その人だ
「誰かと思えば私の彼氏の元カノさんじゃない?どしたの?」
「はあ!?巫山戯ないで!私の彼氏から離れろって言ってんのよ!」
「巫山戯てるのは貴方でしょ?貴方がフッたから純一君はフリーでしょ?だから私が恋人になったのよ?何かおかしいかな?」
「純君は私の彼氏なの!純君も純君よ!私がいるのにそんな女と浮気して!この浮気者浮気者ーー!!」
まだ生徒が大勢いる中庭で大声を張り上げる冬美
他の生徒も何だ何だとワラワラ集まってくる
四人の中にいた只野康太はこの状態があまり良く無いモノに思え隣りにいた明に話かける
「ちょっ、コレヤバくないか?」
「多分大丈夫でしょう、」
「はあ?いやだってこれ、」
「この状況含めて多分瑠衣ちゃんの想定通りだとおもいますよ?」
「へ?思い通り…?」
「ええ、やっぱり彼女からは学ぶ事が多いですね」
ニッコリと聖母の如き微笑を浮かべる明に周囲の生徒達はうっとりとした表情になる
そんな時、瑠衣の声が中庭に反響する。
決して大きな声ではない、しかし彼女のよく通る声はその場にいた全員の耳に届く、全員が認知する結果となったのだ。
康太は再び視線を問題の3人に戻す
「へぇ~つまり、貴方、付き合ってた筈の笹木純一君を一方的に捨ててまで手に入れた今の彼氏に不満があるから昔捨てた元彼に鞍替えしょうとしてるわけだ!頭抜けた根性してるね!いやぁー凄い凄い!」
「うっ、うるさい!あんたが純君をそそのかしたんでしょ!適当な事言うな!この泥棒猫!」
「わわ!泥棒猫、始めて言われたよそんなの!純一君私猫だってかわいい?」
「はいはい、かわいいかわいい、」
「ふふ、凄い適当…」
「わっ、私を無視するな!このビッチ女!あっあんたが!私からかれ…」
「あーー、はいはい!そんなに言うなら録音データと証拠を出せばいいの?あるよ?証拠?ね?純一君がスマホで取ってたやつ、ね?」
「え?あっ、そんな…」
「ねぇ?どうするー?証拠出そうかー?ここで生公開しょうかー?うーーん?」
「純君私…貴方の事…」
「俺の今の彼女はお前じゃない……瑠衣だ、お前こそ一方的に裏切っといてプライドとか無いのか?」
「うぐっ、ウグわあァァァあぁ!!!?」
そのまま彼女は走り去って行った
周囲の生徒達はこの様子を一部始終見ていた 逃げ出した以上もう後には戻らない、彼女が純一という彼氏がいながら浮気をして、いらなくなったから捨てて浮気相手を選んだという話は簡単に学校の中で拡散されるだろう
「証拠なんてないじゃん、よくあんなデマカセ言えたな?」
「あの手のタイプは怖くなって自分で対処出来なくなったらなりふり構わず逃げ出すからね、こうなるとわかってたもん」
「女ってこえー、」
「ふふ、純一君も気をつけてね?」
「何を気をつけろっていうんだよ、たく……」
明はこの出来事の一部始終を見て一人思う
やはり恋愛はよくわからない、
友達のままが一番落ち着く
康太とは恋人の関係にあるが、下手に気負わず
今のままがいいな、と一人そう思った
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