36話 月里冬美
最近先輩の態度が冷たい
少し前まではあんなに私を求めてくれたのに今は全然求めてくれない、
いや、たまに求めてくれる
でもそれは私の求めてるような愛し合う二人のようなシチュエーションじゃない、
まるで苛立ちを発散するような、憤慨や怒りに任せた行為、性欲を発散するための道具に行う行為のような、そんな利己的な行為
気持ちいいとは真逆の、痛みが伴う歪な行為
それはそうだ、
あんな作業的な、ただ欲を発散するだけの行為に快楽を求める余裕なんて無い、
最近は求められても全く嬉しくない、
それはそうだ、
快楽の伴わない痛み、苦痛だけの行為などただの苦行でしか無い、だから先輩に言った、
言ってやった
もっと優しくして下さいと、
しかし帰ってきたのは頬の痛みだった
「もっとしめろよ!ブタ女が!」
おしりを何度も叩かれる、
痛い痛い痛い、こんなの私が求めていたのと違う、
違う違う違う違う違う
こんなの違う違う違う
痛い痛い痛い
それから先輩の家から強引に追い出された
一人で家にトボトボと歩いて帰る
体が痛い、
足が痛い
おしりが痛い
中が痛い
ジンジンして痛い
痛くて歩き辛い
独りでに涙が出てくる、
なんでこんな事になってるんだ、
私はついに念願の先輩の彼女になった
なれた!その筈なのに…幸せなはずなのに…
中学の頃の私は根暗で引っ込み思案で陰鬱な陰キャ女だった、モジョというヤツだ、
私はそんな自分が死ぬ程嫌だった、
変えたいと思っていた、でもどうせ無理だと諦めていた
そんな時だ、先輩がテニスをやっているのを見たのは
キラキラと飛び散る汗が綺麗なモノに見えた
すらっと長い長身に爽やかな笑顔、沢山の女子達がきゃきゃと先輩を取り巻いて騒いでいた
憧れた
初恋だった
でも届かない、私の見てくれじゃ届きようがない、
でもどうしたらいいかわからない
諦めれば良かったのかもしれない、
でも諦めたくなかった、
初恋の熱は私を簡単に化け物へと塗り替えた
先輩に愛される為なら手段を問わない化け物に、
陽キャと陰キャの間、丁度真ん中でこそこそしてる奴を見つけた
笹木純一、そいつはそんな名前だった。
基本ベースは陰キャ寄りの癖に小癪にも陽キャに取り入って媚を売る
そのため見た目だけなら一見陽キャ側の人間に見える
なんともセコい人間だと思った、でも同時に使えるとも思った、コイツで男慣れして本命の先輩に近づこう
幸い先輩が行った高校も知ってるし私なら問題ないレベルだ、頑張ろう、素直にそう思ったのだ
そうして私は好きでも無い男に始めての告白をした、
なんでこんな奴にと思ったが先輩に告白する時に失敗なんて出来ない
だから頑張った
馬鹿な男、笹木は嬉しそうにしていた、ホントに馬鹿な男だ
先輩がいない中学での一年間は長かった、だから笹木が先輩だと思いこんでこの生活を続けた
幸い笹木との恋人生活は私が想定していた先輩とおくる恋人生活そのモノだった、だから意外にもこの一年は私の中では割と充実したものとなった
そして高校生活の始まり、私は念願の先輩がいるテニス部に所属した、笹木は私が何を考えてるかも知らないで応援するといっていた、お前の応援なんて端から必要としてないのに本当哀れ。
そうして私は先輩に猛烈にアピールした、先輩はははっと爽やかに笑っていたが先輩の周りをうろちょろと蛾の様に集っている女達と自分を見て私は我に帰った、
自分の見た目が余りに見窄らしい事、
こんなままじゃ先輩に相手してもらえないのは仕方ない事だ
だから私は自分を磨くために努力した、幸いテニス部の部員にはお節介で美容やダイエット方法などを教えてくれる人達が多かった、
全く笹木は使えない奴だ、
一年も一緒にいてやったのにこういう事にはまるで役にたちはしないのだから使えない。
こうして私はダイエットにも成功したし、周りの先輩達からもかわいいと沢山褒められた、
私が頑張ってる間に笹木はデートやら一緒に帰りたいやらわがままばかりでうんざりさせられた、
同年代の男子と言うのは何故こうも馬鹿に見えてしまうものだろうか…手を握りたいとかお前はサルか!
と憤慨したくもなるだろう
その点先輩は大人だ、人が出来てる…。
そう思っていた…
いや、そう自分に思い込ませていた
じゃないと耐えられなかった
一年も前から頑張って来た、
自分を磨くための努力もやってきた
しかし先輩は私を見てくれない
この学校には頭がおかしくなりそうなレベルの女が二人もいる、大抵の男は皆その女に流れ行く、
先輩も例外じゃない、
先輩の悪い噂はテニス部に入った時点で耳にした、
付き合った女はみんな前園明と舞野瑠衣の代替品
性欲処理に使われて終わり、
信じない、そんな話、私は信じない!!
その結果がこれだ、
笹木を利用して裏切って捨てた先に待ってたのは夢にまでみた幸せな先輩との恋人生活なんかでは無く……
性欲処理の道具として人形のように酷使される日々だった、
最近先輩としている時によく思い出す顔、
笹木………、…純君…、
純君との一年は楽しかった、
彼は一度も私の事を悪く言わなかった…
先輩の様に豚女だとかデブだとか海苔頭とか言って来なかった、
いつも安心出来る笑顔を向けて私にやすらぎをくれた、
怖いと思っていたカースト上位の女子達とも間に入ってくれて、そのお陰で普通に話す事が出来た…
今にして思う、純君が理想の彼氏だったんだ
それを私は自分で捨てた
謝らないと、沢山謝って許してもらえたら
また二人で沢山デートに行こう
自分の事で頭がいっぱいだった私にはこの先に起こる事など想像のしようがなかった、
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