25話 前園明VS舞野瑠衣
明は息を軽く吸ってからそれを吐くと意を決して
言い放った
「私自身は貴方を康太の恋人にしたくない、そう思いました」
「…………………、それはどうして……?」
美人の怒った顔は怖いと何処かの誰かが言ってたけども、あれは本当だったんだなと痛感する
瑠衣は明を恐ろしい形相で睨んでいる
正直めちゃくちゃ怖いがここで引く訳にはいかない
たとえ彼女が今この瞬間から友達では無くなってしまったとしても
「私が貴方を康太の恋人にしたくない理由、
それは貴方が康太の事を何も考えて無いからですよ」
「はあ?何言ってるの?私は康太君の事沢山考えてる!今だって康太君の事で頭の中いっぱいなの!なんでアキちゃんに私の気持ち否定されなくちゃならないの!」
「別に私は貴方の気持ちまで否定するつもりはない、今舞野さんの話を聞いて康太の事を蔑ろにしてるってそう思ったんです」
「なんでそうなるのよ!私は康太君を利用なんかしない!都合よく扱ったりしない!貴方とは違う!」
「そうですね、私は康太を利用して平穏を手にしようとした卑怯者です、でもそれは康太も同意してくれた、康太は私に協力してくれた」
「それはアンタが色仕掛とかして無理矢理納得させたんでしょ!!」
「そんな事してません、話し合って二人で決めて……」
「何が話し合ってよ!じゃどうして康太君あんなに辛そうにしてたの?全部!アンタが康太君を利用するから康太君は傷ついたんでしょ!?」
返す言葉も無い
彼女の言う事は一々ご尤もだ、康太に頼んだ偽彼氏、これのせいで康太は男子生徒から逆恨みされイジメの一歩手前まで追い込まれていた
私は前世で同じ様な体験をしたから分かる
あれはツライ、全てが敵に思えてくる程に
だからこそ次の人生では誰からも舐められない、攻撃されない完璧さを私は求めた、その結果私は唯一無二の親友を蔑ろにする結果となった
康太が望むのは当たり前の平穏だ。
彼は特別を望まない、
只野という名字を彼は『ただの』と言って自虐する癖がある、しかしあれは自罰的な意味で使っているのではない、ただのユーモア、所謂自虐ネタでしかないのだ。
聞いてるこっちは全く笑えないが
しかし康太は特別に憧れている側面を併せ持っている
人に褒められたい
人に必要とされたい
人に評価されたい
でなければ奇人行為を繰り返していた前世が男だった明に憧れなんていだかないから。
「確かに私は康太を利用しました、彼に甘えてその結果彼を傷付けた、それは事実です。
でもソレが康太を貴方に託していい理由にはなり得ません」
「なんでよ!私ならアンタより康太君を大事にしてあげる!大切にしてあげれるのに!!アンタみたいに利用して傷付けたりしないのに!」
「舞野さん、貴方は康太ってどんな人間か、知ってますか?」
「はぁ?当たり前でしょ!?
こっ康太君は強い男の子だよ、自分の意志をちゃんと持ってるし、いざと言う時頼りになる!それに人をちゃんと見てくれるし、浮気とかもしなさそうだし、とっても誠実で優しい人だよ!」
「ふふ、」
「なっ!何笑ってんのよ!!」
「舞野さん、私は恋愛というのが良くわかりません。
誰かを好きだとか愛してるだとかそういうのがピンとこないんですよ、だから康太に対して自分が恋愛感情を持ってるのかもわからない、でも一つだけハッキリ言える事がある、私はね、康太の友です、親友です。
アイツの事は私が一番知ってる、理解してる、そんな私から言わせてもらえば貴方は康太の事を一ミリ程も理解していない、理解したつもりになってるだけ、独りよがりな願望、理想を康太に押し付けてるだけ、私にはそう見えます。」
「なっ!何を!!」
「康太が強い?強いなら何故陽キャ男子に絡まれた程度で引きこもりそうになるんですか?
康太は基本的に弱いですよ、強く見えるのは自分を大きく見せたいだけ、意地を張ってるだけなんですよ、
基本的に弱い自分を肯定しているけどだからといってそれを良しとは思ってない、改善したいとは思ってる、でも自分なんかが、『ただの』高校生である自分なんかがそんなの出来る訳無いとそう考えてるんですよ。」
「そっ、そんな事くらい解ってる!」
「わかってないですよ、貴方は康太に理想を追い求めてる、自分を理解してくれる王子様だってね
自分を特別扱いしない、贔屓しない、エロい目で見てこない、そんな男子としての理想を康太に求めてる
勿論康太はそんな超人じゃない、仮に康太が貴方の事を好きになれば貴方は康太への興味を失うんじゃないですか?それだけ好きだった康太っていう異性が他の男子と同じ有り触れた存在に格下げされる、そうなった時傷つくのは康太なんですよ。」
「わっ、私は…康太…君が…、好きで…」
「本当に康太が好きならもう少し様子を見てはどうですか?康太の気持ち、そして貴方自身の気持ち、それに答えが出るなら私も力添えしますよ」
瑠衣は言い返せなかった
図星だったからだ、
確かに瑠衣は康太に理想を被せていただけで康太という一人の人間にそこまで興味を持っていなかった
もし康太が自分の事を好きになって他の男子達と同じ様に迫って来たらと考えた時、瑠衣は明確に康太に対する興味や関心が無くなると自覚してしまった
「そうだね、少し冷静になるよ…ごめんねアキちゃん」
「いえ、私も言い過ぎました、これからも舞野さんとは仲良くしていたいです、」
「それは私も同じだよ、この学校生活でアキちゃんがいなくなったらそれこそ私が引きこもりになるよ」
「舞野さんが引篭ったら私毎日家に押し掛けますね!」
「前から薄々感じてたけどアキちゃんって割りかし性格汚いよね?」
「ふふ、お互い様です!」
「ふふ、そりゃそーか!あはは」
「ふふふ、あはは、」
少女達は学校の屋上で笑い合う
それまで一人の陰キャ男子の事で言い合っていたのが嘘のように
その当事者たる只野康太が知る事の無い一幕だった
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