24話 前園明と舞野瑠衣
「ごめんね?皆、アキちゃん借りるね?」
陽キャ男子達の勢いに押され少し嫌気がさして来ていたところに救いの手となる声が被せられた
声の主は舞野瑠衣、
前園明と対を成すもう一人の高嶺の花である
「えっ、と〜、ごめんね?でも前園ちゃん俺等と今遊ぶ約束してるからさ?ね?」
「そうそう、あっ!そだ!なんならルイちゃんも一緒にどう?きっと楽しいよ?」
陽キャ男子達は懲りずに前園明の誘いだけに留まらず今度は舞野瑠衣までも勧誘する、
呆れ果てる程のバイタリティの高さだ
しかし
「ごめんね〜そういう訳にもいかないんだ?女子だけでやりたい事があるから、男子は立ち入り禁止なの!」
「え〜、マジかよ俺かなちー、仲間に入れてよ〜」
「そそ!つれないじゃ〜ん」
「う〜ん、ホント!ごめんね!!ほらアキちゃん行こ」
舞野瑠衣は強引に明の手を握ると彼女を立ち上がらせ引っ張って教室から走り去っていった
「マジかよ…」
「ははフラれてやんの!」
「いやいやお前もじゃん」
二人して教室から飛び出していったのを陽キャ男子達はただ呆然と見ている事しか出来なかった
明と瑠衣は教室を飛出した後学校の屋上へとやって来ていた
屋上は普段施錠されていて入れないが明はこの屋上のスペアキーを個人的に所持しており、出入りする事が出来る、
瑠衣は明にゆっくりと話したい事がある為、この場所を指定、明も瑠衣に聞きたい事があったのでコレに応じる事となった
「舞野さんありがとうございます、正直どう断ったらいいか迷っていました、」
「いいよ〜、私も少ししつこいなぁーって思ってたし、まってたらアキちゃんとお話できないしね〜」
「それで…あらたまって私と話ってなんですか?」
「うん、康太君のこと、」
「康太の……、」
「そ、私さ、康太君に告白したんだ」
「そうですか、」
「あんまり驚かないんだね、やっぱり康太君から聞いてるの?」
「……、はい、」
「はは、康太君はアキちゃんになら何でも話すんだね、」
「それは違います、私が無理矢理康太から聞き出したんです、康太は話す気は無かったと思いますし、」
「でも最終的にはアキちゃんに話したんだよね、
妬けちゃうな、」
「私も舞野さんに聞きたかったんです、どうして康太に告白を?嘘告白とかなら私は貴方を軽蔑します」
「あはは、安心して?、嘘じゃない、本気だよ、てゆーか、酷いなぁ、アキちゃんのが康太君にもっと残酷な事してるじゃん」
「残酷な事?私が?」
「アキちゃんは男避けに康太君と恋人のフリをしてるでしょ?」
「っな!?それは違っ…」
「あはは…いーよぃ〜よ、別に責めてる訳じゃないの、ただ、康太君の事を好きじゃないんだったらさ、私に康太君をちょうだい?」
「は?」
「アキちゃんは康太君にとても残酷なお願いをしてるんだよ?アキちゃんと偽の恋人でいる限り彼は高校生活で本当の恋人を作る事も出来ない、それってさ、とっても残酷な事だと思わない?」
「………、一つだけ聞いてもいいですか?」
「何〜?」
「舞野さんは何故康太を選んだんです?貴方なら康太じゃなくても他に色々候補がいるじゃないですか!?」
「初めてだったの、」
「初めて……え、?嘘?貴方達……もうやって…」
「っ!?ちょ、まっ?違うよ違う!もう、アキちゃん変な誤解してない?アキちゃんもお年頃だね?」
「え?あっ!……あははは…」
「私が言う初めてってのは彼が初めて私って言う人間を本当の意味で理解を示してくれた人って意味だよ、」
「本当の私?」
「そ!誰にでも内面に隠し持ってる本当の自分ってヤツがあるじゃん、康太君はソレに気づいてくれた初めての男の子なんだ!」
恋する乙女と言う存在をそのまま具現化した様に頬を赤らめ、康太への思いを言葉にする瑠衣
その表情から16年間女として生きてきた明は直感で彼女の恋が本物だと理解した
「……舞野さんにも裏表があると言う事ですか?」
「そりゃそうだよ、そうだ、アキちゃんは私の事、かわいいと思う?」
「え?そりゃかわいいと思いますよ」
「フフ、私はね、かわいい、そういわれる事が当たり前だと思ってる、小さな子供の頃から今までずっとかわいいって言われて来たからね、ソレが自然で当然、でもそんなのは私にとって別に嬉しい事でも何でも無いの」
「……、」
「アキちゃんならわかると思うけど、他人から当たり前の事をいわれても心は動かない、コイツ何当たり前の事言ってるんだとしか思はない、
それどころかかわいいって……たったそれだけで私は今まで嫌な思いをいっぱいされて来た…」
「結局何が言いたいの?」
「ふふ、初めてだったんだ、康太君が初めてだったの、
彼は私がかわいいか聞いたら見た目はなって答えたの、ふふ、ふふふ、それって中身がブサイクって言ってるのと同じだよね?ふふ、ふふふふ」
康太らしいな、アイツならそう答えるだろうなと
明は男友達の顔を思い浮かべる
「普通そんな事言われたらキレると思いますが…」
「ううん、そんな事ないよ〜ソレに私が康太君を好きになったのはそれだけじゃ勿論ないよ、他にも沢山あるの!聞いて聞いて!」
瑠衣は嬉々とした面持ちだ康太の事を語り始める
何故好きになったか、
その経緯からなにから何まで
「彼ね、見かけによらず芯の強いところがあるの、アキちゃんの偽恋人の件で不良みたいな生徒に絡まれた時とかも決して逃げ腰になったり媚びたりしなかった、
私ね調子に乗ってるって言われるのが一番嫌いなんだけどね、その不良達からも康太君、調子に乗ってるって言われていたの、でも彼ったら、なんて言ったと思う?
調子に乗るってなんだよって聞き返してたの!
もうね、発想に無かったよ!
凄いなって素直に思ったの、
それにね!他にもね、康太君、一切私に興味がないの!
私にたいして何の情欲も感じてないの!
そんな事あり得る?今まで私の周りにいた男達は多かれ少なかれ誰だって私に性的な視線を向けて来ていた
康太君はソレがないの
凄いとおもわない?」
「おっおぉう……、」
前園流陽キャ撃退法を客観的に見せられて思わずのけぞってしまう、
明は自分がこの方法で追っ払っていた男子達はこんな気持ちだったのかと少し彼等の気持ちに寄り添う事ができた気がしていた、
それ程の圧が彼女にはあった、
聞いた話から動機はどうあれ康太に対する思いは本物なんだろう、
彼女は本気で康太と付き合いたがっている、
だが彼女は大事な前提を飛ばしている、
その前提を無視して明とサシで話し合いの席を設けた時点で明は彼女にノーともイエスとも答えるつもりは無かった
「舞野さんの気持ちはわかりました、動機はどうあれ、貴方が康太を好きだと言う気持ちも理解出来ました」
「なら私を康太君の恋人にしてくれる?」
「それは私から決める事は出来ませんよ、」
「は?なんでよ!?」
「なんでって、わからないのですか?」
「わかんないよ!何でか教えてよ!」
「簡単な事です、ここに康太がいないからです、康太の意志抜きで決める話じゃない、それに私個人の気持ちにも整理が付きました」
「整理ってなによ…、」
明は息を軽く吸ってからそれを吐くと意を決して
言い放った
「私自身は貴方を康太の恋人にしたくない、そう思いました」
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