22話 舞野瑠衣 その2
月曜日、学校が再び始まる日だ
一週間、一ヶ月、一年
私達学生はこうやって何度も何度も月曜日を迎える
月曜日になれば学校に行かなければならない
私は学校が嫌いだ
友達や先生、多くの人間に媚びて一日を送らなければならない、ソレが嫌いだ
嫌で嫌で仕方ない
なら辞めればいいじゃないと思うかも知れない
でもそんなのは無理だ
媚びて、笑って、そうやって今の私
舞野瑠衣が構成されているのだ
私はかわいい
愛らしい見た目に愛らしい声
保護欲をくすぶる見た目から人を、特に男子を引き付ける
そのせいで私はツライ日々を送ってきた、
小学校、中学校、どれも私にとっては忘れ去りたい地獄の日々だった
だが高校は違う、高校生活が楽しいのかと聞かれれば勿論ノーと答える、さっきもいった通り皆に好かれる模範的な良い事を演じなければならない
私は容姿だけはいいから模範的な良い子をしているだけで皆から好かれる
しかしそれは決して私にとって良い事等ではない
なら高校生活の何が今までと違うのか?
そんなの決まってる
只野康太君、彼の存在だ
これまで私は彼の事をただのモブとしてしか見ていなかった、名前を覚えていたのが奇跡的だったと思う
名前が示す通り『ただの』男子生徒だ
何処にでもいる面白みのない普通の男の子。
模範的な良い子としてのキャラ作りの一貫としてクラスメイト全ての名前を覚えている事を目標に定めていた方がポイントが高いから
もう一人の高嶺の花、前園明の幼馴染だったから。
理由はなんでもいい、大事なのは私が彼の名前を覚えていた、コレに尽きるのだ。
彼は今まで見てきた男子の中でも見たことの無いタイプの男の子だ
男子は程度の違いはあれど殆どが私に色目を使うのが当たり前だ、無関心を装いながらも頭の片隅にはもしも私と付き合えたなら…と妄想を常に膨らましている
彼もそのタイプかと思ったが違う、本当に私に興味が無いのだ
普通自己肯定感が強い女なら激怒するのかも知れない
が私はそれが嬉しかった。
小学校の頃から異性にモテる事が当たり前な私にとって異性から塩対応されるのがたまらない快感となった
無視されるたび、煩わしそうにされるたび、もっと見て欲しいという欲求が日増しに強くなっていった
「おはよう!康太君、それとアキちゃんも!」
「え?康太が先…?あっ、おはようございます…」
「……、おはよう」
そっけない態度も私を刺激するカンフル剤にしかならない、私は浮足立つ感情に一切の抑制をかけず只野君の隣に並んで立つ
彼は私をチラっとだけ見ると直ぐにアキちゃんの方に向き直った
この二人は表向きには恋人として付き合っている
この二人の組み合わせには色々な意見がある
釣り合ってない、美少女と陰キャオタク、遊ばれてる説と碌なモノではない物から凸凹カップル、あの二人は推せる応援してあげたい二人等まぁ色々だ
しかし私はこの二人の仲がマヤカシだと知っている
アキちゃんは男共から頻繁に来る告白やアプローチに辟易している、そのための男避けに彼を利用したのだ
その事にとやかく言うつもりはない
私もアキちゃんを円滑な学校生活のために利用している、そんな私がアキちゃんに康太君を自由にさせてあげてなんて言う資格はない。
ただ、二人のお付き合いが嘘なら私が本当の康太君の彼女になってもいいじゃんと、そう思ってしまう。
彼だけが、彼だけが私の事を見てくれた
本当の私を見つけてくれたのだ
初めて本当に他人を好きになった
諦めたくは……ない
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