20話 分裂する前園親衛隊
明君の陽キャ撃墜はそれからも留まる事を知らない勢いで進んでいた。
僕に絡んできた奴を見かけてはその陽キャに絡みに来て相手を辟易させておっぱらっていた。
正直いってこの方法は目からウロコだった
最大限惚気けて相手の気力を削ぐ
穏健で平和的、争いが起こる要素ゼロの素晴らしいやり方だと思う
僕が恥ずかしい事を除けば。
また周りの連中にはアキラ君、ではなく前園さんの新たな一面が見えたらしく、前園親衛隊の皆さんのなかに派閥が生まれ、一枚岩ではなくなったらしい。
何故僕がそんな事を知っているかと言うと
「アキちゃんの事を好きな人達にも色々な派閥があってね、大きく別けて3つ、1番大きいのがアキちゃんを自分の彼女にしたいと考えてる人達、2番めがアキちゃんをテレビで見る芸能人とかアイドルみたいに応援したいと思ってる人達、3番目がアキちゃんをただ見守りたい、アキちゃんを親みたいな視点でみてる人達だよ、いや〜達観してるよね、同年代の女子を親目線とかさ!」
と僕に教えてくれてるのが舞野さんだ
彼女は昼休みの時間、前園さんと一緒に屋上に行こうとする僕等に付いて来ていた。
先程同様、前園さんは俺との惚気け話をもって舞野さんを追っ払おうとしたが舞野さんはニコニコ笑顔で一向に立ち去ろうとせずこちらが諦めた次第だ。
その様子はさしずめ私がそんな事で引くわけないよ?
舐めないでくれる?と、そう言っているようだった。
「はぁ〜、そんな派閥があったのですか…知らなかったです……」
「うん、自分からは見えないかも知れないけど、外からは見えるね、そういう派閥間の価値観の違いが」
「康太は知ってたの?」
「あぁ、まぁそういう感じにになってるのは知ってたよ」
「私…全然知りませんでした、皆さん私と付き合いたい、仲良くなりたい、それだけだと思ってました…」
「うん、でね、その派閥が今日、明確に分裂したんだよね!」
「分裂?」
「うん、前園明の彼氏を潰したいってのが昨日までの大まかな筆頭勢力だったんだけどね、今日のアキちゃんの行動で、アキちゃんの彼氏になると束縛されて自由がなくなる、女遊びが出来なくなる、こんな変な女だと思って無かったって感じに思う人が増えてきてるの」
「変な女って…酷いです!」
「あわわ、私が言ってるんじゃないからね、」
「あっ、大丈夫です、舞野さんがそんな事言う訳ありませんものね」
「……、それでね、アキちゃんを彼女にしたいと考えてる人達がかなり減ったって噂だよ?まぁ半分くらいはまだ残ってると思うけど、でね、ここからが本題なんだけどね!」
「本題って…まだなんかあるの?」
「そうだよ康太君、アキちゃんを見守りたいって派閥からアキちゃん✕康太君を推すっていう勢力が派生したみたいだね」
「はぁ!?」
「なんてゆーか、凄い発想だよね、私もここまで来るとよくわかんないよ」
「これって…」
「カプ厨ですね…」
カプ厨、。
アニメや漫画、ラノベに置いて登場キャラの組み合わせをみて楽しむ人達の俗称だ、
主に主人公とヒロインのような物語の都合上でカップリング成立が確約されているキャラ以外で、物語の進行上で友達や親友止まりで恋愛に発展しない組み合せを読者が脳内で勝手にカップルとして成立させる事を指す。
因みにオタク文化とは業が深いモノでこの脳内カップル成立において、性別の垣根は存在しない
つまり人によっては男同士、女同士のカップリングも普通にあるのがオタク文化の業の深さを物語っている。
つまり舞園親衛隊のなかには僕と舞園さんの組み合せを肯定する勢力がいると言う事か
信じられない話だ
「その人達はどうしてそんな結論に至ったんだろう?
僕と前園さんが釣り合ってないって思ってるならそもそも組み合せとして不適切だ、カップリングが成立しないと思うんだけど」
「なんでも康太君の事を熱弁するアキちゃんに尊み?よくわかんないけどそういうのを感じたらしくてね、うん、ホントによくわかんないんだけど推せるらしいよ?」
「世の中には色んな人がいるもんだね」
二次元でもドラマでもない、現実に実在する普通のカップルだとこんな訳のわからない事は本来起こりえない
カプ厨が出てくるのにはそのカップルにそれだけの魅力が無いといけない
とどのつまりは前園さんの魅力、アイドルあるいはカリスマ性とかなのかもしれない
改めておもう
前園さんの求心力のヤバさを
「まぁあとはアキちゃんと康太君っていう本来ならありえない凸凹の組み合わせに魅力を感じてるみたいだよ?よくわからないけど美女と野獣みたいな?」
「野獣なんて、そんないいもんじゃないよ、僕は…」
「私は康太君のその自己肯定感の無さにビックリするよ、まぁそこが良いんだけど……」
「よくないですよ!康太にはもっと自分に自信をもってもらわないと」
「それは違うよ?アキちゃん…康太君の魅力は人の内面を見れる洞察力だよ、馬鹿みたいに前向きになってその良さが無くなるのは良くないよ…私は康太君には今のままでいてほしいな?」
「そんなわけないですよ、後ろ向きが良いだなんて!
確かに康太は時折鋭い事を、それこそ私では思いもつかない天啓とも言うべき閃きをもって私を導いてくれるけど、それでも後ろ向きでずっといてほしいだなんて思わないですよ、私は?」
「わかってないなぁアキちゃんは…はぁ…
アキちゃんが言う康太君のその天啓って、後ろ向きな思考から来てるんだと私は思うの?
そもそもさ、前向きな康太君って気持ち悪いじゃん?
いぇーい前園さん今日もオッパイデカいね〜とか言ってくる康太君とか私は嫌だよ?」
「いや、僕そんな事言わないよ?」
「……兎に角、後ろ向きがいいっていうのは無いと思います、後ろ向きな考えでいい事なんて一つもない、負は負しか生まない、マイナスの連鎖は際限が無いんですよ、そうして自分の殻に閉じこもって生み出せる物は不幸だけです」
「…………、まっ、私も自己肯定感薄いままなのは問題だとは思うよ、あっ!アキちゃんの作った卵焼きキレイな焼き加減だね!相変わらず美味しそー」
「良かったら食べますか?」
「いいの?じゃ私のブロッコリーと交換だ!」
「もう!好き嫌いは駄目ですよ!」
「えー!」
二人の美少女が和気あいあいと互いの弁当を突きあう微笑ましい光景が広がっている
アキラ君はああ言ってるが彼女も元は陰の世界に生きた人間だ。
軽い気持ちで陽キャみたいな事を言ってるのではない
確たる実体験のもと彼女は語っている
それを知ってるからこそ重いなぁーと心の中で愚痴るが声には出さない。
女性の前で゛重い゛が禁句ワードなのはオタクにとっては常識なのだから。
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