18話 登校
朝である
世界には朝昼晩の3つの時間が順繰りに回ってくる
それは普遍で当たり前の事象だ
仕事に行きたくない、学校に行きたくない
どれだけ駄々を捏ねても結果が変わる事はない
誰に対しても平等に朝はやって来るのだ
それはこの僕、只野康太にも例外ではない
むしろ只野と言う姓をもつただの高校生男子である僕は朝に学校に普通に行くのが普通だ
それがただの高校生としての普通なのだから
しかし、行きたくない
゛行きたくない゛簡潔に纏められたこの言葉こそが今の僕の淀みない本心だ、しかしそんな駄々は彼女には通用しないのである
「ほら、行くぞ!康太」
「…うん、わかってるよ……」
「大丈夫だ、私が付いてる何も心配ない」
なんとも頼もしいモノだ
しかし物事とは根性論でどうにかなる物では決してない、勇気だとかガッツではどうにもならないモノなのだ
しかし何故だろうか
味方がいる、それがたった一人だったとしても、それだけでこんなに心が軽くなるモノだとは思はなかった
そう思ったからこそ、僕は学校にまた行く決心がついたのかも知れない
「朝チュンシュチエーションからの二人で一緒の登校だ、あいつ等、嫉妬で狂い兼ねないぞ?ふはははー」
「そんな事実はない…」
「同じ家、屋根の下からの登校なんだから実質朝チュンだろ?とりま奴等にあたし等のラブラブっぷりを見せて諦めを超えて引かせるくらいにまで持っていく、康太に絡む元気が無くなるくらいにな!」
「そんな事であの人達が引き下がるかわからないけど…アキラ君は自分がどれだけあの学校でモテてるかもう少し自覚した方が良いと思うよ?」
「私も人の悪意を舐めてたな、前世であんな思いしてたのにな、はは、笑えるわ、でもだからこそ言えるんだ、イジメは楽しいから、スカってするからやるんだ、カタルシスが無いとする意味が無いからな」
「言いたい事はわかるけど……」
「ようはお前と私で常にラブコメしてりゃなんの問題もねーよ」
「……アキラ君はそれでもいいの?」
「逆になんか問題あるのか?」
心底不思議そうな顔をしてきいてくる明、
そんな彼女の態度に僕の悩みなど小さな問題でしか無いのだと、そう思わされた
「おはよ〜アキちゃんに康太君!」
「おはようございます舞野さん」
「おはよう舞野さん」
二人に挨拶してきたのは舞野瑠衣、前園明の親友ポジションを獲得した明に拮抗する美貌をもつ小悪魔系美少女だ
普段なら明は彼女が声をかけてきても朗らかに対応する
しかし今朝は違った
「因みに舞野さん、何故、只野君を名前呼びしてるのですか?」
「え?別にいいじゃん、私と康太君は友達だし」
(いつ俺と舞野さんは友達になったんだ?)
舞野瑠衣、彼女もまた前園さんとは異なる形の二面性をもつ、
前園明の場合前世が男だった事からその男としての部分を事情を知る康太の前でしか出せない
ゆえに周囲からは表の顔である清楚な優等生、オッパイのデカい美少女と思われている
ゆえに前園明に二面性があるの事実は康太しか知らない
しかし最近もう一人、二面性を持つ女子と知り合いになった。
それが舞野瑠衣だ。
彼女もまた前園明と肩を並べる美少女だ。
前園明が幼い頃彼女を目標に捉えていた程なのでその美貌は推して知るべきだろう
そんな彼女の二面性は真に自分を知る理解者に対する過度な依存性だろうか?
なんにしても友達と呼ばれる程の関係を構築した記憶はない
「成る程…では恋人である私も康太の事は康太と下の名前で呼ぶのが道理でしょう、いえ、私は康太の彼女、ならばここはダーリンと呼ぶのがセオリーでしょうか?」
「いや、流石にダーリン呼びは罰ゲームが過ぎる、普通に下の名前呼びでいいんじゃない?」
「なら康太にしますね、あともっと恋人らしく腕を組んで距離感を縮めないと誰も私達の交際を信じてくれませんね」
そういって明は康太の腕に自身の腕を回して絡み、自身の豊満な胸を康太の腕に押し付ける
最近やたらスキンシップが増えた気がする
柔らかい至福の感触が、腕から脳に伝って一部がイグニッションしてしまうから止めてほしい
頬を赤らめながらもそれを嬉々として行う明
突拍子もない行動をとる明に戸惑い視線を外すがその際に舞野瑠衣の顔が見えた
二人の様子を見ていた舞野瑠衣の表情が一瞬驚きに歪んだ様に見えたが直ぐ様元の笑顔に戻ったのを康太は見逃さなかった。




