16話 前園明その1
最近康太がそっけない
いつもは何かしら反応してくれた
でも今の康太はとても冷たくて私と接するのが億劫そうな態度を取る、私はそれが堪らず悲しくて、辛くて、腹立たしかった。
康太は私と同じ時間逆行者だ。
最初時間逆行に気づいた時私は錯乱した
体が小さくなっていたんだから当然だ
ただ小さくなったんじゃない
赤ちゃんだったんだ
意味も何も分からなかった。
まず私は……俺は男だった筈だ
股間に……
自分の体にあって然るべき物がなくなっていた。
それだけじゃない
女の体である事がとにかく強い違和感として私…俺に伸し掛かってきた。
でも人間は慣れであらゆる事を克服してきた生物だ。
意識が芽生えたのが赤ちゃんの時だったのも影響していたのかも知れない。
割りかし直ぐに今の自分の体に適応出来たんだ。
それはそうだ、幼い頃から女として育てばそれはもう女なんだ。女で有ることを受け入れ、女として生きていく。
それを受け入れればなんの問題もなかった。
シンプルイズベスト、それが答えなんだ。
なら女として高みの存在を目指す。
目指すべき高み、可愛く元気で誰もが恋い焦がれるそんな存在になる。
それが俺の決めた第一の目標だった。
そしてこの体は俺の要求に応えてくれた。
磨けば磨く程に輝く原石、それが新しい前園明だったのだ。
男だった頃の俺はつまらない口だけの奴だった
そう、道化だった
大言壮語を口にして悪目立ちして皆から馬鹿にされる
そんな奴だった
友達は只野康太だけだった
そんな俺が……
世界が!宇宙が!
俺と言う存在を認知し本来ある筈だった俺の形を取り戻させてくれたのだ
この時間逆行という奇跡もそんな俺の進むべき道を矯正するための物ならば起こって当たり前の規定事項だったのだ。
この大いなる奇跡には立ち会うべき義務をもった観測者が必要だ。
元来の姿を取り戻し元来の才能を取り戻した俺の『私』の友、マイフェイバリットフレンド
只野康太の存在が!
奴とは本来中学からの付き合いだがそれから死ぬまではずっと一緒にいた。
アイツは地頭は悪くないのだが兎に角要領が悪い。
おっちょこちょいでドジだ、成績も悪い。
誰かが見てやらないと駄目だ。
危なっかしいのだ。
だから私がついてやらないといけないなと当時は思ったものだ。
だから勉強をおしえてやったりテストの山を教えてやった。兎に角面倒をみてやった。
私自身アイツといる時は安らぎみたいなのを感じれたから
大学受験の時も勉強を教えてやった
あの日大学の合格者が発表される日
私達は頭のおかしい狂人に刺殺された
でも今にしておもえばあれも必要な要素だったのだろう
小学校の頃に康太と再会しそして、その奇跡に感動した
康太もまた時間逆行者だったのだ。
それも私とは違い男のまま、元の性別のままだった。
私は、この時に確信したのだ。
女が本来の姿である私の、あるべき姿!
そして、真実にたどり着いた私を正しく観測するために康太もまた、時間をまたいだのだ。
何故か?決まっている。
私のフェイバリットフレンドだからだ。
私は女としての自分を磨いた。
一切の妥協はしなかった、自分の願望やネットを駆使して美少女をその身に顕現させた。
参考に高校時代に一際眩しい輝きを放っていた舞野さんをモデルにした
彼女はこの腐った現実世界に置いて唯一無二、二次元に拮抗出来る逸材だった
しかしここで私は一つ大きな問題にぶち当たった
前園明では彼女の持つ可愛らしさを再現出来なかった。
黒髪にややツリ目の顔、小学生時点で発育のいい体。
こんな体では、今は良いが成長すればあの時の舞野さんを再現するのは不可能だ。
これでは私の夢、目標を実行出来ない。
迷った、苦悩した、頭を抱え思考に没頭した。
そんな時奴の言葉を思い出したのだ。
黒髪巨乳清楚系幼馴染は萌えるよね!
と、
康太のその言葉はまさに天啓だった。
奴にそんな気はなかったのかもしれない。
只いつものように、自分の恥ずかしい性癖を語っているだけなのだろう。
しかし、康太の語る美少女像は正にこの私がたどり着つくべき境地だったのだ。
流石は我がフェイバリットフレンド只野康太だ。
奴は観測だけに飽き足らずこの私を導きすらする。
『ただの』と言う名に反してただならぬ奴である。
そして高校生となった今、私は美少女としての一つの境地にたどり着いた。
街中を歩けば誰もが振り返って二度見するレベルの美少女と私はなった。
清楚さを際立たせる綺麗な黒髪。
切れ長なまつげに形のいい鼻。
キラキラの輝く自信に満ちた瞳。
プルっと柔らかい、みずみずしい唇。
腰は細く、大きな胸を強調してくれる
足も丁度よい肉付を維持するために運動と食生活を意識している
勿論見た目にだけ拘ってるワケじゃない
勉学は前世の知識チートをフル活用し学年一位の学力をもキープした。
康太の理想たる清楚系幼馴染を体現するために基本的な口調は敬語を意識し、勉学にも一切の妥協はしない
そうしてわたしは自身が理想とする清楚系巨乳幼馴染美少女を自らを持って完成させたのだ!
この体で康太に迫るとアイツは面白い反応をしてくれる、康太をからかうのは私の楽しみの一つだ
男の頃には無かった感覚で正直自分で自分の感覚に戸惑いをかんじている
だが勘違いして欲しくない事がある。
他の男共に見られたら気色悪くて不快以外のなんでもないが康太にはもっと見られたい、むしろ見てほしい、そう心から思ってしまう。
最近はこの欲求が強くなってきている。
だからアイツの家に頻繁に邪魔したり、なんならアイツの家の中で下着のままウロウロしたり風呂を借りたり、アイツのシャツを着てワザと胸元を強調したりそういうことをして楽しんだ。
アイツは思った通りの反応をして私を楽しませてくれる。
勿論アイツが私に気を使ってるのは知ってる。
男の記憶を持ったまま女の体になった私の事をアイツは気にかけてくれる。
昔の私の事を知る唯一の存在、親友。
マイフェイバリットフレンド、只野康太。
私はアイツとずっと一緒にいたいと、そう思った。
そのためにアイツ自身を利用した。
偽の彼氏。
実際に他の男達から色目で見られるのは身の毛がよだつ。
胸や尻を見られてるときは笑顔の仮面が砕け散りそうになる。
一週間の内に必ず3回は告白される。
彼女になって欲しいと。
ちょっと仲良くすれば勘違いして言い寄ってくる。
力尽くで迫られた事だって一度や二度じゃない。
正直うっとうしい。
だから理由付けとしての告白避けというのは本当で嘘ではない。
が、それ以上に康太と恋人みたいにずっと一緒にいれるのは魅力的に思えた。
なのに……
なのにだ……
康太がそっけない
元気がない
冷たい
何故だ
康太は私の彼氏に、なるのが嫌なのかな……?
不安だ、何故か…とても不安だっ……。
もしこの小説を読んで少しでも面白いと思はれたなら、ブックマークや、↓の★★★★★を押して応援してもらえると幸いです、作者の執筆モチベーションややる気の向上につながります、お願いします