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悪役令嬢が如く  作者: 英 慈尊
Chapter1 地獄の姉妹
9/16

VSチンピラ少年グループ

「ハイ、ちょっといいかしら?」


 物陰からとりあえず様子を見守っていた私は、明るい声でそう言いながら姿を現す。

 それは、完全に予想外だったのだろう……。

 チンピラ少年たちは元より、エイマまでもが驚いた顔を向けてくる。


「事情は知らないけど、女の子たちに男子たちが寄ってたかって凄むのは、少しばかりエレガントさにかけるんじゃないかしら?」


「なんだあ、てめえ?」


 私を、自分たちよりほんの少し年上の女と見て甘く見たのだろう。

 チンピラのリーダー格らしき少年が、彼なりに精一杯凄んでいるのだろう眼差しを向けてくる。

 当然ながら、そんなものにすくむ私ではない。


「そもそも、そこにいるエイマはミラー組の一員よ?

 あなたたち、どこのファミリーに属しているかは知らないけど、少なくとも、ミラー組じゃないわよね?

 それが、勝手によその組へ属する人間に手を出していいのかしら?

 アニキが知ったら、ヤキを入れられちゃうわよ?」


 これは、割と冗談抜きに彼らの身を案じての言葉であった。

 今回、ミラーが私に頼んだのは、黄金(ゴールデン)ヘンタイ騎士(ナイト)という超絶的ヘンタイ絡みの案件であるが……。

 別に、相手がヘンタイでなかったとしても、見過ごすようなことはしない。


 ましてや、手を出してきたのが、よそのファミリーに属する人間だとしたら……。

 対応は、厳しいものとなるだろう。

 さすがに、本格的な抗争へ発展するような事態は避けるだろうが、相手方のファミリーに使者を遣わし、きちんとしたケジメを求めるはずだ。


 相手も、勢いのあるミラー組相手に勝ち目もなく喧嘩を売るような真似はしないから、その要求は一方的に呑まされることとなり……。

 結果、ファミリーに不利益をもたらした下っ端君は、キツーイおしおきをされる羽目になるのである。


 故に、ここでさっさと手を引くのが、彼らにとってベストな選択であるのだが……。


「ああん!?

 てめーにゃ、関係ねえだろ!

 すっこんでいやがれ!」


 どうやら、この世界へ足を踏み入れて日の浅い――いや、私も浅いが――チンピラ君には、その辺りの配慮というものが全くないようだ。

 ツバを飛ばさんばかりの勢いで、そうまくし立ててくる。


「すっこめって言われてすっこむほど、私は物分かりがいい女じゃないの。

 そもそも、あなた、さっきから何を凄んでるの?

 聞こえてきたところだと、答えがどうのとか言ってたけど?」


 まったく怯む様子のない私に、少しばかり気を削がれたのだろう……。

 リーダー格の少年が、ちらりとエイマの方を見やった。


「俺は、親切をしてやろうとしてるんだよ。

 そこのエイマが、とんでもないヘンタイに絡まれて困ってるらしいってんでな。

 その点、俺のねぐらなら、安心だ」


「ああ、何?

 守ってやるとか何とか口実付けて、エイマを手籠めにしようっての?

 そういうことなら、そっちこそすっこんでなさい。

 彼女を護衛するのも、ヘンタイを退治するのも、私の仕事だから」


「ああん!?」


 単に事実を羅列してあげただけなのだが……。

 それを侮辱として受け取ったか、少年が再び怒りの形相を浮かべる。

 わー、コワイ、コワイ。


「頭わいてんのか、テメエ!」


「女だから優しくしてやると思ったら、大間違いだぞ!」


 いきり立ったのは、リーダー格の彼のみではない。

 取り巻きの少年たちもまた、次々と威嚇の言葉を吐き出しながら、一歩前へと踏み出していた。


「はあー……。

 まあ、こうなるだろうとは思っていたけど」


 溜め息を吐き出しながら、腰を深く落とし、構える。

 結局、最後の最後は暴力という交渉手段に行き着いてしまうのが、グレイフールという町だった。


「ほら、おいで?

 優しく痛めつけてあげるから」


「――ッ!

 ざけんじゃねえ!」


 構えた手で手招きしながら徴発してやると、少年の一人が拳を振り上げながら襲いかかってくる。

 駄目駄目。そんな殴りかかる軌道も、タイミングも筒抜けの一撃じゃ。


「――ふっ!」


 まずは、下顎へ突き上げるような掌打を加え、動きが止まったところで腹部にも一発、掌底を叩き込む。

 そして、止めに勢いよく蹴り飛ばした!


「――がっ!?」


「うおっ!?」


「ちょっ!?」


 最後の蹴りは、止めを刺すだけが目的じゃない。

 彼自身を砲弾として打ち出すことで、他の少年にぶつけてやるのが狙いだ。

 そして、狙い通りに彼らは足を止めてしまい……。

 それは、私にとって格好の隙となる。


「――シッ!」


 素早く集団へ間合いを詰めての、回し蹴り。

 これは、個人を狙っての一撃ではない。

 一度に刈り取った下顎と意識の数は――都合三つ!

 三人同時に脳を揺さぶってやることで、これを無力化したのだ。


 意識を失った少年たちが、悲鳴を上げることすらなく昏倒する。

 残ったのは、リーダー格の彼を含めて三人か。


「こ、こいつやべえぞ!」


「お、おい、どうする!?」


「く……クソがっ!」


 追い詰められたリーダー格が、ポケットに手を突っ込む。

 そして、取り出したのは折り畳み式のナイフであった。

 ああ、そういえば、やたらと道具をちらつかせたがるのも、下っ端の特徴ね。


「ざ、ザビーさん!」


 それを見たエイマが、悲鳴のような声で私の名を叫ぶ。

 別に、心配する必要はないんだけどな。

 だって、私の方はもっと物騒な道具を使うつもりだし。

 例えば……そこに転がっている鉄パイプとか!


「――ほっ」


 息を吐き出しながら、つま先で素早くそれを蹴り上げる。

 そして、宙に浮かんだパイプを両手で掴むと同時、一気に踏み込んで先端を突き出した!


「――げぼっ!?」


 遠慮のない刺突を受けたのは、リーダー格の隣にいた少年だ。

 喉に強烈な打撃を受けた彼は、そのまま力なくくずおれる。


「な……あ……?」


 仲間がやられた姿を見て、リーダー格が後ずさった。

 ほらほら、せっかく抜いたナイフは使わなくていいの?

 まあ、そんなもんを人に刺せる度胸がないことは、最初から分かっているけど。

 ハッキリ言って、ここへの道筋を教えてくれた老人の方が、よっぽど怖いかな。


 ――ガリ。


 ――ガリリリリリ。


 あえて鉄パイプの先端を地面に引きずりながら、ゆっくりと残る少年たちに歩み寄る。

 薄い笑みを浮かべながらそうする私に、恐怖したのだろう。


「ち、畜生!」


 リーダー格が、目をつむったままにナイフを突き出す。

 ……うん、私から一メートルくらい先の空間に空振りしてるだけだけど。


「――はっ!」


 ともかく、武装した相手は無力化するに限る。

 私は鉄パイプを地面に突き立て、それを支柱に高々と跳躍した。

 跳躍と同時に、蹴りを突き出す!


「――ぶっ!?」


 顔面に蹴りを喰らったリーダー格が、鼻血を吹き出しながら蹴り飛ばされる。


「あ……あ……。

 ――ぐべっ!?」


 最後の一人は、投てきした鉄パイプで打ち倒し……。

 ひとまず、チンピラたちの制圧は完了となった。


「ヤグルマ流舞闘術(スティング)――調和(ハーモニー)

 ご堪能、頂けたかしら?」


 存在しないドレスの裾を摘む仕草と共に、優雅な一礼をする。


「すっごーい!」


「お姉ちゃん、カッコイイー!」


 そうしていると、エイマの後ろに隠れていた少女たちが歓声を上げた。


 お読み頂きありがとうございます。

 アクションシーンは特に力を入れて描写しましたが、いかがでしたでしょうか?


 もし、少しでも「面白い」「続きが読みたい」と思ったら、是非、ブックマークや評価、いいねをよろしくお願いします。筆者のゲージが溜まってヒートア〇ションもできます!


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