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カルテット・サーガ  作者: カトリーヌ
第1章・聖騎士と魔術師
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レオンの依頼(2)

 ギルドを出て、アレクはアリアに連れられ王都城下町を見学する。ギルドを出て王宮の方へ向かえば、今エミリアとレオンがいるであろうグランマージ家が見えた。

 思っていたよりも立派な建物で、さすが伯爵家だと思った。グランマージ家を超えて、街の中央の大きな道を横切る……その街道を歩きながら北の方を見れば王宮があって、その豪華な佇まいには圧倒されずにはいられない。

 更にそのまままっすぐと進めば、エクスタード家。つまり、城下町の中心を通る大きな街道の最奥に王城が、そしてその左右の少し行ったところにグランマージ家とエクスタード家の館があるという事である。

 アレクは昨日宿でもらった地図を見ながら、アリアに今はこの辺りだと説明を聞きながら歩いていた。アレクの住んでいた集落の何倍も大きな王都城下町である、当然一日では覚えられないだろう。


「城下町の中心部はとても華やかです。ただ、地図でいうとこの辺り……町のはずれの方は、治安はあまり良くないと言われています」

「そうなんだ。城下町はどこもこんな感じなのかと思っていたけど……」

「窃盗や喧嘩は当たり前で、違法な売買なんかも行われているそうです。レオン様にも、間違ってもこの辺りには近づくなと言われています」

「……怖いな、それは」

「騎士団の方々で取り締まったりはしているそうなのですが、悪い人たちを捕まえても絶えず次の悪い人たちが沸いてくると……」


 思えば田舎は平和だと……アレクは思う。確かに山賊がやってきた事もあったが、あの日たったの一度きりだ。ギルドへ依頼がびっしり貼られていたし王都では何らかの事件が次から次へと起きていて、都会で人が多いだけに良い人ばかりではないという事なのだろう。

 弓矢を持って野山に入って、狩りに明け暮れていたアレクには想像もできない世界だ。王都では何もかもが金のやりとりだし、自給自足もほとんどしないのだろう。


「じゃあ、こっちの方は近づかないとして……こっちには何があるんだい?」

「そちらは商店が多い地区です。食品を売っているお店はもちろんですが、仕立て屋さんや、道具屋さん武器屋さんも。あと……」


 夕方まで、あっという間だった。かなりあちこち歩き回ったせいでアレクもアリアもくたくたに疲れていたが、夜を告げる鐘が鳴る前にアリアを教会へ送って宿へ戻ることができた。

 宿までの道をアリアに心配されたが、レオンが言っていた通り泊まっていた宿は教会ともほど近く、目の前にある噴水が目印となって迷う事はなく戻ってこられた。

 アレクが宿に戻った時にはエミリアはまだ戻って来ていないようだ。折角だからアリアと食事でもしてから戻ってくればよかったかもしれないと思いながら、宿に併設された酒場に入る。

 酒場で食べ物を頼んで、ついでにちょっと酒も飲んで……疲れていたし、なかなか良い酒だったからかもしれない。酔っぱらって、とまでは言わないがいい気分だった。


「アレク、ここにいたのね」

「あっ! エミリアさん! おかえりなさい」

「飲んでるの? なんか、気分良さそうね」

「そうかな? そう言われると、そうかもしれない。家はどうだったんだ?」

「……おじい様も、父も、兄も……みんな暖かく迎えてくれたわ。母だけはちょっと、ぶつくさ言ってたけどね。勇気を出して戻って来てよかった」


 そう言いながら、エミリアもアレクが座っていたカウンターの隣に腰かける。そうして、マスターに自分にも一杯、と。食事はレオンと済ませてきたらしい。


「ギルドはどうだったの?」

「あぁ、冒険者の登録はしてもらって……でも、どんな依頼を受けたらいいかは、エミリアさんに相談してみようと思って」

「そうね、初めはやっぱり簡単な依頼の方が良いと思うけど」

「星が一つとか?」

「そうそう」

「そうだよなー。まずはそういうのから、経験を積むべきだよなー」

「何かいい依頼はなかったの?」

「俺、文字読めなくてさ。シスターが教えてくれるって言うから、まずは勉強かな」

「あー、確かに文字が読めないと、依頼の内容もわからないものね」

「そうなんだよ。黒星五つの依頼書があって、それをシスターに読んでもらって格好悪いって思って」

「黒星五つ? そんな依頼、滅多に出ないわ。相当悪さをしてきた魔物の退治かしら……どんな内容だったの?」

「それがさ……」


 この依頼の内容は、エミリアに言ってはいけないと……ギルドではそう思っていたはずなのに。疲れと、酔いのせいか。つい依頼の内容を口走ってしまった。

 依頼者はレオン。レオンの父の形見であるエクスタード家の宝剣の回収、ギルドの受付嬢の話では、そこに巣食う飛竜はレオンの父の仇だと言われていると……今日見聞きした、依頼の内容に関わる全てを。


「アレク、私部屋に戻るわ」

「え? エミリアさん、全然飲んでないけど」

「一杯で十分よ。今日はちょっと疲れたし、先に休むわ。アレクもあんまり飲みすぎないようにね」

「わかったよ。エミリアさん、明日の予定は?」

「まだ未定」


 そういって、エミリアは自分の飲んだ飲み物の金を払って立ち去る。その後アレクはしばらく飲んでから部屋へ戻って……翌朝、気怠いと思いながら起きればもう昼近くになっているようだった。

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