44 勇者さんからのお手紙(砂漠の国)
勇者さんがまたお手紙と荷物を送ってくださいました。今回は魔王さまへの手紙がメインだそうで、わたし宛には風景が書かれた絵ハガキにひと言そえてあるくらいです。
『いま砂漠の国。昼は猛暑、夜は極寒だ』
絵には砂の大地が広がり、中央には馬に似たような動物がいて、その背に乗る勇者さんと妹さんが描かれていました。二人そろって特徴的なポーズをとっています。フロスに聞くとこれは人間の国ではおなじみのピースサインというそうです。絵から伝わる雰囲気はなんだか楽しそうですし、勇者さんも元気そうでよかった。もしかしたら次の旅先でも似たような便りをくださるかも。なんだか楽しみです。
魔王さまの手紙には家族を救ってくれた礼と騒ぎを起こした謝罪が書かれていたそうです。そして砂漠の国の名産である珍しいお酒やスパイス、乾燥果実が同封されていたようで料理長が上機嫌だとか。ユニちゃんにも特別にお土産があったそうです。甘いお菓子を甘い蜜で浸した歯が溶けそうになるほど甘いとウワサの逸品です。
「こしゃくな奴め」と魔王さまが笑っておられました。
確かあの辺りは金がたくさん取れて、細工の技術も随一。お姉さまが自慢にしていらした青い貴石がついた首飾りももとは砂漠の国の品だったと思います。わたしがいた国ではあまり金が取れないので金をメインとした装飾品はとても貴重だったと思います。その代わりに広大な土地と穏やかな気候で作物がよく育ち、食料品で困ることはないとか。
土地が変われば気候も変わり、そこに住む動植物たちも姿を変える。そして魔力が濃いこの辺りの土地は気候は似ていても人間の国とは似ても似つかない生態系があります。世界って不思議ですね。
そういえば、魔王さまに喜んでもらえそうなことをいろいろ考えました。でも、刺繍はまだ上手ではないし、楽器も人様に聞かせられるレベルではありません。最近読んだ物語では自分で作ったお菓子をプレゼントする描写がありましたが……やはりコレというものがありません。ここは素直にパピリスとフロスに相談してみましょう。




