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4 皆さまのお名前

 小耳にはさんだのですが、お城であらたに果樹園を作るそうです。フルーツがたくさん実るところを想像すると、今から心がはずみます。きっと素晴らしい光景なのでしょうね。食べることは叶わなくても、時々見に行って愛でてみたいです。いつか魔王さまにうかがってみたいと思います。


 収穫のお手伝いをしたら少しわけてもらうことは……ダメです、そんなことを考えてはいけませんね。


 ここでは皆さまがうんと優しくしてくださるので、勘違いしてしまいそうです。


 ご迷惑にならないよう、皆さまの言い付けをしっかり守りましょう。恵まれた環境に身を置かせてもらったのです。たとえこのあと命を取られるようなことになっても、感謝こそすれ、恨むことなどできません。


 そうだ。

 わたし、最近いろんな方の名前を覚えました。要領が悪いのでやっと、という感じです。


 まずわたしのお世話をしてくださる侍女のふたりがパピリスとフロス。


 パピリスは古い言葉で蝶という意味らしいです。美しい黒髪とヤギ角がチャームポイントの美人です。


 フロスは花という意味で、巻いたひつじ角とカールした髪型がとてもかわいらしい方です。


 とても丁寧に接してくださるので、つい甘えてしまいます。おふたりを選んでくださった魔王さまに感謝しかありません。


 あとは魔王さまの側近であるイゴルさま。冷静沈着で、すごく頭の良さそうな方です。

 護衛を務めるアムトさまはたてがみがすごく立派。

 いつも美味しい料理を作ってくれるカルダ料理長に、勉強を教えてくださるディトリ神官長。花が彩る庭を整えているヒョードと、その弟子のジミル。メイドのオリガはいつも元気に挨拶をしてくれて、侍女長であるヴェトラナはいつも凛とした姿勢が美しくて憧れます。


 まだまだ書きたい方がいるけれど、日記帳いっぱいに彼らの名前を書いたらご迷惑かしら。



 追記

 呼び出しを受け、魔王さまの元へいくと、真面目なお顔で「レクスだ」とおっしゃいました。わたしがポカンとしていると、その尊きお名前を繰り返しおっしゃいます。その時は「はい」としか言えませんでした。わたしは察しが悪いので、魔王さまはもっと別に伝えたいことがあったのかもしれません。部屋に戻った今は申し訳ない気持ちでいっぱいです。


 魔王さまのお名前は、このお城に来ていちばんに覚えました。


 夜、幸せがつまったベッドに横になると、時々魔王さまのお顔が浮かびます。そのときに一度だけお名前をお呼びしているけれど、それは絶対の秘密です。


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