32 姫いちご選手権
前に鬼レモン選手権という催しがありましたが、今日は『姫いちご』をテーマとした料理選手権が開催されました。
なんでも、以前わたしがいちごが好きと言ったことを魔王さまが覚えていてくださったのです。魔王さまのそんなお優しいところが大好きです。
姫いちごというのは数あるいちごの品種の中でも特に味がよいとされるものだそうです。甘味と酸味が一粒にぎゅっと詰まった高級品と聞いて、とても緊張してしまいました。
審査員は前回と同じく侍女のパピリス、魔王さま側近のイゴル、護衛官アムト、侍女長ヴェトラナ、そしてカルダ料理長。
わたしも変わらず魔王さまのとなりでご相伴にあずかりました。
今回の品はやはりスイーツが多かったです。
どれも本当においしくて、はじめて食べた時の感動は忘れられそうにありません。ラインナップは以下の通りです。
1番 姫いちごの森スライム包み
2番 姫いちごの宝石タルト
3番 贅沢フルーツサンド
4番 鴨肉のソテー姫いちごソース
5番 姫いちごのパルフェ、クレープを添えて
姫いちごの森スライム包みというのは不思議な食感でした。森スライムは乾燥させたものを水と砂糖で練ったあと蒸すと、もちもちしてほんのり甘い皮になるそうです。見た目は雪玉を丸めたような白くて丸いもので、それがお皿にふたつのっていました。ひとつにはチョコレートガナッシュといちごが丸々ひとつ入っていました。もうひとつのスライム包みにはガナッシュではなく、豆餡というものが入っていました。豆を柔らかく炊き上げ、甘味をつけて丁寧にこしたものだそうです。ガナッシュよりも甘さが控えめなぶん、いちごの甘味が感じられてとてもおいしかったです。
タルトとフルーツサンドは見た目がとても華やか。艶々したいちごが敷き詰められたタルトはまさに宝石の名がふさわしいでしょう。フルーツサンドの計算された断面の美しさだって引けをとりません。もちろん味もすばらしかったです。こってりとしたアーモンド生地やクリームにいちごの甘酸っぱさがちょうどよかったです。
いちごが肉料理のソースとして使われるのもとても新鮮で、フルーティーな味が意外とお肉とマッチしておいしかったです。アムトはもちろん4番を推していました。
いちごのパルフェはアイスのことでした。お姉さまたちが食べていらしたことを思い出して懐かしい気持ちになります。パルフェだけでもおいしいのに、クレープと一緒にいただくとまた違った味わいになって楽しい一品でした。
どの料理が優勝してもおかしくなかったのですが、今回栄光に輝いたのは1番姫いちごの森スライム包みでした。おめでとうございます。わたしもこっそり応援していたのでとても嬉しかったです。
おいしいいちごを食べることができてわたしは幸せです。選手だった料理人へご挨拶しにいったら迷惑でしょうか。すてきな品をありがとうと全員にお礼を言いたいです。あとでフロスとパピリスに相談いたしましょう。
いちごをまた食べる機会があるでしょうか。
とても楽しみです。




