31 魔王さまのお城へ帰ってきました
また魔王さまのお城へ帰ってくることができました。生まれ育った国を離れるのはさみしくもありますが、思い出がなくなるわけではありません。ここに戻ってこられたことが本当に嬉しいです。
さらに、なんとわたしは、大変、大変、大変恐縮でありますが、魔王さまと婚約することになったのです。こんなに光栄なことがあるでしょうか。
婚約式の日取りはまだこれから決めるとのことです。そこから成婚までの期間、いろんな勉強をしたり儀式をこなしていかなければなりません。今から緊張してしまいます。わたしは色々といたらないので、皆さまのお力を借りながら魔王さまのとなりに立てるよう精進したいと思います。
さて。
わたしはかねてより、お城へ戻ったらやりたいと思っていたことがありました。それはユニちゃんのお母さまへご挨拶することです。
断りもなしに親子を引き離してしまったへのお詫びと、ユニちゃんへの感謝を込めて、手土産にお菓子を持って行きたいとフロスたちへ相談しました。すると料理長が作ってくれた焼き菓子を用意してくれました。貝殻のかたちをしたマドレーヌです。とってもかわいらしい。わたしの国から取り寄せた食紅でカラフルに色付けてあって、色ごとに味が違うのだとか。さすが料理長です。ユニちゃんたちも喜んでくれそうです。
以前ユニちゃんたちと会った庭へ行くと、ほかのユニコーンたちもいました。お友達なのでしょうか。どの子もとても美しく、その中でもひときわ輝いていたのは、やはりユニちゃんのお母さまでした。
わたしを見つけて駆け寄ってきたユニちゃん。じゃれてくる姿に癒されつつ、わたしはユニちゃんのお母さまのもとへ行きました。謝罪と感謝の気持ちを伝えると、ユニちゃんのお母さまは目を細め、笑ってくれたような気がしました。
それから料理長お手製のマドレーヌをユニちゃんたちに食べてもらいました。みんな楽しそうで、はじめて会ったユニコーンたちとも仲良しになれたのです。それもこれも料理長やフロスたちのおかげですね。
ただ困ったことがひとつ。
ユニちゃんがまたお母さまのもとを離れてお城へきてしまったのです。魔王さまへ相談すると「問題はなかろう」と苦笑しておられました。
「わたしはユニちゃんと一緒にいられてうれしいです。お母さまに会いたくなったら、いつでも戻って大丈夫ですからね」
「きゅわっ」
ユニちゃんとふたりベッドにもぐるとクリスタルの中を思い出します。最初はびっくりしたけどなかなか楽しい経験でした。
でもやっぱり、魔王さまのお城がいちばん心やすらぎますね。




