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3 おいしいものばかりです

 食事がおいしくて困ってしまいます。

 朝と昼間は軽めにとって、夕食はこれでもかと豪勢です。しかも時間があえば魔王さまと一緒に頂くことになっているので、わたしは粗相を働かないかドキドキしています。


 見よう見まねで覚えた宮廷作法ですから、細かなところで間違っているかも。こちらのお作法があるのでしたらぜひ習いたいものです。


 魔王さまがいらっしゃる時は緊張しますけど、食事の時間はとても楽しみです。あまりたくさん食べれず皆さまにご心配をかけてしまうのは心苦しいですが、お医者さまいわく、少しずつ食事の量を増やしていけば大丈夫とのこと。密かな目標は魔王さまと同じ量を食べることです。


 農家や漁師、商人、そして料理人の方に心からの感謝を。お城で働く皆さまも、いつもありがとうございます。


 不思議だった料理は森スライムのカルパッチョでしょうか。一夜干ししたスライムのプルプルとした弾力が楽しかったです。黒マタンゴというキノコは熟成させるとチーズのように硬くなるそうです。削るときにすごくよい香りがしました。


 王宮の料理はいろいろ見ましたが、このような食材は知りませんでした。ここへ来てから驚きの連続です。


 そういえば、憧れのフルーツタルトが出された時には、わたしは両手で口をおさえていました。カットされたいろんなフルーツ。その色とりどりの表面が宝石のようにキラキラしていて本当に美しかったです。不審に思われた魔王さまが「気に入らないか」と聞いてくださったのですが、そんな訳ありません。わたしのたどたどしい説明ですぐにご理解される魔王さまは本当にすごいです。


「そんなにタルトが好きならいつでも作らせよう。姫はどんなフルーツが好きか。聞かせてほしい」


 わたしは答えにつまってしまいました。季節によって顔ぶれが変わるフルーツはどれも美味しそうでしたが、食べたことはありません。けれど、がっかりさせたくなくて気付けば言葉が口をついていました。


「いちご、です」


 ウソではないのです。食べたことはないけれど、見た目がかわいくて好きなのです。お姉さま達はおいしいとおっしゃっていたし、答えとして変ではないハズです。


「結構」


 優しい声音でした。恐ろしい方だと聞いていたのに、実際にお会いしてお話すると、魔王さまはどんな方よりも優しくて穏やかです。




 そういえば、わたしは人質ではないそうです。

 訳あって城を偵察していたところわたしを見かけ、暮らしぶりを見かねて保護したのだそうです。なので、今の立場としては客人と言われました。びっくりです。早とちりをして恥ずかしい。


 でも額面どおり受け取っていいのでしょうか。人質としての価値も怪しいですが、客にふさわしいとも思いません。


 魔王さまにはなにかお考えがあるのかもしれません。もしわたしに役割を与えてくださるのなら、精いっぱい努めようと思います。


 もう少ししたら、魔王さまと約束の時間です。庭園を案内していただけるとのことで、とても楽しみです。

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