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2 とても素敵なお部屋です

 わたしが滞在しているお部屋はとても広くてキレイです。毛足の長いふかふかのカーペット。ドレープがたっぷりとついた窓辺のカーテン。優しい木目のついた家具はどれも同じ材質の木でできていて、花瓶にはたくさんの生花がいけられています。天蓋のついたベッドはあまりに可愛らしくて、最初はベッドと認識できませんでした。


 クッションを抱いてカーペットの上で眠っていたわたしを、ベッドへ運んでくれたのは魔王さまでした。


「姫の様子を見にきたら床で倒れているし、心臓が止まるかと思った」


 わたしの身を案じてくださるなんて、なんてお優しい方でしょう。胸がいっぱいになってしまいます。これからはちゃんとベッドで体を休めると約束をして、魔王さまはご自分の部屋へと戻っていかれました。


 でも、こんなに素敵なお部屋をわたしひとりで使っていいのでしょうか。なんだか罰があたりそうです。


 あたたかくてふかふかの寝具は幸せのひと言です。その幸せに包まれ、わたしはすぐに眠りにつきました。亡くなったお母さまが笑ってらっしゃる夢を見ました。


 今これを書いているのは目覚めてすぐ。ずっと朝日がのぼる少し前に起きる生活だったので、同じように目が覚めてしまいました。


 勝手に動き回るわけにもいきませんし、侍女のふたりが来るのを待ちましょう。


 ……それにしても、こんなにゆっくりと朝の時間を過ごすのは久しぶりです。


 朝のつんとした静寂は心が洗われます。

 それに、止まっていた時間が動き出す、というのは大げさかもしれませんが、人々が起きて活動をはじめるとなんだか安心できます。


 孤独だった夜の終わりを告げる朝鳴き鳥。

 暗くて冷えていた空気を溶かす太陽の熱。

 朝つゆが庭木の葉を濡らし、パン屋からは煙が立ち昇る。


 うーん、雰囲気を表現しようとがんばっても、読んでいた詩集には到底およびませんね。


 机にひじをついてぼーっとしていると、ドアがノックされました。ふたりが来たようです。ひとまず日記はここまでにしておきましょう

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