表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とらわれお姫さまのゆるふわ日記  作者: 猫の玉三郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/51

19 勇者さんの事情

 さすがに疲れが重なったようで、勇者さんは魔法をほどこしたテントで体を休めました。


 わたしはチャンスだと思い、ここぞとばかりに事情を聞いていきました。逃走中だったこともあってこれまでゆっくり話をする機会がなかったのです。


 勇者さんはもともと狩人を生業とする方で、魔法が使えることもあり、近隣に名を馳せる評判の若者だったそうです。


 突然国王に呼び出され、命令されたのは「行方不明の姫を探せ」。両親や幼い妹さんを人質にとられ、大した金も持たされないまま、城から出されたと勇者さんは言いました。


 勇者さんは仕方がなく国いちばんの占い師にわたしの居所を占ってもらい、必要と思われる道具を準備し、計画を立てて魔王さまのお城へと侵入したそうです。


 魔族から余計な恨みを買いたくないので極力傷付けず、殺めず。わたしを奪還したらすぐに逃げ帰る。それを可能にするためにあらゆる手段を使ったそうです。


 わたしが閉じ込められたクリスタルも魔石商をめぐってわざわざ準備したのだと勇者さんは言いました。費用はすべて国王へ請求されているらしいですが……大丈夫でしょうか。お父さまが払う価値がないと拒否されれば、魔石商をはじめいろんな方へ支払いができません。


 わたしがそうこぼすと、勇者さんは大丈夫だと笑いました。


「姫さんを心配してる官僚たちがいる。そいつらに話をつけてあるからアホ国王は確認もせずサインして終わりだ」


 そう言われて思い当たる方たちの顔が浮かんできました。同時に、大変だった当時の思い出もよみがえって、胸の内に苦いものが広がります。


 わたしを連れ戻す理由はなんでしょう。

 この問いにも、勇者さんはさらっと答えてくれました。


「砂漠の国から縁談が来てるんだと」


 それを聞いて納得です。


 砂漠の国は一夫多妻制なので、きっとそのハレムに加わることをお姉さまがたが嫌がったのです。しかし貿易の観点から砂漠の国との繋がりは持ちたい。


「姫さんには悪いが、俺も家族が大事だ。だから最後にはあのアホ国王のところへ連れて行くぜ」


 決意に満ちた声でした。勇者さんはご自分の正義のために動いてらっしゃいます。そしてそれは正しいです。


 わたしは返事がすることができませんでした。感情の波に飲み込まれないようにじっと下を向いていると、ユニちゃんが寄り添ってくれました。優しい温もりが荒んだ気持ちをなぐさめてくれます。


「ユニちゃん、ありがとうございます」


 きゅわ、と鳴くユニちゃん。

 わたしの方が年上なのに、気を使わせたのでしょうか。書いていて情けなくなってきました。



 よし、気分を変えてまいりましょう。


 パピリスが教えてくれた美容体操をやってみようと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ