16 大変です
どうしましょう。
わたし、閉じ込められてしまいました。
しかも……ここはどこなのでしょう。城内の一室でも、塔の一室でもありません。クリスタルのようなキラキラした壁に四方八方囲まれています。家具の類いはありません。
わたしのそばにあるのはこの日記帳とペン、そして先日知り合ったユニコーンの赤ちゃんも一緒にいます。
大変困りました。
急なことで何が何やらさっぱりなので、状況を把握するためにも順序よく書いていこうと思います。
朝はいつも通りに起きて、支度をしてから朝食を頂きました。魔王さまはその時もいらっしゃいませんでしたが、あとで顔を見に来てくださいました。わたしの部屋までわざわざ足を運んでくださったのです。
「今日は姫に果樹園を見せたかったのだが……少し城の周りが騒がしい。できれば侍女とともに自室で過ごしてほしい」
そう言って魔王さまは踵を返されました。
今思うと、このような事態を予期されていたのかもしれません。
言いつけ通りに部屋で過ごしていると、赤ちゃんユニコーンが遊びにやってきました。ユニコーンのような知能の高い幻想獣は気に入った人間のところへ遊びに来ることがたまにあるようです。
しばらく部屋の中で遊んでいましたが、そのうちに疲れたのか、ユニコーンはわたしのひざの上で眠ってしまいました。
わたしはその時日記帳とペンを持っていて、過去のページを見返しながら、今日は何を書こうかとのんきなことを考えていたのです。ひざの上のユニコーンがすやすやと寝息を立てるなか、ごとりと扉の外で音がしました。
硬くて重いものが扉にぶつかったように思えました。
パピリスが立ち上がり、外へ様子を見に行きます。しかしパピリスが手をかける前に、扉は勢いよく開きました。同時にパピリスが崩れるように床へ倒れます。
扉から入ってきたのは人間の男性でした。
腰には長剣を下げていて、わたしを見るとにやりと口角を上げました。
わたしを守ろうとしたフロスも一瞬で床へ倒れてしまいました。あまりのことに理解が追いつきません。
「あんた、イオディフ王国の姫さんだな」
男性はわたしの返事も聞かず、小さく呪文を唱えました。
強い光がカッと辺りを照らし、気付くとわたしはこのクリスタルの空間にいました。抱いていたのがいけなかったのか、ユニコーンも一緒です。きっと母親が心配しているでしょう。せめてこの子だけでも逃すことはできないでしょうか。
クリスタルに囲まれているので、今が何時なのか、昼なのか夜なのかもわかりません。
本当に、どうしたらよいでしょう。




