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とらわれお姫さまのゆるふわ日記  作者: 猫の玉三郎


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15 ユニコーンの親子

 ユニコーンというのはこの国でしか見られない一角獣だそうです。つららのように鋭く長いツノはうっすらと透けていて、白く美しい体躯に夜明けのような色合いの立て髪がとても幻想的な生きものでした。


 今日はそのユニコーンの親子を見せていただきました。先日生まれた赤ちゃんユニコーンとそのお母さんで、場所はお城からほど近い花園でした。パピリスとフロス、そして神官長と護衛の方と一緒です。


 魔王さまはいらっしゃいません。昨夜から何やら慌ただしくされているようです。魔王さまとの日記にもお返事は来ておりません。お疲れではないかと身を案じてしまいます。


 赤ちゃんユニコーンは、とても元気で愛らしい姿をしていました。ツノも短くてまるっとしています。ふわっとした立て髪は色が淡く、空のような色合いでした。


 小さな脚をぱたぱた動かして駆けまわり、その可愛らしさにまわりの方たちも満面の笑顔です。


 ユニコーンは幻想科の生きもので、食べるものはなんと魔力。近い種類ではペガサスやバイコーンも幻想科の生きもので、同じく魔力を糧として暮らしているようです。


 魔力についてはわたしも不勉強ですが、自然や生きものが持つ生命エネルギーの一種だと神官長がおっしゃっていました。人はもちろん、花や蝶にも魔力は宿るそうで、わたしはつい自分の手を見つめてみます。目にはなにも写りません。


「魔力はおいしいのでしょうか」

「こればかりはユニコーンたちに聞いてみないとなんとも。しかし彼らにもお気に入りの魔力があるようですよ」


 神官長はそう言うと母ユニコーンの元へ行きました。大きな体をもつ彼女は優雅で貴婦人のように美しいです。


 母ユニコーンは神官長の匂いをふんふんと嗅ぐと、わたしの方にもきました。近くで見るといっそう迫力があります。でも恐ろしいという気持ちを抱くことはありませんでした。


 母ユニコーンはすりすりと甘えるように頭を寄せてきて、それが大変可愛らしいのです。そのうち赤ちゃんユニコーンもやってきて、わたしの足元でぴょんぴょんと跳ねだします。


「姫の魔力を気に入ったようですな」と神官長はおっしゃいました。そうだったら嬉しいです。



 魔王さまは今もお忙しいようです。

 一日も顔を合わせないことがはじめてで、それだけでソワソワと落ち着かない気持ちになります。


 魔王さま。

 どうか無理をなさらないでくださいね。


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