表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とらわれお姫さまのゆるふわ日記  作者: 猫の玉三郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/51

14 これはデートというらしいです

 フロスたちが準備していたこれは「デート」というらしく、親交を深めるためのイベントらしいです。


 魔王さまに手を引かれ、連れられたのは城内にある書庫でした。十歳くらいの子どもたちや貴婦人、老紳士らが数人いて、彼らはわたしたちを笑顔で迎えてくれました。


「魔王さまの朗読が聞けるとは、長生きをするものですな」と老紳士が朗らかにおっしゃいました。


「今日は特別だからな。いつもいつもはせんぞ」と魔王さまも笑って答えられます。


 きょとんとしている間に準備は終わり、魔王さまを囲むように並んだ椅子にわたしを腰をおろしました。


 魔王さまは一冊の本を手に持つと、声に出して文章を読んでらっしゃいました。子どもたちは目をキラキラさせて、ご婦人方は目を閉じうっとりとした様子で、老紳士は楽しそうに物語に聞き入ります。

 もちろん、わたしも。


 魔王さまの優しく落ち着いた声音が、物語を彩り、奏でていきます。


 わたしは本を読むのが好きでした。

 つらいことがあっても、瞬時にいろんな世界を見せてくれる物語が大好きでした。でもそれは自分ひとりで浸るもので、他の方と共有するといった経験はありませんでした。


 読み聞かせなら字が読めない人でも一緒に楽しむことができます。学びが途中の人も、視覚が弱っている人も、本を持つことができない人も、これならみんなで物語を読むことができます。


 こんなに周囲を幸せにできることがあったなんて。


「姫、こちらへ」


 わたしが感動で打ち震えていると、読み終わった魔王さまがお呼びになります。そして一冊の詩集を手渡されました。


「姫の声で聞かせてくれないか」


 なんということでしょう。

 わたしにも朗読の機会をくださったのです。


 それは比較的短い詩がいくつも載っているものでした。魔王さまのように上手には読めませんでしたが、終えると胸に達成感が満ちていきました。皆さまからお褒めの言葉を頂きました。魔王さまが「上手だった」と言ってくださいました。


 嬉しくて、嬉しくて、わたしは少し泣いてしまいました。


 もしまた機会を頂けるのなら、また朗読をしてみたいです。たくさんの人に喜んでもらえるような、そんな朗読をしてみたいです。



 そのあとも素敵なことがたくさんありました。

 庭園でいただいたランチも格別でしたし、魔王さまとふたりきりでお話する時間もとても楽しくて、夕方になるのが惜しかったくらいです。


 今日は魔王さまのいろんな面を知ることができました。朗読される時の心地いい声音。日の下で色を変える瞳は美しく、思わず魅入ってしまいました。それに物知りで、お優しく、無学なわたしの話にも耳を傾けてくださる器の広さ。


 魔王さまは今までで出会ったどんな方よりもとても素敵だと、そう思ってしまいます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ