12 魅惑のレインボーアイス
先日おおいににぎわった鬼レモン選手権ですが、今日のおやつは料理長が作ったレモンピールの砂糖漬けとそのチップが入ったクッキーでした。
ピールというのは皮の部分を指していて、洗ったり煮たりしてひと手間加えると美味しいお菓子になるようです。
砂糖漬けの方は少しの苦味がクセになるおいしさ。レモンピール入りクッキーはさわやかな風味と食感の楽しさがよりクッキーのおいしさを際立たせていました。
今日は料理長といろいろお話をする日でした。
というのは、料理長はわたしのいた国の料理をお知りになりたいからです。なんて研究熱心なのでしょう。
わたしは料理長のお役に立てるほどお話できるのか、そんな不安を抱いていました。見ているだけで、食べたことがない料理も多かったのです。しかしそれは杞憂でした。料理長の質問は端的でわかりやすく、思ったより言葉に詰まることはありませんでした。あちらではどのような料理が好まれるのか。どのような食材が用いられるのか。特別な日はなにか違った料理が出るのか。そのようなことをたくさんお話ししました。
料理長が特に興味を示されたのは「レインボーアイス」でした。
あちらでは豊かさの象徴として、ふくよかな体であることが一種のステータスになります。なのでそれらをサポートしてくれる食事が重宝されていました。さらに近年、食紅花という花の品種改良に成功したので、赤や青や黄色などの鮮やかな色を食事に混ぜることがブームでした。
それらが合体した究極の嗜好品が「レインボーアイス」です。
クリームと砂糖をたっぷり使用したアイスクリームに、カラフルな食紅とフレーバーを混ぜて七色のアイスを作ります。それをバケツのような器にこれでもかと大量に盛り付けて完成です。
赤色のアイスにはラズベリーと小さく砕いた飴。
オレンジ色のアイスにはクッキーキャラメル。
黄色のアイスにはバナナとヌガー。
などなど、とても贅沢な作りなのです。
わたしは食べること叶わず、見ただけで胸がいっぱいになりましたが、お姉さまたちはペロリと平らげていらっしゃったので味も格別なのだと思います。
料理長が注目した点は、食紅花の存在でした。食べ物に着色をするというのは今までに発想がなかったらしいのです。さらに基本のフレーバーに多様なトッピングをすることで味・食感・見た目に変化と個性を持たせ、食べる人を飽きさせない工夫が素晴らしいと熱く語ってらっしゃいました。
反対に侍女のパピリスは横で小さく震えていました。
あとで話を聞いてみると、脂肪分も糖分も多い冷たいアイスを大量に食べることは美と健康的にあまりよろしくないそう。お姉さまたちが好んで食べていた「揚げバター」の話をしたらパピリスは絶句していました。たしかバターのかたまりをパン生地で包んで揚げたものだと思いますが、それも恐ろしい食べものらしいです。
最後には「ほどほどならばよいのです」と笑っていましたけれど。
懐かしく思う気持ちもありますが、わたしはこの国のお料理が大好きです。




