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とらわれお姫さまのゆるふわ日記  作者: 猫の玉三郎


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10 たまにはゆっくりおしゃべりの日

 最近外出が続いたので、今日は城内でゆっくりすることになりました。お勉強もおやすみの日なので何をして過ごそうか悩んでしまいます。


 こういう時はどう過ごしているのかパピリスに聞いてみました。彼女はキリッとした表情で「時間が許すかぎり美容につぎ込みます」と答えてくれました。


「筋トレと体操とマッサージ、それに髪と角のメンテナンスと基礎化粧品の物色、それから……」


 まだまだあったのですが、後半はよくわかりませんでした。


 確かにパピリスはキレイな人です。頭にあるヤギ角は表面に艶があって、丁寧に梳かされた髪にきめの細かな肌。荒れ知らずの手指は爪先まで洗練されています。


 ここへ来た当初、わたしの見た目があまりにもひどかったためにパピリスは辛抱強く手入れをしてくれました。おかげさまで毎朝鏡を見ては驚いてしまいます。こんなわたしでも、本当にお姫さまのように見えますもの。


 パピリスはこう続けました。


「美容と健康は切っても切り離せないものです。いいですか姫さま。おのが持つ美を輝かせるためにも、食べて運動してしっかり休むことが大事ですからね」


 兎にも角にも、まずは体が大事だということです。確かに、体が元気じゃないと気持ちもなんだか落ち込みます。


 パピリスの言う通り、これからはよく食べて運動して、しっかり休むことを気がけていきましょう。



 フロスにも時間がある日の過ごし方を聞いてみると、彼女は「できるなら夫と一緒に過ごしたいですわ」といつもののんびりした調子で答えてくれました。フロスは結婚していると聞いていたのですが、とても仲が良いようですね。


「わたくし、夫のことが大好きなのです。うふふ」


 あとで聞いた話、フロスが今のご主人と結婚するときは身分の差などが障害になってなかなか周囲に認められなかったようです。でもフロスはそれにめげずに愛を貫いたとのこと。情熱の勝利ですね。


「姫さまが恋をなされたときは全力で応援いたしますわ」


 フロスは瞳をきらきらさせて言いました。

 わたしが誰かに恋をする。そんなことがこれからあったりするんでしょうか。今まで生きるのに必死で考えたことがありませんでした。


 フロスは熱弁します。


「姫さま。大事なのは顔でも家柄でもありません。ここぞという時に自分を助けてくれる方かどうかです。助けるというのは身体的な危険だけでなく、名誉や心も含まれます。いくら男前で高貴なお方だろうと、そこを軽視する殿方は姫さまの大切な人生に必要ありません」


 その時なぜか、魔王さまの顔が浮かびました。

 強くてお優しい魔王さま。

 もしわたしが危機的状況におちいった時、魔王さまなら助けに来てくれるのではないかと、あり得ない想像がふくらみました。急いで頭から追い出しました。こんなことを考えては魔王さまに失礼です。


 ふたりとのおしゃべりはそれからも続き、最近流行りの観劇やファッションを教えてもらったり、城内で噂される七不思議の存在を教えてもらったりととても楽しい時間が過ごせました。


 本当に、幸せな毎日です。

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