第97話 ジェイドの問題点。
「ジルはどうする?」
「んー、ジェイドよりセレストが心配だからセレストとハルカコーヴェの訓練を見に行くよ」
日の出と共に起きて朝食をとって訓練を開始する生活が始まる。
ジェイドはふわふわと飛ぶジルツァークを心配してどうするのかを聞いたらセレストの所に行くと言う。
「そうか。腹が立ったら帰ってくるといい」
「うん。ありがとうジェイド」
ジルツァークはそう言うとセレストの後を着いていきながらハルカコーヴェに「変な事をセレストに教えないでよね!」と言っている。
ジルツァークの変な事と言うのは何なのかジェイドは気になったがわざわざ後を追って聞こうとは思わない。
今は目の前で訓練を行ってくれるワタゲシの顔を見る。
「昨日はありがとう」
ジェイドはワタゲシに感謝を告げる。
「は?何が?」
感謝されたワタゲシは何が何でか分からない。
「工房の前でワタゲシの声がした」
「聞かれてたかー、恥ずかしいぜ。
まあいいや。これがその昨日作ってた今日の練習武器な」
そう言ってワタゲシが鉄の杖を出してきた。
「コレは?」
「鉄の棒。今日はコレで俺と練習すんだよ。棍棒の長さが短い方がいいのか、長い方のがいいのか見たいからよ」
「わかった。それでどうするんだ?」
「ん?午前中は、延々と俺が殴りかかるからジェイドはその棒で俺の攻撃を弾き続けるんだよ。防ぐんじゃない、弾くんだぜ?やれるか?」
「やってみる。午後は?」
昨日考えていたことがある。午後はジェイドがヘルケヴィーオにあるモノを教わってミリオンを鍛えるのが俺なんだわ」
「そうなのか?」
「ああ、昼飯の時に話すよ。じゃあやろうか?」
そう言ってワタゲシが鉄の棒を振り回してくる。
ブォンと言う音の後、ガキンと言う音で弾かれる鉄の棒。
痺れる腕。
だがワタゲシは止まらない。
延々と加速して打ち込み続けてくる。
ジェイドは何発に1回は打ち返せずに鉄棒が体に当たる。
「ぐっ!?」
「やはりだ。ジェイド、お前の問題点が見つかった」
そう言いながらもワタゲシの手は止まらない。
「何!?」
「お前は昨日風呂場で俺に話したお前のおやじさんの話を他人事のように聞いている!」
そう言われた時にもワタゲシの一撃がジェイドに当たる。
だがジェイドの身体に傷はつかなかった。
「まただ!」
「何!?」
「お前のオヤジさんはどうして死んだ!?」
「それは亜人の攻撃で…」
「違う!それはどうして起きた!?」
「亜人の攻撃が母さんを狙っていて父さんがそれを体の勇者だった時の癖で受け止めようとして!」
「そうだ!今お前はどうだ!」
「俺は何も…」
「だからそれが間違いだって言ってんだよ!」
ワタゲシの攻撃が2発3発と当たって行く。
「お前、普通の奴ならこの攻撃で骨はボロボロで下手したら死ぬからな!」
「…それがどう…」
「だから!お前は無意識に防御に優先順位を付けてんだよ!反撃を阻害する攻撃ばかりを防いで、反撃に繋がりそうもない攻撃の前や被害の少ない箇所は切り捨てやがる!
お前は全部を弾き返せるようになるまで訓練すんだ!わかったか!?
ジルツァークの加護外しされて今の戦い方だと一時間と保たずに死ぬぞ!」
「…何?」
また一撃が入る。
「後それ!考えると動きが止まんのもダメだろ?わざと話しながらやってんだから止まらずに打ち返せ!」
「くっ…」
「ほらまた止まった!」
そう言って強烈な一撃をワタゲシが叩き込む。
「とりあえずジェイドは防御を忘れた身体に防御を教え込むんだよ!」
そう言って午前中の訓練は続いて行った。




