第94話 祝福された女神、イロドリ。
「こんばんはジェイド」
「こんばんはイロドリ」
目の前にはイロドリが昨日と変わらない笑顔で立っていた。
「ジェイドは凄いね〜」
「そうか?何が凄いのかわからないかそう言われると悪い気はしないな」
「あの薬草ゼリーだよ。あれって見ただけで凄い味なのわかるのに美味しいって食べるし、ワタゲシの訓練にもついて行くしさ。
オジちゃんよりワタゲシの方がジェイドのファンになっていたけど2人も応援してくれている。リュウさんも褒めてたよ」
イロドリがジェイドの足元でジェイドを褒める。
「リュウさんってタカドラの事か?」
「うん。私達の世界だとドラゴンを竜とも呼ぶからリュウさんって呼んでいるんだよー」
「そうか。そうだ、昨日話してくれたイロドリの話とヘルケヴィーオ達の名前の話が繋がるのか?」
「うん、あの神がそんなだからエクサイトは作られたの」
「そうなのか…。後は聖剣にしても驚いた。まさかナマクラと呼ばれていて新しい聖剣も金貨で買えてしまった」
ジェイドは今日の出来事を確認するようにイロドリに説明をする。
「うん。それもエクサイトの問題」
「問題?」
「うん。この世界の製鉄技術なんかは水準が低いの」
「低い?何処と比べたんだ?」
「私の知っている他の世界と比べたの。採れる鉄なんかにしても人間界と上層界では別物なんだよ」
「そうか…」
何となくだが言いたいことが分かった。人間界と上層界で何もかも違っている。
それこそ草の匂い、水の味、風の感じまで違う気がする。
「それが女神ジルツァークの限界。彼女がエクサイトを欲した発端」
イロドリが目を瞑って心を込めて言う。
「ジルの限界…発端」
「うん。今日はヘルケヴィーオとリュウさんを呼ぶからこの世界の事をまた少しだけ話すね。
後はジェイドがここでの滞在が決まったから、前話したみたいに1日1日の重要度が少し変わるから、私はもう少し来る頻度を落とすよ。少しだけ備えたい事とかあるんだよね」
イロドリは初めて会った日に一日一日が重要で毎日出てきて軌道修正をするような事を言っていたが、ジェイド達の滞在が決まると重要度が変わったと言ってくる。
ジェイドはどう言う事かわかりかねたがイロドリに無理を言っても意味がない。
言われるだけを粛々と受け入れる。
「わかった。ヘルケやタカドラを呼ぶ前に一個聞いていいか?答えられない質問なら「答えられない」で構わない」
「何?」
「今の姿はイロドリの本当の姿なのか?」
「なんで?」
「幼い女の子の姿なのに流暢に喋るからだ。それに難しい言葉もキチンと意味を理解して話している。だから本当はもっと大人なのかと思って聞いたんだ」
「そっか、まあ良いかな。私は子供だよ。
私が流暢に話せるのは私を祝福してくれた女神のおかげ。
普通の神様は子供の間は子供子供してるって言ってたよ」
イロドリが胸に手を置いて嬉しそうに話す。
それはそのイロドリを祝福したと言う女神を想っているんだと思った。
「そうか、イロドリは祝福された女神と名乗っていたな」
「うん。だから私はこの力を正しく使いたいんだよ。色々あって偶然見つけたエクサイトを救いたくなったの」
ジェイドにはその言葉が嘘には思えなかった。
嘘には思えないからこそそうなるとエクサイトが滅びに向かっている事が確定されてしまう。
そしてそれをジルツァークに言えないと言う事になる。
「ありがとうイロドリ」
「え?…いいよぉ。照れるよぉ〜」
イロドリが頬を赤く染めて嬉しそうにモジモジと照れる。
「それでは皆と話をしよう」
「うん」
そしてヘルケヴィーオとタカドラが呼ばれる。




