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第89話 ミリオンとヘルケヴィーオ。

「ミリオンはこっちだ」

ヘルケヴィーオに連れられてミリオンは館の一室に通される。

やはり部屋の壁や床、調度品なんかの作りや美しさから人間界とはまったく違っている。

落ち着きがないと思われてしまうがミリオンはつい部屋を見回してしまう。


そうしているとヘルケヴィーオが席を進めてくる。


「まずは少し話そう。こうして2人で話すのは初めてだな」

「はい」


その始まりで少しだけお互いの話をする。

ヘルケヴィーオはミリオンに馴染みのない人間界の話を聞く。

ミリオンはレドアの素晴らしさを何とか伝えようとして打ち解けていく。


そして打ち解けた頃、ヘルケヴィーオがミリオンに質問を切り出す。


「ミリオン、人間界に魔法使いはいるか?」

「居ません。魔の勇者を引退した父は使えますが…でも徐々に使えない魔法が増えてきたって言っていました」


「やはりな」

「え?」

ヘルケヴィーオの言葉に驚くミリオン。

このエルフの街に来てから驚き続けている。


「ミリオンの使う魔法は世界の理を知って使う本来の魔法ではなくジルツァークと言う女神の力を借りて行使しているだけに過ぎない」

「え?」


「タカドラの話をそのまま伝えるだけだから、詳しく知りたければタカドラを訪ねるのが1番だが、魔の勇者の力はジルツァークから使用許可を得た人間の事を言う。

ジルツァークが用意した魔法の名前を唱えるだけで体内の魔法を使用して使うだけだ。

魔法理論と基礎のない勇者がジルツァークから引き離されたら何も出来なくなる。

タカドラはそう言っていた」

「…」

言っている意味は何となく分かるが理解には程遠い。

それを察したヘルケヴィーオが心配そうに聞いてくる。


「なんとなくでいい。理解はできるか?」

「…はい」


「流石はミリオンだな。助かる。

私なりにタカドラに聞いた事だが、アイスランスの魔法にしても簡単に言えばエルフ達が使う魔法にも同じものはある。

それは世界に満ちる水の魔法に氷になる様に形状変化を促して風の魔法で目標に投げつける。

アイスランス1つにしてもこれだけの事をして放つのだが、ジルツァークに繋がっているミリオンはアイスランスを使おうと思うだけでそれらが知らぬうちに実行される」

「それではアイスランスは水魔法と風魔法なのですね」


「そうだ。基礎と理論を知らぬミリオンが魔法を使えなかったのはそう言う事だ」

「だから私はこれから基礎と理論を学ぶ」

ミリオンは必死になってヘルケヴィーオを話しについて行こうとしている。

それは魔の勇者としてのプライドだろう。


「ああ、今日は火や水、風に大地の魔法を感じるのだ」

「そうすればジルツァーク様の魔法は全て再現が出来るのですか?」

ミリオンは必死になって質問をする。

頭のどこかではジルツァークと切り離された中で戦う事を意識していた。


「大魔法の中には無理なものもある。

アースクラックなんかは使えてもアトミック・ショックウェイブなんかは使えない。

そもそも我々にも原理が分からぬのだ。どの魔法にどの力を使わせればその魔法になるのかそれがわかればまた違うのだが…」

「そうですか…」


「とりあえずは基礎と理論だ。

もしかしたらミリオンだけの魔法が見つかるかも知れないぞ?」

「はい!頑張ります!」


「その意気だ。そして人間界に魔法を持ち帰るといい。我々でエクサイトを幸せに導こう」

ヘルケヴィーオが嬉しそうにミリオンに言う。

ヘルケヴィーオ達の考えは魔法なんかはごく一部の人が持つのではなく万人に広めて平和に使えばいいと思っているのだ。


そうしてミリオンの訓練は始まる。

だがどうしてもジルツァークの加護に頼り切った力の使い方が邪魔をして初歩の指先に火を出す魔法に2時間もかかってしまった。


「ふむ。これは思ったより難解だな。場所を変えよう。タカドラの元に行った方がいい」

「はい。すみません。あのヘルケヴィーオさん、今の魔法の名前は?」

申し訳なさそうに謝るミリオンはヘルケヴィーオに今の火の魔法について質問をする。


「無い」

「え?」


「私とヘルタヴォーグが姉妹だと目覚めた時に気づいた事と同様に魔法知識は身体にあったのだが名前はない。今のは火の魔法で通じてしまう。ミリオンの言うアイスランスも私達の中では氷の槍だ」

「そうなんですか…」


「不思議そうな顔をする事はない。ようは思った通りの攻撃が出来れば良いのだ。名に縛られる事はない」

「はい」

そうして館を後にしてタカドラの神殿を目指し歩くのだった。

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