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第79話 世界の始まり。

「じゃあとりあえずこの世界の始まり。499年前の所から始めるね」

「何?エクサイトはまだ499年なのか?」

ジェイドが驚きの声を上げる。

そして同時に自分たちが99年前からの事しか知らない事に気付いて愕然とする。

それ以前の話は人間は亜人に追いやられていたとしか残っていないのだ。


「あー、ジェイドはそこからかぁ。ヘルケヴィーオは自身の神様を見たこともないんだよね」

イロドリが「これは大変だ」と言いながらヘルケヴィーオに質問をする。


「はい。御意志だけは遺されましたので従っております」

「御意志?」

神の意思と言う事が気になってジェイドが聞き返す。


「うん。ヘルケヴィーオ、ジェイドに教えてあげて」

「イロドリは知っているのか?」


「うん。神様だから見たよ」

イロドリは真面目な顔で見たと言う。


「ジェイド、我らが神の遺された言葉は「女神ジルツァークの世界創造に付き合うように」だ」


「ジルの…、何故だ?」

「それは私にはわからない。イロドリ様は御存知なのですか?」

ヘルケヴィーオも神の意志が何なのかを知らなかったのでイロドリに聞く。


「うん…全部見てきたよ。それはヘルケヴィーオには耐えがたい真実だと思う」

「…そんな…」

女神であるイロドリに言われたヘルケヴィーオが青い顔で一歩下がる。


「ヘルケ…。聞くのをやめるか?」

「いや、聞こう」

ジェイドの声で何とか持ち直したヘルケヴィーオが真実を知ろうとした。


「イロドリ、教えてくれ」

そう言われたイロドリは八の字眉毛の困り顔で「落ち着いてね。取り乱さないでね。ガッカリしないでね」と言ってからまさかの事実を聞かされる。



「そんな…、そんな理由でエクサイトが生み出されたのか?」

「そして…、ジルの目的は何なのだ?意味がわからない…」

ジェイドとヘルケヴィーオが効いたエクサイトが生み出された理由は意味が分からないものだった。

何故そんな事が?何故そうなった?何故こうなった?

そんな事ばかりが去来する。


2人の消耗具合は見てわかる。

イロドリが心配そうに2人を見て口を開く。


「2人とも、今日はこのくらいにしよう?」

「いや、ジルとエクサイトの事はわかった。だが何故ここにモビトゥーイの名前が出ない?」

ジェイドは気力を振り絞ってイロドリに疑問点をぶつける。


「…」

イロドリが困り顔で黙ってしまう。

仕方ないのでジェイドはヘルケヴィーオを見る。


「ヘルケ、ヘルケはモビトゥーイを見たことがあるのか?」

「ああ。100年以上前に見た。薄褐色の肌に水色の目。銀の長い髪の女神だ」

そう言われてジェイドは脳内でモビトゥーイの姿をイメージする。

倒すべき敵。争いと残虐の女神・モビトゥーイ。


そこでジェイドは次の疑問をヘルケヴィーオにぶつけた。

「…ヘルケの神はジルに付き合うように言ったのにモビトゥーイには従うように言わないのだな」

そう、ヘルケヴィーオの神がジルツァークの名前しか出さなかった事が気になったのだ。


「ジェイド…、それはまた後にしよう。まだ早いかな」

イロドリがジェイドの前に進んでジェイドを止める。


「イロドリ?」

「ジェイドは耐えられてもヘルケヴィーオが耐えられないよ。

こんな調子で明日ジルツァークに見つかってバレたら全てが台無しになるから…。

だから今日は別の話にしよう。

明日からの修行の話。ね?」

イロドリが必死になってジェイドを止める。


「…わかった」

「済まないジェイド」

ヘルケヴィーオが申し訳なさそうにジェイドに謝る。


「いや、この世界を救うのに俺達やヘルケヴィーオ、イロドリが必要なら歩幅は合わせる」


「うん。ありがとうジェイド。明日から先の修行の話だよ。仮にだけどモビトゥーイが勇者の力を無効化できるとしたらどうする?」

イロドリの質問はとんでもないものだった。


「何?」

「イメージして、剣技の封じられたセレスト。

魔法の使えないミリオン。

そして亜人の攻撃で身体が千切れ飛ぶジェイド」


「…」

「出来ないと思う?可能性を無視した?」

イロドリが幼女とは思えない顔と声で質問をしてくる。


「いや…、心の何処かで考えては居た…」

「うん。だから明日からはそれに備えた修行をしてね」


「わかった。話の流れはヘルケに任せれば良いのだな」

「うん。お願いねヘルケヴィーオ」

イロドリがヘルケヴィーオを見てお願いと言う。


「はい」

そう言うヘルケヴィーオの顔は暗い。



「安心しろ。

俺達は生き延びる。

そして全ての謎にも打ち勝つ。

よろしく頼む」


そう言ってジェイドが右手を出す。


「え?」

「今の時間でイロドリもヘルケヴィーオも信用に値する事がわかった。

だからよろしく頼むの握手だ」


「ジェイド…」

ヘルケヴィーオが泣きそうな顔でジェイドを見る。


ジェイドはイロドリの方を向く。

「イロドリ」

「なに?」


「この世界ではイロドリには触れられないのか?」

「え?」


「触れられて許されるのなら3人で握手をしないか?」

「ジェイド〜!」

イロドリが嬉しそうに飛び跳ねて前に出てくる。


「ジェイドっていい男だね。フランや皆に言っておくよ」

そう言ってイロドリが嬉しそうに手を出す。


「ヘルケ」

「ああ」


「エクサイトを救うぞ」

「ああ」

「女神の私に任せてよね!」


3人で手を合わせて誓う。



「じゃあ今日はここまでだよ。

ヘルケヴィーオ、リュウさんには私から言うね。

やり方の説明もするからさ。

明日はドワーフのオジちゃんに会ってからエルフのお姉ちゃん。

そしてリュウさんだからね」


「はい」

ヘルケヴィーオが答えると世界が閉じて行く。


「皆!また明日ね!!」

「ああ、また明日!」

「また明日!」


そう言ってジェイドは眠りについた。

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