第78話 イロドリとヘルケヴィーオ。
「へへへ。驚いたでしょ!」
「ああ…全てがイロドリの説明通りになった」
ジェイドの夢に現れたイロドリがドヤ顔で笑う。
「ヘルケヴィーオが迎えにくる事、ジルツァークが怒る事、エルフとドワーフの街が綺麗な事、ご飯が美味しい事、全部私の言う通りだったでしょ?」
ジェイドの前で、身振り手振りで話しながらドヤ顔のイロドリが表情をコロコロと変えながら聞いてくる。
「ああ。イロドリの言う通りにしておいて良かったよ」
「えへへ、褒められると照れるね!」
イロドリが頬を染めて頭に手を回しながら照れる。
「イロドリ、もしこのままだとまずい事と今聞きたいことがあるが良いか?」
ジェイドが真顔になってイロドリに質問をする。
「まずい事?」
「ヘルケと込み入った話をしたいのだがミリオンとセレストがお目付け役…、足枷になって話ができない。この夢にヘルケを呼べないか?」
ジェイドは込み入った話をヘルケヴィーオとしたかった。ジルツァークを裏切るのではなく単純に勝利に必要な情報が欲しかったのだがセレストとミリオンは良くも悪くも温室育ちでジルツァークを裏切れない。
どうしても2人の前でヘルケヴィーオに質問が出来ないのだ。
「にひひ〜。もう呼んであるよ」
ドヤ顔のイロドリが嬉しそうに言う。
「何?」
これにはジェイドも驚きを隠せない。
「ヘルケヴィーオもイロドリの仲間だよ」
「そうなのか…、頼もしいな」
「ヘルケヴィーオを呼ぶ前にジェイドの聞きたい事を言いなよ」
「ああ。ヘルケの言った俺達では亜人王に勝てないと思うと言う点だ」
ヘルケヴィーオに言われた事がずっとネックになっていた。
今のまま亜人界に攻め込めて亜人五将軍を葬ることが出来たとしても亜人王には敵わない。
その事の真意を女神であるイロドリに聞きたかったのだ。
「あー、それかぁ。
今は答えられないかな。
事態の根幹にかかわる情報だからね。徐々にジェイド達の理解度を見て説明しないと台無しになっちゃうんだよ。
代わりにヘルケヴィーオにはジェイド達を鍛えるように頼んであるからさ、口裏合わせしてよ。
多分駐留するって言ったらジルツァークが怒るでしょ?
その時にヘルケヴィーオに賛成するのがジェイドの仕事ね」
その回答を今は出来ないとイロドリに言われてしまった。
だが女神がそう言うと言う事は、嘘ではない限りある程度は正しいのだろう。
ジェイドは「わかった」と答える。
「じゃあ明日からの話をするね。明日ジェイドはドワーフとエルフ、後は時間が許せばドラゴンに会うの。その後は修行の話になるからね」
「わかった。この世界の事を聞いても良いか?」
「じゃあヘルケヴィーオも呼ぼう!」
イロドリが「ヘルケヴィーオ!」と呼ぶとその場にヘルケヴィーオも現れる。
「イロドリ様」
「こんばんはヘルケヴィーオ」
ヘルケヴィーオが膝をついてイロドリに挨拶をするとイロドリは幼女なのに当たり前のように挨拶を受け入れる。
「…どうしてヘルケヴィーオが寝たのがわかるんだ?」
「それは私が神様だからだよー。それにヘルケヴィーオにも早寝するように頼んでおいたんだよ」
「ジェイド、お前の事はイロドリ様から聞いていた。共にエクサイトを救おう」
立ち上がってジェイドの前に来たヘルケヴィーオが握手を求める。
だがジェイドは応じない。
「ジェイド?」
「俺はまだイロドリとヘルケヴィーオを信用し切っていない。だからまだ握手は早い」
ジェイドは申し訳ないと言いながら首を振って拒否をする。
「やっぱりジェイドだね」
「そうですね」
イロドリとヘルケヴィーオが顔を見合わせて笑う。




