第75話 ヘルケヴィーオとジルツァーク。
亜人界に着いたと思っていたがヘルケヴィーオの説明でここは上層界だと言う事だった。
「ジェイドはどのような世界を想像していたんだ?」
「言い伝えでは穴の向こうが上層界でその先が亜人界と聞いていたがそんなに大きなものではないと思っていた。あの草原の先がもう亜人界くらいに思っていたんだ」
「ふむ。ワイトも似たようなことを言っていたな。そこら辺の情報をワイトは持ち帰らなかったのか?」
「ああ」
そう言ったところでジルツァークが「その話は止めて」とヘルケヴィーオを睨む。
「ジル?」
「いいの。今ワイトの話をしても意味がないもん。あの時だってモビトゥーイの分身【ワケミ】で分けられて困惑するワイト達を連れて何とか人間界に連れ帰ったし、夜にモビトゥーイが何かをしたかもしれないから私にもわからない事が多いの」
「そう言えば、何故帰りはコチラに寄らずに真っ直ぐに帰ったのだ?」
「亜人の生き残りとかが追いついてきて前後不覚のワイトを襲ったら困るから最短で移動したの」
「ほう、私達は信用がないな。頼ってくれれば力を貸したぞ?」
「信用?私の生み出した子でもないエルフやドワーフにドラゴンを信じてワイトに何かあったらって思ったのよ」
「成程な…、ジル、気になる事があるからヘルケに質問をして見ていいか?ダメな話ならジルが止めてくれれば追求しない」
「…うん。いいよ」
そう言ったジルツァークは「こうなるから会わせたくなかったんだ」と小さく言っていた。
「ヘルケ、少し質問したい」
「するが良い」
「聖剣と聖鎧の修理にかかる時間は?」
「まあ、先ほど見させてもらったがそれを直すと言うのは骨が折れるな。まあ、100年も前の剣と鎧なんて骨とう品だ。そこはドワーフに任せた方が良いな」
「ふむ。そもそもなんだが亜人共はエルフやドワーフにドラゴンを襲わないのか?」
「ああ、亜人達は我らと共存をしている。亜人と人間の戦いに我々はノータッチ。亜人達が進軍の為に食料を買えば提供もするし、ワイトが聖剣を求めた時のように授ける事もする」
「何?じゃあ俺達は共通の敵になるのか?」
「いや、人間達とも交易でもなんでもしたいと思っている。共存も可能だと信じているぞ」
「ではなぜ?」
「何故?今まで壁だの穴だので我らを拒んだのは人間であろう?それに私達は100年前…その前も人間達と繋がりはあった。そもそもお前達はワイトの前の話を知っているのか?」
「ワイトの前?」
「ヘルケヴィーオ!!!」
突然ジルツァークが怒鳴る。
「ジル?」
「ジェイド、ごめんね。それは…今は聞く話じゃないんだ。今度私からするよ」
「都合よくか?」
「やめてよ!!」
ヘルケヴィーオの意地の悪い笑顔にジルツァークが嫌悪感を露わにして怒る。
「ジル、大丈夫だ。もう聞かないよ。でも一個だけ聞かせてくれ。ヘルケ、もし亜人共を滅ぼした後は人間達と交易をしてくれるか?」
「ああ、お互いの為にもそれが良いだろう」
「良い?」
「ああ、それは私達の街に着けばわかる。他にあれば聞いてくれ。旅路が楽しくなる」
ヘルケヴィーオが嬉しそうに微笑む。
風でたなびく髪の毛がとても美しかった。
「ヘルケは何歳だ?」
「女性に年を聞くのか?まあ良い。499歳だ」
「そうか、見えなかった。失礼な事を聞いてしまった。ワイトの事を知っていたので誰から聞いたか気になったのだ」
「そう言う事か、ジェイド達は何歳だ?」
興味深い顔でヘルケヴィーオがジェイドに年を聞く。
「…俺は20歳になる…。そう言えばセレストとミリオンの歳を聞いたことがなかった」
「何?ジェイドは20歳なのか?」
「そう言うセレストは何歳だ?」
「僕は19歳だ」
てっきりセレストの方が年上だとジェイドもセレストも思っていたので2人して驚く。
そして2人してミリオンの方を向くとジェイドが口を開く。
「ふむ、年を聞くのは失礼なのだったな…」
「ああ、気にはなるが我慢をしよう」
「あのね…。わざとでもタチ悪いわよ。
ここで聞かない方が失礼よ。私は21歳。お姉さんって事で敬ってくれていいのよ?」
ミリオンが嬉しそうに言う。
「セレスト、面倒なことが出来た時は年長者に任せよう」
「ああ、素晴らしい考えだな」
「あなた達ね…。そう言えばジルツァーク様は何歳なのかしら?」
ミリオンが呆れながら言い返すとジルツァークに年を聞く。
「私?もう歳なんて数えてないからわからないや。ごめんね」
神の年齢なんて果てしないものなのだろう。
多分ジェイド達も途中で数えなくなるんだろうなと思っていた。




